選抜高校野球大会は26日、阪神甲子園球場で準々決勝があり、浦和実(埼玉)が聖光学院(福島)に12―4で勝ち、準決勝に進んだ。 春夏通じて初出場で4強入りの原動力は、3試合で計18回を無失点のエース左腕・石戸颯汰(そうた)投手(3年)…

選抜高校野球大会は26日、阪神甲子園球場で準々決勝があり、浦和実(埼玉)が聖光学院(福島)に12―4で勝ち、準決勝に進んだ。
春夏通じて初出場で4強入りの原動力は、3試合で計18回を無失点のエース左腕・石戸颯汰(そうた)投手(3年)だ。
直球の球速はほとんどが120キロ台。身長176センチ、体重64キロと細身の体から、右膝を顔付近まで高く上げる変則的なフォームで投球する。高く上げた右脚で左手が隠れるため、打者は球の出所が見づらい。
独特のフォームから繰り出す直球と緩い変化球を巧みに操り、打者たちを文字通り「幻惑」する。昨秋も公式戦8試合で防御率0・72とほとんど打たれなかった。
しかし、150キロ台の直球を持つ投手もいる中で、120キロ台の石戸投手がなぜ打たれないのか。
初戦であたり、わずか6安打で完封された滋賀学園。昨秋に5割6分7厘の高打率を残した吉森爽心(そうしん)選手は「全く球が見えない中で、ストライクゾーンに来る。(球が)気付いたら手元にあった」と表現する。
4番の秋満大知選手は「真っすぐが思ったより来ていて……。真っすぐで刺された感じです。見逃せばボールなんですが、振りたくなる高さにうまく投げられて、はまってしまった」と悔やんだ。
2回戦で対戦した東海大札幌(北海道)の4番・太田勝馬選手は「高めのストレートが伸びてくるような感じ。ストライクと思って打ちに行っても、想像以上に伸びてきて打ち上げてしまった」。
太田選手の双子の兄で3番打者の勝心(まさむね)選手は「カーブで高めに目付けをさせてからストレートが来るのがやっかいだった」と振り返る。独特の投球フォームについても「タイミングの取り方が難しい。やっぱり打ちづらい」と明かした。
浦和実の指導者たちは、ある変化球を「魔球」と表現する。
田畑富弘部長は「ベンチで見ていても、チェンジアップが揺れて見える時がある。バッターがホームベースの前で空振りしている。まだ球が来てなくて、もう一回振れるんじゃないかっていうくらい……。私も辻川(正彦)監督も『魔球だ』って言っています」
見た目以上に切れのある直球と、切れ味鋭い変化球が相手打者を苦しめているようだ。
もっとも、石戸投手本人は準々決勝の試合後、「なんで打たれないのかな」と不思議そうな様子だった。【長宗拓弥、深野麟之介、高橋広之、黒詰拓也】