「選抜高校野球・準々決勝、横浜5-1西日本短大付」(26日、甲子園球場) 150キロ超えの剛球はない。それでも、聖地の空気を一変させる力が横浜(神奈川)の奥村頼人投手(3年)にはあった。「流れを変えてくれ」-。村田浩明監督(38)から託さ…

 「選抜高校野球・準々決勝、横浜5-1西日本短大付」(26日、甲子園球場)

 150キロ超えの剛球はない。それでも、聖地の空気を一変させる力が横浜(神奈川)の奥村頼人投手(3年)にはあった。「流れを変えてくれ」-。村田浩明監督(38)から託されマウンドへ。19年ぶりの春4強をたぐり寄せた。

 「織田が粘り強く投げてくれたんですけど、チームとしては悪い流れだった。一番流れを変えるのは三振だと思った」

 1-1の六回に登板すると、テンポ良く腕を振った。おもしろいように駒橋のミットに白球が吸い込まれる。強力な相手中軸に対し、1回を3者連続3球三振で抑える「イマキュレートイニング」を達成。直後の攻撃でチームが勝ち越し、期待通りに流れを呼び込むと、4回を完全に封じた。

 第1試合では健大高崎・石垣が大会最速の155キロを記録。「すげえなと…」。率直な心境も明かしたが「自分はそこじゃない」と言った。目指すのは「140キロ前後でも空振りが取れる、球速以上に感じる直球」。下手なプライドは捨て、持ち味を磨き続けてきた。

 母・いつ子さん(46)いわく「宇宙人」。弱音は聞いたことがなく「本当に思ってることは秘める」タイプだという。地元・滋賀を離れる際には、さみしがる母に一言。「オレのギャグが通じるか心配や」。持ち前の物おじしない性格で、名門の背番号1を背負う。

 次戦は、昨秋関東大会の決勝で下した健大高崎だ。「手ごわい相手。チャレンジャーの気持ちで」と左腕。春の王者へ、誇りはあれど、おごりはない。

 ◆イマキュレートイニング・NPBでの達成者 過去のNPBの公式戦でイマキュレートイニングを達成したのは20人(梶本隆夫、モイネロが2回)、22回しか記録されていない。昨季は森浦大輔(広島)が6月1日のソフトバンク戦(みずほペイペイ)の七回、森下暢仁(広島)が7月2日の阪神戦(マツダ)の五回に達成した。

 ◆奥村 頼人(おくむら・らいと)2007年9月8日生まれ、17歳。滋賀県彦根市出身。左投げ左打ち。179センチ、85キロ。3歳から野球を始め、高宮スポーツ少年団に所属していた小6時は阪神ジュニアに選出。彦根中では滋賀野洲ボーイズでプレー。横浜では1年春からベンチ入り。50メートル走6秒4、遠投100メートル。憧れの選手はカブス・今永昇太。