◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」「自分で取材をすれば、馬券は当たるようになるのか?」。私が競馬担当を志望した理由の一つだが、現場で取材を続けて13年。競馬は本当に奥が深い。 茨城県の美浦トレーニングセンターで毎週のように調教を見て、調教…

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

「自分で取材をすれば、馬券は当たるようになるのか?」。私が競馬担当を志望した理由の一つだが、現場で取材を続けて13年。競馬は本当に奥が深い。

 茨城県の美浦トレーニングセンターで毎週のように調教を見て、調教師、騎手に話を聞いても、簡単には正解(勝ち馬)にたどり着かない。理由は書き切れないほどあるが、「おまえに予想センスがないだけだろ」と突っ込まれたらぐうの音も出ない。だから、私の馬券論ではなく、そもそも競馬というスポーツがどれだけ難しいものなのか、プロの見解を紹介したい。

 松岡正海騎手はデビュー3年目で重賞を勝ち、5年目でG1制覇。8年目で年間100勝。20代にしてトップジョッキーに上り詰めたが、その後は大けがで何度も戦線離脱。頂点とどん底を味わって40代に突入した彼の競馬観は、自然と変化していた。「馬という生き物を、より深く理解したいなと思うようになったんです。逆に、それがなかったら引退した時に寂しいなと」

 騎手が馬に乗るのは週末だけではない。トレセンが開場している火曜から金曜まで、松岡は1頭1頭、その馬にあった調教、レースを選択し、競馬を終えると、また次の1頭と向き合う。数え切れないほど馬にまたがっても正解の出ない日々だが、探究心は増すばかりだ。「例えば70歳まで(競馬の仕事を)やりましたという状況になったとして、たぶん最後に言う言葉は『やっぱり馬ってわからないですね』だと思います。でも、勉強して、努力をして、少しでも、もしかしたらこうなのかなという真理に近づけたら、僕は満足です」。

 彼の姿勢には本当に頭が下がる。私も「馬券の真理」に近づく日まで、現場で取材を続けるつもりだ。(中央競馬担当・西山 智昭)

 ◆西山 智昭(にしやま・ともあき)2001年入社。サッカー担当、巨人担当を経て12年から中央競馬担当。好きなG1は天皇賞・秋。