◆競泳 日本選手権第2日(21日、東京アクアティクスセンター) 男子50メートル平泳ぎで“超異例”の初代表スイマーが誕生した。柳沢駿成(スウィン高島平/アクアプロダクト)が27秒33で2位に入り、派遣基準を突破して世界選手権(7月、シンガポ…

◆競泳 日本選手権第2日(21日、東京アクアティクスセンター)

 男子50メートル平泳ぎで“超異例”の初代表スイマーが誕生した。柳沢駿成(スウィン高島平/アクアプロダクト)が27秒33で2位に入り、派遣基準を突破して世界選手権(7月、シンガポール)代表に内定。うれしさをのぞかせつつ「自分でもちょっと、ビックリしている部分がある」と吐露。それもそのはず、柳沢はアクアプロダクトの社員で、普段はフルタイムで働く27歳のサラリーマンだ。

 3歳から競泳を始め選手コースで泳いでいたが、ジュニアオリンピックや全国中学、インターハイの個人出場経験はなし。桐蔭横浜大進学後、インカレは4年間出場したという。平泳ぎは幼少から泳いでいたものの、大学時代はバタフライや自由形など「全部、中途半端にやっていました…」。自由形以外、50メートル種目がないインカレは、予選落ちが当たり前。一方で、50メートル平で才能開花の片鱗を見せたのも大学時代だった。

 3年時に先輩に誘われ、50メートル平泳ぎにチャレンジ。日本選手権の参加標準記録を突破した。桐蔭横浜大卒業後は競技を一度引退し、新卒で現在の会社に入社。約1年間のブランクを経て趣味の中で水泳や筋トレに励んでいたが、復帰約1年で自己ベストを更新したという。趣味の範ちゅうながら本気で競泳に取り組み始めたのが「3、4年前くらいです」と柳沢。当時の記録は28秒4。そこからうなぎ登りに競技力を上げた。

 平日は午前9時~午後7時までが原則勤務。営業の外回りなどをこなす。仕事後、1人でジムや市民プールに通い、10時頃帰宅する生活。残業などもあるため、練習スケジュールは不規則だ。拠点のプールやコーチも当然おらず、残業が長引けば「(プールが)閉まっちゃう」と笑う。マスターズ大会に出場し、年齢区分別の日本記録や世界記録更新をモチベーションにトレーニング。約4年間この生活を続け、ついに昨年11月に27秒31で泳ぎ、世界水泳の派遣記録(27秒33)を突破。「あわよくば代表になれればと思って、気持ちは強く持って練習した」と、今大会の大一番でチャンスをつかんだ。

 初めての代表が世界水泳と「本当にびっくりしています」と柳沢。サラリーマンならではの不安も吐露した。「ちょっと今それが深刻で、これから相談しようと…」と語るのは、今後の代表活動への参加について。日本代表は世界選手権に向けて強化合宿などを行うが、平日をまたいだり辞退が難しいものもある。会社との相談が必要と言い「伝えれば何とかなるかなと思っているのですが…。どうやってそこを乗り切るか、検討しなきゃと思っています」とうれしい悲鳴を上げた。 「クイックターン禁止のプールで練習している自分が、どこまで練習できるのか」と代表合宿についていけるかなど、募る不安もある。ただ「楽しんで出来ているのが一番かなと思っていて。自分の時間で自分の好きなように練習して、それがうまくはまったのかな」。スポーツの極意を体現し、無限の可能性を示した。