(26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 浦和実12―4聖光学院) 延長十回タイブレーク。大歓声のなか、この回先頭の6番工藤蓮選手(3年)は打席に立った。「こんな場面で打てるなんて」。静かに闘志を燃やしていた。 チームはリードして迎えた六…

(26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 浦和実12―4聖光学院)

 延長十回タイブレーク。大歓声のなか、この回先頭の6番工藤蓮選手(3年)は打席に立った。「こんな場面で打てるなんて」。静かに闘志を燃やしていた。

 チームはリードして迎えた六回、3点本塁打を許し同点に追いつかれた。工藤選手には直後の七回1死一、二塁の好機で打席がまわってきたが、送りバントで打球が捕手の前に転がり失敗。「悪い流れを切りたいと無理にいってしまった。本当に悔しかった」

 延長戦で出された指示は再び送りバントだった。1球目はバントしようとしたがファウルになり、2球目は自身の判断でヒッティングに切り替えたがまたファウルに。すぐに2ストライクに追い込まれた。

 スリーバント失敗が頭をよぎる中でベンチを見ると、緊張をするなと言うように肩を回す辻川正彦監督の姿があった。普段厳しい監督の見慣れぬ姿に、自分へ全幅の信頼を置いてくれていると感じた。

 「今まで通りのことをするだけ」と、4球目の真ん中低めの直球を落ち着いて三塁方向へ転がした。いけると確信して頭から一塁に飛び込み、結果はセーフ。無死満塁となり、思わず塁上で大きくガッツポーズした。大量得点の足がかりを作った。

 試合後、「いま8強という目標を超えた。今後も自分たちの全てを出し切って戦うだけ」。そう言って、笑みを浮かべた。(恒川隼)