第2次世界大戦前のカナダで日系2世の移民が結成した野球チーム「バンクーバー朝日」。その流れをくむ新たなバンクーバー朝日が栃木県を訪れ、21日、地元の少年チームの選手たちと一緒に試合や練習に汗を流した。栃木県を訪れるのは2回目。「交流が縁を…

 第2次世界大戦前のカナダで日系2世の移民が結成した野球チーム「バンクーバー朝日」。その流れをくむ新たなバンクーバー朝日が栃木県を訪れ、21日、地元の少年チームの選手たちと一緒に試合や練習に汗を流した。栃木県を訪れるのは2回目。「交流が縁を結び、架け橋になることを願っている」という。

 バンクーバー朝日は、第2次世界大戦までの約30年間、カナダで活動。人種差別など排日ムードが濃い時代に活躍し、平等の象徴として人気を集めた。

 1941年に太平洋戦争が勃発し、日系人は強制収容所に送られるなどして、チームは解散した。しかし戦後、活動が再評価され、2003年、朝日はカナダ野球殿堂入りが決まった。

 朝日の創立から1世紀後の14年、日本では俳優の妻夫木聡さんらが出演した映画「バンクーバーの朝日」が公開されて話題に。同年にはチーム創立100周年を記念に、その伝統を引き継ぐ新しい朝日が結成され、翌年の15年から日本遠征を始めた。コロナ禍の中止を経て、5回目になるという。

 今回のチームは16歳以下のメンバーら約20人で構成。栃木県側の受け入れを担った独立リーグ・ルートインBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスによると、「野球文化が根強い栃木で交流し、これからの世界の野球界を牽引(けんいん)する大きな刺激を受けてもらいたい」という思いで、来訪が実現したという。

 チームは14日に来日し、千葉、東京を経て20日に栃木県入り。日光市で東照宮などを観光し、この日、宇都宮リトルシニアとの親善試合などに臨んだ。栃木県出身でプロ野球ヤクルトの監督を務めた真中満氏らの指導も受けた。

 試合は12―5で宇都宮の勝ち。バンクーバー朝日のコウタ・ヒライ主将(15)は「栃木の選手はすごい上手だった。誰もベンチで座っていない。みんな声を出している。いつも走っている」と勉強になった点を挙げた。朝日の副会長も務める小川学監督は「よりいっそう強い絆を持って交流が続いていくことを願っている」。

 栃木県民球団の江部達也社長も「末永く、継続的にチーム運営をしていただきたい。選手のみなさんは大いに楽しんでいただいて、たくさんの思い出を持って帰っていただければ」と話していた。

 チームは22日以降も、親善試合をしたり、栃木ゴールデンブレーブスの試合を見たりする予定。(津布楽洋一)