シンカーは2023年から高速化 ロッテ・益田直也投手は2011年ドラフトで入団してからこれまで、リリーフひと筋でブルペンを支え続けている。ルーキーイヤーの2012年に新人最多となる72試合登板を記録して新人王のタイトルを獲得。2013年と2…

シンカーは2023年から高速化

 ロッテ・益田直也投手は2011年ドラフトで入団してからこれまで、リリーフひと筋でブルペンを支え続けている。ルーキーイヤーの2012年に新人最多となる72試合登板を記録して新人王のタイトルを獲得。2013年と2021年にはセーブ王に輝くなど、長年にわたって確かな実績を積み重ねてきた。

 2023年は防御率3点台後半と安定感を欠いたが、昨季は見事に復調。登板数やセーブ数こそ前年より減らしたものの、3年ぶりに防御率2点台をマークし、被打率はプロ入り後の13年間で最も良い数字を残した。今回は、益田が安定した投球を取り戻した要因をデータで探っていきたい。

 主な持ち球はストレート、スライダー、シンカーの3つ。他にカットボールやカーブなども持っているが、プロ入りからここまで、基本的にはこの3球種を軸に投球を組み立ててきた。中でも決め球のシンカーは右腕の代名詞といえるボールだが、球種別の被打率を年度別で見ると、成績を落とした2023年はシンカーの数字が悪化していた。そして2024年は再び優秀な被打率を残しており、成績の浮沈のカギはシンカーにあるといえそうだ。

ロッテ益田、浮沈のカギを握るのは代名詞のシンカー

 益田はかねてより球速が遅く変化の大きいものと、速く変化の小さいもの、2種類のシンカーを投げ分けており、2022年まで全体の平均球速は130キロ強であった。それが2023年から2種類ともに高速化。速く変化の小さいものは時に140キロ台に達するようになり、全体としては約3キロ平均球速が上昇している。

 2023年に改良を加えたシンカーだが、このシーズンはそれが効果的に働いたとはいえず、スイング空振り率29.3%はキャリアで2番目に低い数値であった。あくまで推測の域を出ないが、高速化と引き換えに変化量が減少し、打者にとってはコンタクトしやすいボールとなっていたのかもしれない。ゴロ割合こそ優秀な数値を維持していたものの、追い込んだ後のウイニングショットにとって空振り率低下の影響は大きく、被打率の悪化につながってしまったと考えられる。

 続いて2024年を見ると、一転して空振り率が上昇。高速化を継続しつつ空振りを取れるボールにブラッシュアップされ、キャリアで3番目に高い47.0%という数値を記録した。益田は昨オフの契約更改後に「今年は落ち球が良くなかった」という言葉を残しているが、データ上は近年で最高の切れ味を誇るボールとなっていた。本人の手応えとデータにギャップがある点は興味深く、今季の登板ではどのようなシンカーを投じ、そしてどのような成績を残すのか、引き続き注目していきたい。

 プロ入り後の13年間で50試合登板を達成できなかったのはわずか2度というタフネスぶりで、ここまで通算747試合に登板してきた。積み重ねてきたセーブ数はNPB歴代5位タイの243となっており、今季は名球会入りの条件である250セーブ到達が大いに期待される。

 加えて172ホールドも歴代6位の数字で、プロ入りから多くの緊迫した場面で登板し、ロッテを勝利に導いてきたことがよく分かる。2019年に国内FA権を取得した際に「千葉ロッテで優勝したい」とチームへの残留を決断した右腕は、悲願の優勝を目指して最終回のマウンドで腕を振り続ける。(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)