(25日、第97回選抜高校野球大会2回戦 早稲田実4―7聖光学院) 3点を追う九回表、伝統の早稲田実のエースナンバー「1」を背負った中村心大(こうだい)(3年)がマウンドに戻った。この試合、先発したものの直球を狙われ、4回3失点で降板してい…
(25日、第97回選抜高校野球大会2回戦 早稲田実4―7聖光学院)
3点を追う九回表、伝統の早稲田実のエースナンバー「1」を背負った中村心大(こうだい)(3年)がマウンドに戻った。この試合、先発したものの直球を狙われ、4回3失点で降板していた。
だが、中村が九回、勝負球と決めていたのは、その直球だった。「悔いのないよう、最後は自信のある球で」。2者連続で140キロを超える直球で三振に。最後の打席に立った相手エースには、すべて直球で勝負した。「下を向いても変わらない。とにかく、いい流れを持ってきたかった」。マウンドでガッツポーズをしてチームを鼓舞し、逆転に望みをつないだ。
中村は昨夏の甲子園でも、エースとしてマウンドに立った。計5試合を投げて防御率7点台だった西東京大会から一転、甲子園では2回戦で完封するなど好投した。「吹っ切れた。周りからも点を取られて当たり前と思われていたので」
課題だった球の強さと制球力を磨き、迎えた春の甲子園の初戦。8回1失点、8奪三振でチームを勝利に導いた。
この日の試合でも力投したが、相手の対策が上回った。聖光学院の4番で主将の竹内啓汰(同)は「球威のある高めの球を見切って、低めのストライクゾーンに来た球を強く振り抜くという対策を徹底的にやった」。
四回、無死一塁で迎えた打者はその竹内。フルカウントで投じたのはカットボールだった。左翼方向に引っ張られ、この試合初失点。この回3点を失い、マウンドを降りた。「苦手な変化球に頼ってしまったのが失点につながった」。エースを打ち崩され、同点に追いつかれた早稲田実は、試合の流れも失った。
中村が去ったマウンドは、仲間4人が継投で守った。試合が進むと、「自分も(もう一度マウンドに)立ちたい」という思いが湧いてきた。
思いは和泉実(みのる)監督(63)に伝わる。「こっちを向いて投げたそうにしていた」。九回、再び、マウンドに送った。「うちのエース。負けるにしたって、甲子園とお別れするには思い切って腕を振らせてあげたい」。監督、チームの思いも背負って投げた最後の1イニングだった。
試合後、中村は「エースナンバーが外れてもいいと思うくらい実力が足りなかった」と悔しがった。見据えるのは夏の甲子園だ。「ここで終わりではない。後ろを向いている場合じゃない」。再び、このマウンドに戻ってくることを誓った。(西田有里)