カール・ビリプス(オーストラリア)がPGAツアーのキャリアにおいて、夢のようなスタートを切ったことに異を唱える者はいないだろう。23歳のビリプスは、ルーキーイヤーでの出場わずか3戦目だった今月「プエルトリコオープン」で優勝を果たした。さら…

カール・ビリプス(オーストラリア)がPGAツアーのキャリアにおいて、夢のようなスタートを切ったことに異を唱える者はいないだろう。
23歳のビリプスは、ルーキーイヤーでの出場わずか3戦目だった今月「プエルトリコオープン」で優勝を果たした。さらに彼は憧れのタイガー・ウッズと契約し、ウッズのアパレルライン「サンデーレッド」を着用することになった。
ビリプスは、ウッズが通ったスタンフォード大の卒業生である。ビリプスもプロ転向後、すぐに成功を収め、PGAツアーU上がりの選手による最新のサクセスストーリーを紡いでいる。昨年、ビリプスはプロ4戦目で早くもコーンフェリーツアーでの優勝を飾り、PGAツアー2025年シーズンのシード権を手にしている。

また、ビリプスは多くの点で同郷の先輩であるジェイソン・デイのルートをなぞっている。ビリプスとデイはともにオーストラリア出身であり、そろってコリン・スワットンをコーチとしている。
「ジェイソン(デイ)のやっていることの多くは、練習や僕のゴルフに半ば埋め込まれているようなものです」とビリプスは述べている。
デイは全盛期だった2015年から16年にかけて、テーラーメイドのギアを使用しており、その間、「ザ・プレーヤーズ選手権」と「全米プロゴルフ選手権」での優勝を含むPGAツアー8勝を挙げ、世界ナンバーワンに登り詰めている。当時ジュニアゴルファーだったビリプスが、テーラーメイドとの関係を築き始めたのも、ちょうどこの頃のことだった。
ギアの観点から言うと、ビリプスは12か13歳の頃からテーラーメイド一筋であり、現在同社で選手育成部門のシニアマネジャーを務めるライアン・レッサのようなテーラーメイドのフィッターと仕事をしてきた。ビリプスが初めて飛び込みでテーラーメイドの施設を訪れたのは、トーリーパインズでの「ジュニア世界選手権」に出場するため当地にいた時だった。
レッサは「受付から電話があって、我々に会いたいとジュニアの選手が訪ねてきたと言ってきました。カールは12か13歳の頃から我々の契約選手であり、彼はサンディエゴにある我々の施設に、年に2度ほど来ています」
「ですので、我々は彼のテストの仕方に慣れていますし、彼はギアの変更に関して柔軟なのです。彼は年に1度、オフシーズンにバッグの中身全体を見直すのが好きで、我々が何か新しい物を提示する時はいつでも、その日のうちにいくつかの調整を施し、大抵の場合、すぐにそれを実戦投入します。それだけに、彼とは1年を通してとてもやりやすいですね」

今では本格的なPGAツアーのテーラーメイド契約選手となったビリプスは、バッグ全体の14本をテーラーメイドのクラブで統一している。以下は、ビリプスのギアセッティングについて知っておくべき5つのポイントである。
1. 新スパイダー
アマチュア時代、ビリプスはジェイソン・デイにインスパイアされた短いスラントネックのテーラーメイド イッツィビッツィ スパイダーレッドパターの使い手として知られていた。彼はデイが同じクラブで優勝したのを見た直後に、このクラブをバッグに入れた。しかし、8年が経ち、ビリプスは新しいスパイダーへと乗り換えた。現在彼が使用するのは、プランバーネックの装着された、新しいテーラーメイド スパイダー ツアーXパターである。
この新パターは、最近新たなパッティングコーチと取り組み始めたことで変化した彼のストロークにより適している。今の彼のストロークは、以前の真っすぐ引いて真っすぐ出すパッティングスタイルに比べると、よりアークが強くなっている。また、ビリプスは両手を前方へ傾けない(フォワードプレスしない)ため、パターのロフトはわずか2度ほどとなっている。
「ヘッドの大きかった赤いスパイダーでは、ネックを回転させることはできませんでした。あれは真っすぐに引いて出す感じでした。こちらの方が少しやりやすいですね。それで、グリップをやや厚めにした上でバッグに入れました。投入直後から良い転がりを見せていますので、そのまま使い続けています。これは素晴らしいですね」とビリプス。
この変更が奏功したのは、ビリプスが2025年「プエルトリコオープン」を制覇した際に新しいスパイダー ツアーXを使用していたことからも明らかである。

