智弁和歌山、スリーバントスクイズで一気に主導権 第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第3試合は智弁和歌山(和歌山)が広島商(広島)と対戦。7-0で快勝し、7年ぶりベスト4進出を決めた。 9安打で7得点。3戦連続と…

智弁和歌山、スリーバントスクイズで一気に主導権

 第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第3試合は智弁和歌山(和歌山)が広島商(広島)と対戦。7-0で快勝し、7年ぶりベスト4進出を決めた。

 9安打で7得点。3戦連続となる2桁安打こそ逃したものの、好調な打線がそつのない攻撃で得点を重ねた。無死で走者が出ると手堅く送りバントの指示。先頭打者が出塁した2、4、7回はすべて犠打で走者を進めて好機を広げた。

 2-0の2回1死一、三塁では黒川梨大郎内野手がスリーバントスクイズを成功させて加点(記録は投手内野安打)。中谷仁監督が「信頼して、決めてくれると思ってサインを出しました」という一手で勢いに乗ると、さらにこの回2点を加えて一気に試合の流れを引き寄せた。

 今大会は千葉黎明(千葉)との1回戦が12安打6得点。エナジックスポーツ(沖縄)との2回戦が13安打9得点と攻撃陣が好調である。甲子園通算73勝、春夏通算3度の優勝を誇る強豪には「強打」のイメージがつきまとうが、選手時代に1996年選抜準優勝、1997年夏の甲子園優勝を経験している中谷監督は、これを一蹴した。

「皆さん『強打の智弁和歌山』と言いますけど、そうじゃないです。今年は本来、打てるチームじゃない。だから、しっかりバントの練習をしてきました。その成果が出ました。自分たち(が選手)の時も『強打の智弁和歌山』と言われましたけど、まあまあ強打でしたけど、バントもスクイズもやっていましたから」

3試合で13犠打…他のベスト4チームを上回りトップの数字

 阪神、楽天、巨人でプロ野球生活を送った指揮官は阪神と楽天時代の恩師で、ID野球を実践した野村克也氏への感謝を口にする。「すべてにおいて、教えられたことが腑に落ちる。準備の大切さも教わりました。野球は配球とか考えることの多いスポーツ。間のスポーツです。準備の段階でアドバンテージが取れることが結構ある」。それが基本の徹底であり、繰り返したバント練習もその1つ。「僕は準備してもプロでは結果が出なかったんですけど」と冗談を交えながら、選手の対応力に目を細めた。

 1、2回戦はそれぞれ5犠打を記録。3試合で計13犠打は横浜(7犠打)、健大高崎(9犠打)、浦和実(6犠打)の他の4強チームを大きく上回る。記録は安打となったスリーバントスクイズを含めて報道陣からバントの多さの質問が出ると「(明治神宮大会優勝の)横浜高校さんも、バントしてますよね。あまり煽らんといてください」と注文を出した。

「バッティングは持っている力以上のものが出ている。後は気合と根性で頑張ります」。そう言って準決勝への意気込みをはぐらかしたが、戦っていく戦術の軸にブレはない。今大会1試合平均7.3点を奪っている得点力は抜け目のない堅実なバントがあってこそ。この後もしっかり準備するのは間違いない。1994年以来、31年ぶりの春の日本一へ。智弁和歌山らしい大技に小技を絡めた、したたかな野球を貫いていく。(尾辻剛 / Go Otsuji)