「選抜高校野球・1回戦、エナジックスポーツ8-0至学館」(21日、甲子園球場) 1回戦3試合が行われ、2022年4月創部で初出場のエナジックスポーツは至学館を8-0で下して、創部3年目で甲子園初白星を手にした。選手同士で意思疎通を行う異例…

 「選抜高校野球・1回戦、エナジックスポーツ8-0至学館」(21日、甲子園球場)

 1回戦3試合が行われ、2022年4月創部で初出場のエナジックスポーツは至学館を8-0で下して、創部3年目で甲子園初白星を手にした。選手同士で意思疎通を行う異例のノーサイン野球を甲子園でも駆使した。カタカナ表記の高校としてはセンバツ初勝利。メンバー全員沖縄県出身の新鋭校が全国に名をとどろかせた。

 エナジックスポーツの選手は最後までベンチを見ることはなかった。正真正銘のノーサイン野球でつかんだ聖地初勝利。春夏通じて初の聖地にも臆することなく自分たちのスタイルを貫いた。

 主将の砂川誠吾外野手(3年)は「目指していた場所がここ(甲子園)。うまくできたことが自信になった」と胸を張った。計12安打8得点の猛攻の流れを生んだのが、選手間の意思疎通だけで繰り広げられる攻撃だった。

 ノーサイン野球はどのように成立するのか。象徴的なシーンは七回無死一塁。打席のイーマン琉海内野手(3年)は「ランナーが(二塁へ)行きそうな雰囲気があった」と意図的に三遊間へ打ち返した。一走がスタートを切っていたため、二塁ベースに寄っていた遊撃手の逆を突く遊撃内野安打に。ノーサインでエンドランを成立させ、この回の一挙6得点につながった。

 三回無死一、二塁では2走者がスタートを切ると、富盛恭太外野手(2年)がバスターで内角のボール球を二ゴロとして進塁させた。相手がバントシフトを敷いている中、「ランナーが動いたからボール球にも手を出した」と自身の判断でヒッティングを選択した。

 作戦の主導は基本的に走者が握る。走者が動けば打者がスタートのタイミングの良しあしを判断し、打つか見送るかを決める。走者のスタートが悪い場合はファウルで逃げる練習も行っており、ノーサイン野球は選手の高度な技術の中で成立する。

 2021年に通信制のみで創立された同校。今は全日制も併設され、野球部は全寮制で私生活も同じ時間を過ごす。ノーサイン野球の秘訣(ひけつ)はノーチャイムの学校生活。始業や休み時間終了の合図はなく、富盛は「時計と周りを見て自分たちで考えながらやっている」と学校生活から自主性を育んでいる。

 浦添商、美里工を率いて甲子園に出場した神谷嘉宗監督(69)は「ぼーっと見守っています」と笑った。ノーサイン野球のモデルは1994年に創部4年で神宮大会を制した東亜大。「大物を超えるには、この野球かなと」と選手主導で試合をかき回すスタイルに魅せられて前任の美里工時代から導入した。

 「自在に攻撃できるのが自分たちのチーム。対策はないと思う」と自負する砂川主将。カタカナ校名で初めて手にしたセンバツ勝利。聖地にエナジック旋風を巻き起こす。

 【部員の1日】

 エナジックスポーツでは全日制の授業は午前9時開始。生徒は国語、数学など主要な授業教科だけではなく、日本語ワープロ検定や情報処理検定などの資格取得に励む。平日は午後2時ごろまで授業が行われ、野球部員は同30分ごろから専用グラウンドで約4時間練習を行う。

 学校は世界で活躍するトップアスリートの育成を掲げるとともに、各種検定取得にも力を入れているため、練習後には授業や資格取得のための補習が行われることがある。土日は午前8時30分から約5時間の全体練習で、午後は自主練習を行っている。

 ◆エナジックスポーツ高等学院 2021年2月に通信制高校として医療・健康機器メーカー「エナジックインターナショナル」の大城博成会長が創立。所在地は沖縄県名護市。24年4月から全日制が導入された。全校生徒69人で全寮制。野球部は22年4月に創部され、部員は39人。1期生に24年度ドラフト6位で西武に入団した龍山暖捕手がいる。ゴルフ部もある。