◆26年北中米W杯アジア最終予選▽第7戦 日本2―0バーレーン(20日、埼玉スタジアム) 日本代表はバーレーン代表に2―0と勝利し、3試合を残して日本史上最速で8大会連続のW杯出場を決めた。最終予選では7試合中6試合で先発し、3得点も挙げて…
◆26年北中米W杯アジア最終予選▽第7戦 日本2―0バーレーン(20日、埼玉スタジアム)
日本代表はバーレーン代表に2―0と勝利し、3試合を残して日本史上最速で8大会連続のW杯出場を決めた。最終予選では7試合中6試合で先発し、3得点も挙げてチームの中核を担ってきたMF守田英正(29)が、スポーツ報知の独占手記で思いを明かした。無敗で最終予選を突破した現在のチームへの手応え、W杯優勝という目標を掲げる理由、そして前回22年カタールW杯での後悔などを語り尽くした。(取材・構成 金川誉)
*********
僕たちは自分たちがアジアのサッカーを引っ張り、担っていくという自覚やプライドを持って、戦ってきました。ただ誤解はしてほしくない。前回のアジア最終予選は出だしでつまずき、24年アジア杯も悔しい思い(ベスト8敗退)をした中で、結果によって受け止められ方は変わることは理解しています。でも今は、アジアで勝つのは普通でしょ、というメンタリティーのもとに行動、試合ができているのは、以前より感じています。
この最終予選では、主に3バックで戦ってきました。森保監督の下では、主に4バックをメインでやってきた中で、3バックもかなり板についてきた。予選を通して自分たちができることを増やす、オプションを増やす、内容と結果を求めて戦えたことは、すごく前向き。それこそがW杯に向けての準備。当然、アジア予選は結果が全てです。ただ、予選を勝ち抜くために、自分たちが見えている課題を先送りにしても、目の前の勝利だけに向かってきた、というのが以前の形でした。今はそこが違う。課題を向き合いながら勝利できてきた、という部分があります。
今の日本代表には、本当にすばらしいメンバーがそろっています。それでも、どの選手にも監督にも、長所や短所はある。それをお互いが理解して、チームとして結果を出すことが必要。森保監督は、すごく柔軟に選手に意見を聞いてくれるし、僕らもアジア杯後には特に会話が増えました。当然、様々な選手からの意見に対し、森保監督がこっちの方がいい、と言うこともある。選手、スタッフという立場を取っ払って、よりいいチームにするために、意見交換はできている。それは森保監督だからこそできる部分だし、他の監督だったら、できない可能性もある。だから僕たちは、森保監督のやり方で結果を出して、それが正しいと証明することに集中するべき、と思っています。足りないもの、解決できないものに引っ張られることなく、今自分たちが持っているカードで、強みを出すことが大事なのかなと。今やっていることは間違ってないと思っていますし、すごいチームになっていっていると思っています。
これも誤解を招かないようにはしたいのですが、W杯優勝という目標を掲げる中で、自分たちの基準を上げていかないといけない。必要以上に謙虚になる必要もない。僕たち日本人の文化の背景は、謙虚さがありますけど、そういうのは取っ払わないといけない、という意識はあります。僕たちはW杯でベスト8にいったことがない。だからそこを目指してがんばりましょう、というところから、もうそこは当たり前に行かないとだめだよ、と気持ち的な部分を変える。いい意味でもっと自信をプレーに出すべきで、おれがおれがという、我を持ってプレーしないといけない。僕たち日本人は、ヨーロッパや南米の選手たちと比べると、相対的に持つ(チームのための)犠牲心などは、もう圧倒的に強みです。それができない選手は、日本代表に絶対入れない。だからあとは、おれが勝たせるって、おれが得点を取ってチームを楽にする、ということが必要で。そういったパワーや気持ちは、すごく伝染する。圧倒的な勝者のメンタリティーというか。例えば劣勢でも、1回のプレー、DFの選手が不利な状況で、1対1でバチっとボールを奪う。それは、単純に1プレーじゃない。チームへの影響がすごく大きくて、そういう積み重ねで勝っていくんです。
僕個人の話で言えば、心構え、メンタリティーは変わりました。今までは、僕は目立たなくていい、ただ僕がプレーして、それで勝っていれば、僕がいる意味がそこにある、と。僕は別にいいプレーをしなくても、チームが勝てばいい、というのがまず前提でした。今までずっとそれできて、(カタール)W杯もそういう気持ちだった。でも、そうじゃいけないんだと、最近わかったんです。
