第97回選抜高等学校野球大会もいよいよ佳境。気になるのは好投手たちの評価だ。「140キロ以上の速球を投げる好投手の総数が増え、140キロ台の速球をしっかりとミートできる打者たちも多い。僕達の時代よりも間違いなくレベルが上がっています」と語る…
第97回選抜高等学校野球大会もいよいよ佳境。気になるのは好投手たちの評価だ。
「140キロ以上の速球を投げる好投手の総数が増え、140キロ台の速球をしっかりとミートできる打者たちも多い。僕達の時代よりも間違いなくレベルが上がっています」と語るのが、元DeNA投手だった冨田 康祐氏だ。PL学園時代・前田 健太投手(デトロイト・タイガース)と同期で、06年のセンバツに出場した冨田氏。今大会で活躍を見せた好投手たちを診断した。
まず2回戦で復帰登板を果たした健大高崎・石垣 元気投手(3年)については球質の良さを評価した。
「石垣投手の良さは投手に必要な肩、ヒジのしなやかさを持っていることです。そのしなやかさを活かした投球フォームをしています。その分、腕の振りも鋭く、並外れた速球を投げることができています。石垣投手はどの試合を見ても、低めにしっかりと伸びる速球を投げています。今大会は140キロ後半の速球を投げる投手は増えていますが、その中でも石垣投手は、球質の良さ、勢いをしっかりと感じた投手でした」
もう1人、この大会でドラフト候補として評価されている横浜の奥村 頼人(横浜)投手(3年)は、完成度の高さはNO.1と評価する。
「肩、ヒジがしなやかで、ストレートのキレもあって、コントロールも良い。非常に良いのは、打ちにくい角度で投げられることです。いわゆる横の角度が使える投手で、対角線に入るストレートは非常に良く、内外角へ投げ分けるコントロールも持っている。さらにチェンジアップも素晴らしいし、奥行きのある投球ができています。140キロ台の速球を投げる投手の中での完成度はNO.1ではないでしょうか。これほどの左腕がチームにいるのは心強いです」
今年は2年生投手の活躍も目立つ。その中で冨田氏は152キロを計測した横浜・織田 翔希投手、山梨学院・菰田 陽生投手を称賛した。織田については、
「素晴らしい素材です。石垣投手と同じく、肩、ヒジがしなやかで、お尻を見ると鍛えられている。細身ではあるんですけど、鍛えられた下半身と柔軟な上半身があるからこそ、並外れた速球が投げられると思います。変化球も良いですし、高校2年生の段階で技術的にいうことはありません。細かい課題はあると思いますが、そこは高校生の段階で求める必要はないと思っています」
織田は2回戦の沖縄尚学戦では、指のアクシデントで降板した。技術的以外のところが課題かもしれない。
「詳細は分かりませんが、指のマメで投げられないということは大会前に体調不良などで投げられなかったかもしれませんね。プロの投手はキャンプでとにかく投げて指のマメを作りながら、準備していきます。もちろん各出場校の投手はそういう準備していると思いますが、織田投手の場合は体力面がアップすれば楽しみです」
菰田は150キロを連発した速球を投げ込む剛腕だが、富田氏は実戦的な面も評価する。
「速球投手は腕を振って変化球を投げられるかが被打率を下げるカギになります。直球と腕の振りが変わってしまうと打たれる可能性が高まります。菰田投手は球速のあるスライダーを投げる時、しっかりと腕が振れていて、打ちにくいです。菰田投手は、この技術をしっかりと維持できればいいですね」
この4人含め、センバツ出場校の投手へエールを送った。
「速球投手が多い今大会ですが、大きく育ってほしいと思います。もちろん高いレベルで活躍するには、投球術など細かな技術が必要です。ただ、本格派と呼ばれる投手はまずはスケールを大きくすること。小さくまとまる必要はなく、徐々に投球術を覚えていけばと思います」
力を出すのが難しい全国の舞台で潜在能力の高さを発揮した4投手の今後の成長に期待だ。