(26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 健大高崎9―1花巻東) 去年の秋、左ひじにメスを入れた時はまさか、春の甲子園で投げられるとは思っていなかった。 今大会初登板となった花巻東の3年生、浅利渉太。 大会2連覇を狙う健大高崎に対して、…
(26日、第97回選抜高校野球大会準々決勝 健大高崎9―1花巻東)
去年の秋、左ひじにメスを入れた時はまさか、春の甲子園で投げられるとは思っていなかった。
今大会初登板となった花巻東の3年生、浅利渉太。
大会2連覇を狙う健大高崎に対して、まっさらなマウンドに上がった。
「1回戦、2回戦は投げられなかったので、すごい楽しみな気持ちと、プレッシャーを感じました」
ひじの痛みは、1年生の時から感じていた。手術を勧められたが、メンバー入りの当落線上にいたこともあって、なかなか踏み切れなかった。
クリーニング手術を決断したのは2年生だった昨年の10月末。
2カ月後に投げた復活の第1球は、20メートルも届かなかった。
「ひじの痛みが怖くて、焦りがあった」
そんな時、投球フォームを上手から横手投げに変えた。チームに左投げ投手は萬谷堅心、千葉琉晟、赤間史弥がいる。
激しい競争で勝ち抜くための工夫だった。
「自分は出力が足りないし、身長も(170センチと)大きくない。横からの角度で勝負できるようにするのが、ベストだなって」
自分の持ち味は何か――。
背中を押してくれた施設があった。
先輩で大リーガーの菊池雄星(エンゼルス)が監修し、昨年11月、学校近くにオープンした屋内野球施設「キング・オブ・ザ・ヒル(KOH)」だった。
KOHでは弾道測定器「ラプソード」で球速や回転軸、変化量を計測してもらい、投球の参考にしてきた。
「速い球と遅い球で勝負するより、遅い球から、さらに遅くなる球で勝負するのが自分には合っている」
科学的に裏打ちされたデータをもとに、新しい投球フォームを磨いた。
選抜大会前の遠征で何度も結果を残し、背番号「11」をつかんだ。
この日は先頭打者にストレートの四球を与えてから、自分の投球を取り戻す間もなく、わずか4人で交代となった。
エースだった菊池が準優勝に貢献した2009年以来の準決勝進出はならなかった。
それでも、短期間でマウンドに戻れた達成感があった。
「これ以上ないぐらいの舞台でプレーさせてもらったので、次は良いイメージを持って、夏に臨めるようにしたい。自分から崩れていくようなピッチャーではなく、テンポの良いピッチングで、チームに良い流れを持っていけるようにしたい」
不安だらけだった冬を乗り越えたサウスポーに、新たな課題が見つかった。(笠井正基)