浦和実が初出場4強…辻川監督は2つの采配ミスを猛省 第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第4試合は初出場の浦和実(埼玉)が聖光学院(福島)と対戦。4-4で突入したタイブレークの延長10回に一挙8点を奪い、ベスト4…

浦和実が初出場4強…辻川監督は2つの采配ミスを猛省

 第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第4試合は初出場の浦和実(埼玉)が聖光学院(福島)と対戦。4-4で突入したタイブレークの延長10回に一挙8点を奪い、ベスト4進出を決めた。

 試合後のお立ち台。辻川正彦監督は「凄いことをやってくれたなという思いです。こんな試合ができるんだ」と感激の面持ち。「采配ミスを消してくれて、選手には本当に『ありがとう』と言いたい」とナインへの感謝を口にした。

 辻川監督が言う「采配ミス」は2つある。1つは継投のタイミングを見誤ったことだ。先発の背番号20、駒木根琉空投手(3年)が5回まで1失点と好投。5回に1点を追加し、リードを3点に広げたことで欲が出たという。「少しでも(エースの)石戸(颯汰=3年)を休ませようと、駒木根を引っ張った。少しだけ準決勝を考えてしまった。凄く反省しています」。

 石戸は滋賀学園(滋賀)との1回戦で完封。前日の東海大札幌(北海道)との2回戦は疲労を考慮して2番手で起用したが、結果的に5回無失点ながら65球を投げた。連投となるこの日もブルペンで待機。だが、駒木根を6回も続投させたところ、3回り目に入った聖光学院打線につかまり、痛恨の同点3ランを被弾。結局、7回から石戸を投入し、延長まで4回を投げさせてしまった。同じ4回を投げるならなら、タイブレークより負担が少ない、3点リードした6回から投入していた方が良かったというわけだ。

追い上げる相手を球場全体が応援「雰囲気がおかしくなる」

 もう1つは同点3ランを浴びた直後の7回の攻撃。無死一、二塁から強攻策を選択して走者を進められず無得点に終わった。セオリーなら送りバントで1死二、三塁と攻める場面。「負けていたら全部、俺の責任。俺は全く駄目だった。しくった。失敗した。やっちゃったと思った。後悔しかない」と反省ばかりが口をついた。

 さらに誤算が生まれる。球場全体が、劣勢だった聖光学院を応援する雰囲気になったのだ。甲子園のスタンドは、時として追い上げるチームを一体となって応援するケースがある。田畑富弘部長から説明を受けても「何でって。球場の雰囲気がおかしくなるのは何なんだろうと……。守っている時の雰囲気が異常。これが甲子園の魔物かなと思いました」。目に見えない、もう1つの敵との闘いが苦しかったと漏らした。

 そんな異様なムードの中で、石戸は4回無失点と踏ん張り3試合18回無失点。打線もタイブレークの延長10回に一挙8点を奪って初出場4強だ。「負けたら選手たちに『ごめん』と言うつもりでした。本当に選手たちは凄い。頼もしく見えました」。

 恐縮しきりの指揮官は準決勝の智弁和歌山(和歌山)戦について意気込みを問われると、こう言った。「智弁和歌山は横綱ですから。何とか食らいついていきたい。選手は必死にやっている。何かが起こる可能性はあります」。甲子園の“魔物”も退治した旋風は、また大仕事をやってのけるかもしれない。(尾辻剛 / Go Otsuji)