清水直行インタビュー 後編パ・リーグ順位予想(前編:吉井ロッテの3年目を分析 ドラフト1、2位コンビがもたらした競争と期待の投手を語った>>) 昨季はソフトバンクが2位の日本ハムに13.5ゲームの大差をつけ、4年ぶりのリーグ優勝を達成。他チ…
清水直行インタビュー 後編
パ・リーグ順位予想
(前編:吉井ロッテの3年目を分析 ドラフト1、2位コンビがもたらした競争と期待の投手を語った>>)
昨季はソフトバンクが2位の日本ハムに13.5ゲームの大差をつけ、4年ぶりのリーグ優勝を達成。他チームが「打倒・ソフトバンク」を目指して挑む今シーズンは、はたしてどんな展開になるのか。長らくロッテのエースとして活躍し、2018年、19年にはロッテの投手コーチも務めた清水直行氏に、パ・リーグの順位を予想してもらった。
本塁打を放ったレイエス(右)を迎える新庄剛志監督。日本ハムはオープン戦を勝率1位で終えた
photo by Sankei Visual
【1位予想:ロッテ】
――古巣のロッテを1位と予想しましたが、その理由は?
清水直行(以下、清水) まずひとつは、小島和哉、種市篤暉、西野勇士と計算できる先発の柱がいること。加えて、ソフトバンクからFAで加入した石川柊太、新外国人のオースティン・ボス、若手の有望株である田中晴也、中森俊介もローテーション争いに食い込んでくると思います。
リリーフ陣も、鈴木昭汰や復帰したタイロン・ゲレーロ、国吉佑樹、横山陸人、益田直也ら層が厚くなっている。これなら長いシーズンをやり繰りしていけるだろう、という印象です。
――佐々木朗希投手(現ロサンゼルス・ドジャース)が抜けた穴も埋まる?
清水 各ピッチャーが少しずつ勝ちを上積みできれば十分に埋まります。特に期待しているのは田中晴。オープン戦では安定したピッチングを見せてくれましたし、ローテーションに入って力を発揮してくれるシーズンになると思います。種市に関しては、三振にこだわらなければ長いイニングを投げられますし、普通にやれば2桁は勝てるピッチャーです。
――課題は打線でしょうか?
清水 近年、どうやって点を取るかが大きな課題ですからね。ただ、今季は髙部瑛斗が開幕から元気な状態でスタートできそうなので、(彼が)チャンスメイクをして、ネフタリ・ソトやグレゴリー・ポランコ、佐藤都志也ら中軸の"お膳立て"をしてほしいなと。それと、ドラフト1位ルーキーの西川史礁(青学大)が外野に、同2位ルーキーの宮崎竜成(ヤマハ)が内野にいい競争をもたらしてくれています。相乗効果でチーム力を底上げできれば、優勝を狙えると思います。
【2位予想:日本ハム】
――昨季2位と躍進した日本ハムを、今季も2位に予想されました。
清水 ロッテは期待値も含めて1位と予想しましたが、日本ハムも十分に優勝を狙える戦力が整っています。先発は伊藤大海、山﨑福也、加藤貴之、金村尚真、北山亘基、ドリュー・バーヘイゲンらがいて盤石ですし、リリーフも充実しています。それと、ロッテと同様に主力にケガ人が少ないのもプラス要素です。
――新庄剛志監督の野球が各選手に浸透していることも強みでしょうか。
清水 チームに穴が見えませんし、総合力という点では他チームより一歩抜けているかなと。新庄監督が3年間指揮を執ってきたことで戦術が浸透し、打線のなかでの"主役"と"脇役"がそれぞれいい仕事をしています。
フランミル・レイエスや万波中正、水谷瞬らの長打力は脅威ですし、小技や走塁が得意な選手も揃っていて攻撃のバリエーションが豊富ですよね。あえてウイークポイントを挙げるとすれば、抑えの田中正義でしょうか。つけ入る隙があるような気がします。
【3位予想:ソフトバンク】
――昨季リーグ優勝を果たしたソフトバンクを3位とした理由は?
