元日本代表MFの中村憲剛氏が、20日にバーレーンに勝利し、W杯出場を決めた森保ジャパンの戦いを総括。相手の視線を変えられる選手層が「横綱相撲」の戦いに結びついたと指摘した。******** バーレーンは独走する日本に対して、この最終予選を…

 元日本代表MFの中村憲剛氏が、20日にバーレーンに勝利し、W杯出場を決めた森保ジャパンの戦いを総括。相手の視線を変えられる選手層が「横綱相撲」の戦いに結びついたと指摘した。

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 バーレーンは独走する日本に対して、この最終予選を通じて初めてと言って良い戦い方を攻守で選択してきた。DFはハイラインで、中盤はかなりコンパクト。DFラインの背後には広大なスペースがあった。日本を分析し、強気にリスクを負った守り方を日本陣内と中盤で設定。私も現役時代そうだったが、あれだけ背後のスペースが空いていれば1発背後を狙いたくなる。だが、これはいつも通りの戦い方を日本にさせないための、バーレーンがまいたエサだった。

 日本は空いた背後にランニングを増やすことによりロングボールが多くなった。バーレーンとすれば中盤を封鎖し、縦パスと背後1発に守りの狙いを絞ったことで予測が早く対応も早かった。中盤でこまめにつなぎながら、相手を振り回して攻める日本のサッカーを、前向きに守れるコンパクトな守備で封鎖し、ロングボール主体に変えさせることで日本の武器の一つである即時奪回を発揮させず、ウィングバック(三笘、堂安)のルートも5バックにすることで遮断、日本のリズムを出させないように綿密に構築された素晴らしい前半の守備だった。

 それでも、日本の選手たちは解決策を試合中に考え続けていた。サッカーは90分で勝てばいい。うまく行かない時間でもジャブを打っておく感覚もあったように見えた。行ったり来たりの展開はバーレーンも同じで、後半は体力的にも落ちる。南野は背後へのランニングを繰り返し、ボディーブローのようにダメージを与えていた。

 ポイントは、鎌田の投入だ。鎌田は少し低い位置に下りて遠藤、田中のダブルボランチを助け、前線に時間とスペースを与えた。鎌田の動きに、相手の2トップ、ダブルボランチが食いつき、伊藤から上田への花道があき、そこを起点に先制点が生まれた。鎌田がいたスペースに、久保が入ってゴールに絡んだように流動性ももたらした。構築されたバーレーンの守備がゆがみ、壊れていくのが一目瞭然だった。

 誤解をしてほしくはないが、先発した南野と比べてどちらがいいという話ではない。大事なのは相手の目線を変えられる、攻め筋を変えられる選手がベンチに多くいるということだ。左サイドでは、三笘から中村に変わることでドリブルのステップが変わり、相手DFがついていけなかった。右サイドは堂安から、スピードを武器とする伊東へのスイッチ。疲労がたまる時間帯でこの違いを出されたら対応するのはかなりきつい。

 対戦が2順目を迎えたあたりから対策され、苦戦する場面もあったが、最後は殺傷力を発揮し、突き放した。対策をねじ伏せる総合力を示した試合と言えよう。ベストに近い戦いをしたバーレーン相手に、横綱相撲を見せた日本代表を見て、W杯出場が決まった!!という爆発的な感情ではなく、決まったか、という落ち着いたスタジアムの雰囲気は日本サッカーの成熟を感じさせた瞬間だった。(元日本代表、川崎MF)