西日本短大付の三塁コーチャー・田渕尊内野手 第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第2試合は西日本短大付(福岡)が横浜(神奈川)と対戦。2回に湯山仁太内野手(2年)の左前適時打で先制したものの逆転負け。初めてのベス…
西日本短大付の三塁コーチャー・田渕尊内野手
第97回選抜高校野球大会は26日、大会第9日に準々決勝が行われ、第2試合は西日本短大付(福岡)が横浜(神奈川)と対戦。2回に湯山仁太内野手(2年)の左前適時打で先制したものの逆転負け。初めてのベスト4進出はならなかった。
0-0の2回1死二塁。三塁コーチャーの田渕尊内野手(3年)は、ほぼ定位置に構える外野手を冷静に確認した。湯山の打球が三遊間をゴロで抜けると、左翼・江坂が猛チャージ。それでも躊躇なく両腕を大きく回した。本塁への返球がやや一塁方向にそれ、二塁走者・安田悠月外野手(3年)が滑り込んで生還。昨秋の神宮大会王者から先制点を奪った。
田渕の頭にあったのは“先手必勝”の思い。「相手が強いので、少ない点数の厳しい展開になるのは分かっていました。最初の1点が鍵になると思っていて、自分の役割は大事だなと思っていました。1本(の安打)で(二塁から本塁に)回すためには、外野の位置は鍵になるので、ランナーに伝えていました。先攻だし、先制すれば波に乗れる。点を取るために、思い切って回しました」。
西村慎太郎監督も「あそこはよく回してくれました。あれでチームに勢いがついた」と称えた迷いのない好判断。続けて「彼はムードメーカー。点数が入ってみんな喜びましたけど、田渕がベンチに帰ってきた時にみんなで盛り上がりましたから」とチームにとって大きな存在であることを明かした。5回に追いつかれ、6回に勝ち越されるまで互角の展開。終盤に突き放されたが、中盤まで思い描いたプラン通りに運べたのは事実だ。
ランニング本塁打2本も“演出”…「してやったり」
大垣日大(岐阜)との1回戦では、斉藤大将外野手(3年)が7回に左中間にはじき返した飛球を相手がはじき、白球が転々とするのを見て判断良くゴーサイン。大会1号となるランニング本塁打を“演出”し「してやったりで、いい経験になった」と振り返る。山梨学院(山梨)との2回戦でも初回に安田悠月外野手(3年)がランニング本塁打を放つなど打線が11点。田渕は何度も両腕を回した。
1つの判断が試合展開を左右することもある。コーチャーの役割は大きいと自覚する中、心がけるのは堂々とした姿勢。「自分がオドオドしてしまうとランナーも不安になる。迷わずに走ってもらいたいので、常に思い切って回しています」。牽制球やシフトに目を光らせ、内外野の守備位置を確認して声とジェスチャーで走者に伝えてきた。
もちろん、プレーヤーとしてグラウンドに立ちたい思いは強い。「自分の武器は足。今回は継投だったので代打とか代走とか回ってくるかもと思っていた」。1、2回戦で完投した中野琉碧投手(3年)の疲労を考慮して4投手の継投だったが、代打のタイミングはなく、打線も5回以降は無安打で代走の機会もなし。結局、3試合とも出場機会がないままで終わった。
それでも、甲子園の土を踏んだ充実感が漂う。三塁コーチャーズボックスから見た景色は格別で「甲子園は気持ちよかったです。凄く大きな拍手、歓声を送ってくれるし、心がスーッとなりました」と振り返った。春はチーム最高成績となるベスト8。「夏にもう1回リベンジのチャンスがある。また戻ってきます」。そう話した背番号15は胸を張り、涙を見せることなく聖地を後にした。(尾辻剛 / Go Otsuji)