清水 昨季は柳田悠岐が早々に離脱しながら独走しましたし、打線は引き続き脅威だと思います。ただ、野球はバッテリーを中心とした守りが肝になるので、やはり甲斐拓也が抜けた穴が大きいです。ピッチャー陣をまとめることもそうですし、司令塔として試合を支配していた存在がいなくなったことで相当苦労するはず。甲斐の穴は、他のキャッチャーひとりでは埋められないと思っています。
――先発陣には、新しく上沢直之投手や濵口遥大投手が加わりました。
清水 両投手ともにオープン戦でのボールを見ると、本来のキレを感じません。有原航平とリバン・モイネロの2枚は計算できますが、カーター・スチュワートが出遅れていることが痛いですし、東浜巨ら他の先発ピッチャーが奮起しないと苦しくなりそうです。
リリーフ陣に関してはロベルト・オスナやダーウィンゾン・ヘルナンデス、藤井皓哉、杉山一樹らがいますが、全体的には以前と比べて少し陰りが見え始めている気がします。とはいえ、打つほうはかなり強力なので、失点を減らすことができれば十分に優勝を狙えると思います。
【4位予想:オリックス】
――岸田護新監督のもとで巻き返しをはかるオリックスは、4位に予想されました。
清水 先発の柱として期待していた山下舜平大が、故障で離脱しているのが痛いです。タフな九里亜蓮の加入は心強いと思いますが、先発陣をどう整備するのか。さらに宇田川優希など、復活を期待していたピッチャーが離脱しているのもマイナス要素です。攻守の要である森友哉も離脱するなど主力に故障者が多く、開幕から選手のマネジメントに苦労しそうな印象です。
――打線の奮起が期待されますが、オープン戦では低調でした。
清水 ある程度状態がよかった森が抜け、頓宮裕真や西川龍馬、杉本裕太郎ら実績があるバッターたちに復調してもらいたいところですが、オープン戦では軒並み打てていないので心配です。紅林弘太郎や宗佑磨、ベテランの西野真弘らは安打が出ているので、状態のいい選手を打線にどう組み込んでいくかですね。
それと、ドラフト1位ルーキーの麦谷祐介(富士大)や、同4位ルーキーの山中稜真(三菱重工East)ら若手の押し上げがあるかどうか。両選手ともにオープン戦では即戦力として活躍できそうな片鱗を見せてくれていますし、試合に出るチャンスは多いと思うので、レギュラーを奪う気持ちで頑張ってほしいです。
【5位予想:楽天】
――三木肇監督に指揮官が代わった楽天。5位に予想したのはなぜでしょう?
清水 先発の頭数が不足しています。ベテランの岸孝之にも頼らざるをえない状況ですし、早川隆久と藤井聖に続く計算できる先発ピッチャーがいません。内星龍はいいピッチャーだと見ていたのですが、リリーフに配置転換されるようですしね。それと、リリーフでは宋家豪や酒居知史が離脱と、オリックス同様に故障者が多いです。
――打つほうでは、今季期待されていた安田悠馬捕手が右手首付近の骨折で長期離脱。正捕手候補でもありましたし、こちらも痛いですね。
清水 そうですね。それと、浅村栄斗、鈴木大地、阿部寿樹ら、打線もベテランに頼らないといけない状況が厳しい。とはいえ、辰己涼介、小郷裕哉、小深田大翔、村林一輝ら中堅どころがしっかりしていますし、ドラフト1位ルーキーの宗山塁もいるという点では、ある程度の形はできています。中軸となる選手があと1、2人は欲しいところですね。
とにかく楽天の場合は、先発ピッチャー陣が奮起できるかどうか。ここを整備できれば、上位進出の可能性はあると思います。
【6位予想:西武】
――最下位予想の西武ですが、今季はチームの立て直しをはかるため、首脳陣を一新しましたね。
清水 体制を整えるのは重要なことだと思いますが、やるのは選手ですからね。打線に関しては、中軸を任せられるバッターが出てこないと厳しいです。
タイラー・ネビンがオープン戦でいいバッティングを見せて結果を出していましたが、新外国人選手は未知数ですし、シーズンに入ってからどうなるか。それと、オープン戦では外崎修汰、西川愛也、長谷川信哉らが結果を出していましたが、このあたりの選手が打つかどうかで得点力がまったく変わってくるでしょう。
――ピッチャー陣はいかがですか?
清水 やはり、髙橋光成が先発ピッチャー陣の一角として勝ち星を伸ばしていかないといけませんね。昨季は15試合に先発して未勝利(0勝11敗)だったわけですが、昨季のようなことはないはずです。昨季の新人王の武内夏暉は離脱していますが、髙橋、今井達也、隅田知一郎、渡邉勇太朗、與座海人、菅井信也と先発ピッチャー陣は揃っていますし、いかに点をとって勝ちをつけられるかがポイントですね。
【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)
1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝(旧・東芝府中)から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの中核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年のシーズン後にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。