◇国内男子◇前澤杯 MAEZAWA CUP 最終日(27日)◇MZ GOLF CLUB(千葉)◇6652 yd(パー70)◇晴れ時々曇り「あ、勝った」。プロ13年目の初優勝は、思ったよりあっけなかった。最終18番で小西たかのりが1.2mの…

プロ13年目の初優勝

◇国内男子◇前澤杯 MAEZAWA CUP 最終日(27日)◇MZ GOLF CLUB(千葉)◇6652 yd(パー70)◇晴れ時々曇り

「あ、勝った」。プロ13年目の初優勝は、思ったよりあっけなかった。最終18番で小西たかのりが1.2mのパーパットを決めた後、首位で並ぶ今平周吾が1mのパーパットを外した。「タナボタみたいな感じだったけど。どんな形でもうれしいですね」。人生は本当に、何が起こるか分からない。

今平周吾(右)と競り合った

ジュニア時代には、同学年の石川遼と優勝争いの経験がある33歳。中学進学後は「色々あって…」と一度ゴルフから離れたが、07年「マンシングウェアオープンKSBカップ」で石川のアマチュア優勝を見て「また始めて見ようかな」ともう一度クラブを持った。

2012年12月にプロ転向したが、ツアーで活躍できない日々が続いた。またゴルフを辞めることも頭にチラついたが、「まだ、ちゃんとゴルフが出来ていない」と挑戦し続け、22年に初の賞金シードまでたどり着いた。それでも、昨年までの3シーズンでトップ10は6度だけ。「去年から復調した」と手ごたえを持って臨んだ今季、早々にチャンスが巡ってきた。

ロングパットを沈めた17番

優勝争いの相手は2018、19年賞金王の今平周吾。ともに首位タイから出た最終日は接戦だった。1番、3番と立て続けにピンに絡めるショットでバーディを奪って抜け出したが、8番でバンカーにつかまるボギーで再び首位に並ばれた。平静を保てたのは、コーチのチャーリー高沖氏からの言葉があったからだ。

ロリー・マキロイ選手だって、85ydくらいから池に入れることもある」

2週前の「マスターズ」でグランドスラムを達成したスーパースターも思うように戦えなかった。首位から出た最終日、13番(パー5)で刻んだ後の3打目をクリークに入れてダブルボギーなど出入りの激しい18ホールを戦い、プレーオフの末にグリーンジャケットを手にした。コーチから「色々とんでもないことが起こるから、まあ楽しんできなよ」と言われて、心構えはできていた。

優勝決定の瞬間はあっけなかったが

“とんでもないこと”は終盤17番(パー5)で起こった。今平を1打追う展開に「最後まで頑張ろう」と思っていたら、15m近いバーディパットがカップに消えた。初めてちょっと動揺したのは、首位に並んで迎えた最終ホール。自分が5mのチャンスを作ると、グリーンを外した今平がアプローチを1mにつけた。「(自分は)寄せてプレーオフだなって思っていたんですが」。下りフックラインのバーディパットが1.5mもオーバー。「ちょっとまずいな…」と焦ったが、返しを入れて事なきを得た。

「泣くかと思ったけど、涙は出てこなかったですね」と意外にあっさりした初優勝だったが、ツアー通算95試合目のタイトルはやはりうれしい。優勝賞金4000万円を獲得し、生涯獲得賞金は5352万3524円から倍近い9352万3524円に。まだシーズン2試合目とはいえ、今季賞金ランクも1位になった。「これを弾みに良い流れに持って行って、2勝目、3勝目とどんどん積み上げていきたい」。小西は自分なりの喜びを噛み締めた。(千葉県睦沢町/谷口愛純)