そのきっかけは正直、僕の中で何もわからない。例えばプレー面では、僕は完璧主義者。90パーセント以上いいプレーをしたと思っても、後の10パーセントをおろそかにしていたら、今日もダメだったなって思うような性格。でも、サッカーってミスが起こるスポーツ。僕のポジションでは、そんなにリスクを冒せないし、変なミスはできないですけど、それでもミスは起こる。それを違うプレーで、カバーしていく、それがサッカーだよ、とうまく変換でき始めた。そうすると、今まで以上に積極的に、いい意味で自分がチーム勝たせる、自分のプレーを見せる、数字に絡んでいく感覚が出てきた。それがこの今回と、前回の最終予選では大きく違います。
もっとチームを引っ張る、おれが中心で勝たせる、みたいな気持ちや意欲。それは以前にはなかった。W杯でベスト8以上に行きたい、だけど別におれがうまくプレーできなくても、勝ちさえすればいい。そう思っていた感覚は、逃げだった。自分にはあまり得点能力はない、数字を出せないから、安定したプレーで貢献しよう。チームにはそういう選手が必要、という発想。もちろんポジション的な役割で、そうならざるを得なかった部分もあります。でも、それは結果的に逃げていたな、と。もっと自分で自分に課さないといけない、あれもこれも本来はやりたいんじゃないのか、できるんじゃないのか、と考えた。そうすると、今までやってきたことは、本当の意味で貢献できていたのか、というと僕はそう思っていないんです。
だから、今は以前よりトライする回数は増えています。そのトライが変なミスに繋がる、という意味じゃなくて、見えてるもの、やろうとしてるもの、その選択肢は以前よりある意味持つようにしている、というか。今までは安定感を売りにやってきた分、ミスが出ないように選択肢も多くない中でプレーしていた。今はポジションや配置によっては、もしこのパス1本が通ったら、というリスクをおかすプレーも選択肢に入れながらやれている。そういう変化があります。それは最終予選で数字がついてきていることにも、関係しています。減点方式を加点方式に変えて、ミスの捉え方も変わってきた。だから、今が正直1番サッカー楽しいですね。
今思えば、(22年カタール)W杯は何もできなかった、と思います。個人的には、どこかでビビっていた、間違いなく。おれがうまくいかなくてもチームが勝てればいいっていう、いい意味で犠牲心を持って、チームのためにと思っていた部分もありますけど、それと同時に、どこかで本当の意味でおれの力で相手を全員倒せる、という自信を持ってプレーできていたかって言うと、今ほど自信がなかった。今と比較したら、単純に体も、経験値も、メンタリティーも備わっていなかった。おれがベスト8に連れていく、チームを勝たせる、という気持ちで入れなかった。チームが勝てさえすればいいという考え、それが逃げだった。でもアジア杯に負けたことが、自分を見つめ直すきっかけになった。アジア杯の時は、W杯に比べればおれが引っ張る、という気持ちにはなっていました。でも足りなかった。今は、自分が出なければチームは勝てないんだ、自分がチームを勝たせるんだ、という気持ちが芽生えてきて、戦えています。
W杯ではあくまで優勝目指すべきだし、選手たちもいけたらいいんじゃない? みたいな、意味で言っているわけじゃなく、本気で全員が行けるものだと思って取り組んでいると思います。僕自身もまだまだ経験とかレベルを上げていかないといけないと思うと同時に、今のレベルでも欧州、南米と対峙しても全くびびらないし、(スポルティングでは)当たり前にやっています。日本人的な1歩1歩、という考え方は、もうわかっている。決してなめているわけではないんです。ベスト8を目標にすれば、そこを達成したときに満足してしまう。大きな目標に向かい、真面目に、実直に取り組んでいくことが、僕たち日本人のあり方に適している、と思っています。
◆守田 英正(もりた・ひでまさ)1995年5月10日、大阪・高槻市生まれ。29歳。金光大阪高から流通経大に進学。18年に川崎加入。21年1月にポルトガル1部サンタクララに移籍し、22年7月からスポルティング所属。日本代表は18年9月に代表デビュー。右利き。177センチ、74キロ。