中途半端な形で起用されて持ち味を存分に発揮できなかった旗手怜央 photo by Sano Miki 何かと不可解な試合だった。 ワールドカップ最終予選。すでに本大会出場を決めている日本は、ホームにサウジアラビアを迎えた一戦で、スコアレスド…


中途半端な形で起用されて持ち味を存分に発揮できなかった旗手怜央

 photo by Sano Miki

 何かと不可解な試合だった。

 ワールドカップ最終予選。すでに本大会出場を決めている日本は、ホームにサウジアラビアを迎えた一戦で、スコアレスドローに終わった。

 内容的には超のつく凡戦となったこの試合をひと言で表わすなら、守備を固めるサウジアラビアを日本が崩しきれなかった、ということになるのだろう。

 だが、サウジアラビアが守備を固めたといっても、そこに勝ち点1を死守しようという執念のようなものは感じられなかった。確かに後ろに人数をかけてはいたが、ボールへのアプローチにせよ、縦パスが入ったところでのつぶしにせよ、ほとんどの局面で対応が緩かったのだ。

 加えて、サウジアラビアはまるで勝ち点3を放棄したかのように、カウンター攻撃の脅威を示すことはなし。ただただ"緩めの守備固め"を続けるだけだった。

 にもかかわらず、日本は決定機をほとんど作り出せなかったのだから、見応えのない退屈な試合になるのは当然の結末だろう。

 前半こそ、あと一歩という攻撃がいくつかはあったものの、後半に入ると、ほぼノーチャンス。73%というボール支配率を記録しながら、前半は6本、後半は4本というシュート数に、拙攻の様子が色濃く表われている。

 この試合、日本は5日前のバーレーン戦から、先発メンバー6人を入れ替えて臨んでいる。

 上田綺世、三笘薫、守田英正が負傷や体調不良で戦線離脱したこともあり、予想以上に多くの選手が入れ替わることにはなったが、そのこと自体に問題の原因を求めるつもりはない。

 特に高井幸大、菅原由勢、前田大然は、最終予選初先発。こうした起用は、むしろもっと早く行なわれるべきだったと言ってもいい。

 とはいえ、先発メンバーの入れ替えが多くの収穫をもたらしたとは言い難い結果に終わったのは、そもそも主力メンバーを中心に臨んだバーレーン戦での課題が解消されていなかったからだ。

 3バックが中央に固まってしまい、両サイドのウイングバックを効果的に前へ押し出せない悪癖は相変わらず。ならば、菅原を右サイドバックに下げた4バックへとシフトチェンジし、左ウイングバックの中村敬斗を高い位置に配置するなどの手もあっただろうが、さしたる策が講じられることもなく、中村は終始窮屈なプレーを強いられた。

 それでも、久保建英、鎌田大地がピッチに立っていた時間はまだよかった。だが、選手交代で久保が下がり、続いて鎌田が下がると、日本はさらに攻め手を失った。

 ワールドカップ出場が決まるまでの最終予選7試合は、ほぼ固定された先発メンバーで戦ってきただけに、ここからの3試合でどんな選手起用が行なわれ、どんな発見があるのか。そんなことに注目して試合を見ていたのだが、残念ながら収穫に乏しかったと言わざるをえない。

 あえて収穫を挙げるなら、20歳の高井が柔らかな技術とフットワークで、今後への期待を抱かせてくれたくらいだろうか。

 チームとしての機能性を欠くなかで途中出場した旗手怜央は、短い出場時間にもかかわらず、複数のポジションをこなさなければならず、同じく古橋亨梧もサイドからハイクロスが放り込まれるだけの攻撃では、持ち味を発揮できるはずもなかった。

 新戦力をテストするにしても、先発メンバーのすべて(あるいは、そのほとんど)を入れ替えるというやり方は、基本的には賛成できない。チームの幹となる部分をまるごと取り去ってしまえば、せっかく新戦力を起用しても、それがテストとして機能しなくなってしまうからだ。

 だが、こんな中途半端な結果に終わるくらいなら、いっそ旗手や古橋も先発起用させてもよかったのではないか。そのほうが思わぬ化学変化が起きたかもしれない、などと感じてしまう。

 勝負にこだわり、何としてでもゴールを奪うための選手交代が行なわれたわけでもなく、さりとて、これまで出場機会がなかった(あるいは、少なかった)選手の3-4-3への適応を優先して見極めようとしているふうでもなく、結局、何が目的だったのかよくわからない試合になってしまった。

 むしろ、サウジアラビアのカウンターに沈み、日本が負けでもしていれば、この無為な試合に対する危機感がもっと強まったのかもしれないが、対戦相手も含め、お互いに何をしたかったのかがよくわからない、不可解な点が数多く残った引き分けは、日本の失態を目立たなくしている。

 せっかく最終予選3試合を残して、ワールドカップ出場を決めたにもかかわらず、有効活用すべき3試合のうちのひとつを早くも無駄にしてしまった。そんな印象ばかりが強く残る超凡戦だった。