2. 愛しの7番ウッド
ビリプスはPGAツアーで増え続けつつある7番ウッド派の一人であり、15度の新Qi35 3番ウッドに加え、21度のQi10 7番ウッドを使用している。彼がこのクラブを一番のお気に入りとしている理由は、その用途にある。
「僕は今までロングアイアン派だったことはありません。僕にとっては打つのが難しく感じられ、パー5で高く打ち出すのが難しいのです。それで、長い間3番ハイブリッドを使っていましたが、スピン量が十分ではありませんでした。とはいえ、昨年パック12(選手権)で勝ったときは、とても良い仕事をしてくれました」
「僕はとにかく、打ち出しがかなり高く、4番アイアンと3番ウッドのギャップを埋められるクラブが欲しかったのです。このギャップはかなり大きいですからね。ハイブリッドの飛距離は240ヤードほどでしたが、これは(キャリーで)250ヤードほど飛びます。ギャップを完璧に埋めているんです」
「これだとスピンを利かしたカットで220ヤードを打つこともできますし、ライン出しでスピン量を減らして260ヤード打つこともできます。使い勝手が良いですね。地面からもティショットでも使えますし、風に向かって打つ際にスピンが入り過ぎることもありません。時速15マイルの向かい風でも、飛距離は5から10ヤードほどしか落ちないので、素晴らしいですね。最高なのは、スピン量が多そうな見た目ながら、そうではないところです」。7番ウッドを愛してやまないのも納得である。

3. 新ドライバーでさらなる飛距離
レッサが触れた通り、ビリプスは良い物を見つけると、すぐに乗り換えるため、彼がロフト角9度の新しいテーラーメイドQi35ドライバーを使用していることに不思議な点はない。なお、ビリプスは新しいヘッドに藤倉コンポジット ベンタスTRブルー6TXシャフトを装着している。
このヘッドを初めて打つ前、ビリプスはティショットで彼の好むカットショットに向いている、より低スピンで寛容性の高い物を探していたと述べたのだが、最終的に彼はボール初速でも時速3マイルの増加を実現させている。
「Qi35を初めて打った時、僕らはスピン量が少し低めで寛容性のある物を求めていたのですが、まさにそれを見つけました。このドライバーは最高ですね。スピン量は2000から2300rpmほどですが、それが自分の求めている数字です。低スピンでありながら、すぐに落ちてきてしまうことはありません。必要に応じて飛ばすこともできますし、低スピンで高く打ち出すと、どこまででも飛んでいきます。そういうショットでは、キャリーで320ヤード飛ばすことができます。ヘッドスピードを時速3マイル上げられる快適さがあり、スピン量を同じにとどめながらボール初速も上げられるのが良いですね」

4. 新しいP770ロングアイアン
2025年シーズンの開始時点では、ビリプスは4番アイアンからPWにかけて、テーラーメイドP7CBアイアンのフルセットを使用していた。しかしながら、「ザ・プレーヤーズ選手権」を前に、ビリプスはより高さが出て、パー5の第2打でグリーンに止める力のあるロングアイアンのオプションを模索していた。
彼の模索はP770の4番アイアンを見つけた時点で終了した。
これについて「打ち出しの高い物を探していました。僕の4番アイアンは少しフラットに出ていました。追い風では、(グリーンに)止めるのが難しかったのです。これ(P770)は練習レンジやコースで打ってみると、少し打ち出し角が高めでした。飛距離も数ヤード伸びましたが、前の4番アイアンは自分の5番アイアンより10ヤードくらいしか先へ行っていませんでした。ですので、これで然るべき高さへ打ち出せることにより、ロングアイアンの番手間のギャップが均等になったのです」と説明した。
「地面から直に打つ上で少し寛容性の高い物が必要でした。前の4番アイアンはティショットで素晴らしかったのですが、パー5(の2打目)で高く打ち出して、(グリーンに)柔らかく着弾する物が欲しかったのです。4番アイアンで打たなければならない時は、毎回これが問題となっていて、自分のキャディには、これだったら5番(アイアン)で思い切りハードに打つ方が良いよ、と言っていました。ですので、僕らはそれを解決する物を間違いなく必要としていましたし、これで見つけることができた」

5. ラウンドに応じたドット
PGAツアーの選手たちが、ボールにどういう印をつけているか見るのは、いつだって興味深いものである。全く同じ方法でボールに印をつける選手は2人といない。そうなってしまうと、結局のところ、ボールにマーキングする意味がなくなってしまうからだ。
ビリプスの場合、自身の使用するテーラーメイドTP5xボールの片面には自分のイニシャルを書き入れ、ボールの反対側には、プレーしている大会のラウンドに応じてドットを記すという独特のマーキングを施している。従って、木曜の第1ラウンドでは、彼はドットを1つ書き入れる。金曜の第2ラウンドでは、ドットを2つ書き入れる、という具合になる。
プレーオフで彼がどうマーキングするかはまだ分かっていない。彼は3打差で初優勝を決めたため、まだプレーオフを戦い抜く状況に直面していないのである。何しろ、彼はシード権を手にしたキャリアにおいて、まだPGAツアーで5大会にしか出場していないのだから。それが判明するには、まだ時間がかかるだろう。それにしても、これまでのところ、なんと素晴らしいキャリアを送っていることか。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)