伊東勤インタビュー(後編)前編:伊東勤が西武新戦力を分析>> 昨年はソフトバンクが圧倒的な強さで優勝を飾ったが、2025年シーズンのパ・リーグはどんな戦いが予想されるのか。また、西武、ロッテと2球団で監督経験のある伊東勤氏に順位を予想しても…
伊東勤インタビュー(後編)
前編:伊東勤が西武新戦力を分析>>
昨年はソフトバンクが圧倒的な強さで優勝を飾ったが、2025年シーズンのパ・リーグはどんな戦いが予想されるのか。また、西武、ロッテと2球団で監督経験のある伊東勤氏に順位を予想してもらった。昨年91敗を喫した西武の巻き返しはあるのか?
日本ハムの監督に就任して4年目を迎える新庄剛志監督
photo by Koike Yoshihiro
【最多勝を狙える先発投手が4人】
── 来たる2025年シーズンの西武で一番気になる点はどこでしょうか。
伊東 今季の「キーマン」は、昨年0勝11敗だった髙橋光成の復調なるかですね。昨年は、春季キャンプでの右肩の張りで出遅れましたが、1年間を通じて調子が上がりませんでした。それまで3年連続2ケタ勝利を挙げていたわけですから。
── 3年連続2ケタ勝利は、現役では巨人の戸郷翔征投手しかいません。
伊東 それだけ難しいということです。もちろん、相手チームもエース級をぶつけてくるわけですが、勝つのは容易なことではありません。それでも負けてはいけないわけです。そこに勝ってこそ"エース"ですから。今季は今井達也が3年連続2ケタ勝利に挑戦しますが、期待したいですね。
── 西武の先発ローテーションですが、左右とも揃っています。
伊東 そうなんです。左は昨年ルーキーながら10勝を挙げ、新人王に輝いた武内夏暉。2年連続9勝の隅田知一郎。右は昨シーズン最多奪三振のタイトルを獲った今井。さらに、10勝した経験がある松本航、昨年頭角を現した渡邉勇太朗......そして髙橋光成なんです。10勝どころか、最多勝を狙える投手が武内、隅田、今井、髙橋と4人もいる。裏を返せば、その先発投手たちをどのように生かすかです。
── そうなるとリリーフ陣がカギを握りそうです。
伊東 先発陣の防御率2.85はリーグ2位ですが、リリーフ陣は3.41でリーグ5位です。新外国人のトレイ・ウィンゲンターとエマニュエル・ラミレスに佐藤隼輔、甲斐野央がクローザーの平良海馬にしっかりつなぐことができるか。先発陣が試合をつくり、リリーフ陣にバトンを渡す。接戦をものにすることができれば、チーム力は上がっていきますが、逆転負けを喫すると不安に変わる。それだけに、早い時期に"勝利の方程式"を確立することができるかがポイントになります。
【成長待ち望むドラ1野手たち】
── 「投手力を生かす」という観点からすれば、捕手も重要になります。
伊東 昨年、古賀悠斗が105試合、炭谷銀仁朗が49試合、柘植世那が42試合、牧野翔矢が10試合に出場しました。個人的には、もう古賀が中心でいいのかなと思います。先発投手、捕手のバッテリーに関しては、特に問題はありません。
── 昨年のパ・リーグは1位から最下位まで、チームの得点がそのまま順位に反映されました。
伊東 渡部健人、蛭間拓哉といったドラフト1位の打者がもうひと皮むけてほしいのですが、活躍したなと思っても、継続できないのが現状です。生え抜き選手が成長してくれたらいいですが、得点力が向上しないのであれば新戦力に期待するのもいいかもしれません。
── 昨シーズン、チーム打率はリーグ6位、チーム本塁打数も6位、チーム盗塁数は4位でした。
伊東 昨年は、フランチー・コルデロ、ヘスス・アギラーの両外国人で本塁打はわずか3本でした。そういう意味で、新戦力のレアンドロ・セデーニョ、タイラー・ネビンに期待したいところです。
【監督就任1年目の優勝は?】
── パ・リーグは西武・西口文也監督、楽天・三木肇監督、オリックス・岸田護監督の3人が新たに指揮を執ります。
※三木監督は2度目の就任
伊東 私も2004年に西武監督就任1年目で優勝しましたが、昨年はパ・リーグがソフトバンクの小久保裕紀監督、セ・リーグの巨人が阿部慎之助監督で1年目の優勝を果たしました。そう考えると、新体制の西武、楽天、オリックスがどうペナントレースを盛り上げていくか、見どころ満載です。
── 優勝争いをどう予想しますか。
伊東 日本ハムは新庄剛志監督が就任し、1年目、2年目、3年目と明らかに野球が変わってきました。昨年のクライマックスシリーズ(CS)では、ソフトバンクに3連敗を喫したとはいえ、選手たちはすごく大きな経験をしました。「もう1つ上にいきたい」という気持ちを監督、選手から感じます。
ソフトバンクは司令塔の甲斐拓也がFA移籍しましたが、その穴が埋まるのか。また、石川柊太もロッテに移籍しましたし、故障者が出ているのも気になります。それでも上沢直之、上茶谷大河、濵口遥大らの投手が加入するなど、選手層はやはり厚いです。
── CS圏内の3位争いはどうなりそうですか。
伊東 オリックスはリーグ3連覇したあと、山本由伸(ドジャース)が抜け、軸が不在。宮城大弥がいて、九里亜蓮をFA補強したとはいえ、そのあとがなかなか続かない。ロッテは佐々木朗希がドジャースにポスティング移籍しましたが、チーム力は安定しています。楽天は早川隆久ら投手陣がいいですし、注目のルーキー・宗山塁が加わり、チームがどう変化するのか注目です。そして西武は先発陣が揃っているので、勝ちパターンを確立できれば十分チャンスはあると思います。
── では、パ・リーグの順位を予想してください。
伊東 1位・ソフトバンク、2位・日本ハム、3位・ロッテ、4位・西武、5位・楽天、6位・オリックスです。優勝争いはソフトバンクと日本ハムの2チームが争うと思うますが、3位争いは最後の最後まで熾烈な戦いが繰り広げられるでしょう。
伊東勤(いとう・つとむ)/1962年8月29日、熊本県生まれ。熊本工高3年時に甲子園に出場。 熊本工高から所沢高に転入し、転入と同時に西武球団職員として採用される。 81年のドラフトで西武から1位指名され入団。強肩と頭脳的なリードでリーグを代表する捕手に成長し、西武の黄金時代を支えた。2003年限りで現役を引退。04年から西武の監督に就任し、1年目に日本一に輝く。07年限りで西武の監督を退任し、09年にはWBC日本代表のコーチとして連覇に貢献。その後も韓国プロ野球の斗山のコーチを経て、13年から5年間ロッテの監督として指揮を執り、19年から21年まで中日のコーチを務めた