第97回選抜高校野球大会で山梨学院の主軸を担う梅村団主将(3年)は4人兄弟の三男で、全員が野球に打ち込んできた。長兄が届かなかった甲子園出場を次兄がかなえ、次兄が果たせなかった甲子園1勝を昨春、梅村主将が実現した。兄から託されたバト…

打撃練習をする山梨学院の梅村団主将=甲府市砂田町の同校砂田球場で2025年2月28日午後1時7分、野田樹撮影

 第97回選抜高校野球大会で山梨学院の主軸を担う梅村団主将(3年)は4人兄弟の三男で、全員が野球に打ち込んできた。長兄が届かなかった甲子園出場を次兄がかなえ、次兄が果たせなかった甲子園1勝を昨春、梅村主将が実現した。兄から託されたバトンをつなぐように成績を積み上げてきた。2年連続のセンバツ。今度は自分から弟へ、伝えたいメッセージがある。

 赤、青、紺、水色。当時所属していたチームのユニホームを着た4人がピースサインをしながら笑顔で納まっている。梅村主将が中学時代に岐阜県の自宅前で撮った兄弟写真だ。

 父直弘さん(50)も中学で野球部だった。野球一家に映るが、直弘さんは「そこまで好きになれなかった。子どもには好きなスポーツをやってほしいと思っていた」と振り返る。

 だが、長兄の元(げん)さん(24)が幼なじみに誘われて少年野球を始め、家族の生活が野球中心になった。

 下の3人も兄を見て同じ道に進んだ。元さんは秀岳館(熊本)、次兄の豪(ごう)さん(21)は県岐阜商にそれぞれ進学し、ともに鍛治舎巧監督(当時)の指導を受けた。鍛治舎さんは秀岳館を3季連続で甲子園4強に導くなど指導者として全国的に知られる。

 元さんは3年の夏に控え一塁手で熊本大会に出場。3回戦で本塁打を放ったがチームは敗れた。豪さんは打力を買われ、2021年の春と夏、一塁手で甲子園に連続出場。どちらも1回戦でサヨナラ負けし、勝利には届かなかった。

昨春は兄超えの8強入り

 豪さんは午後10時ごろに練習を終え、自宅の庭で日付が変わる頃までバットを振っていた。中学時代の梅村主将にとって4歳年上の兄は「かなわないな」と思う存在で、身近な目標になった。

 梅村主将は、山梨学院の緻密な野球や充実した練習施設にひかれて地元を離れた。寮生活で消灯前のわずかな時間に、感覚を忘れないようにバットを振るのが日課になった。「人よりも練習しないといけないから」と話すが、脳裏には深夜まで練習に打ち込む兄の姿が焼き付いていた。

 昨年のセンバツで初めて甲子園の土を踏み、豪さんと同じ一塁を守った。試合前には「打球が観客に重なって見えにくい時がある」と具体的に助言してくれた。

 打者としては4番に座り、1、2回戦は安打を放って得点にも絡んだ。8強入りに貢献したが、健大高崎(群馬)との準々決勝は4打数無安打に終わって敗れた。4番の仕事ができず、兄に追いついた気持ちよりも悔しさが勝った。

弟も有望株

 「先輩に連れてきてもらった甲子園だったので、もう一度ここに戻りたい」。昨夏は出場を逃し、新チームの主将に指名された。冬に指導方針が変わって選手の主体性を重視した練習が増えると、声をからしてチームを引っ張った。

 直弘さんは「子どもたちには『兄を抜いていけ』と言っている」と話す。春に中学3年になる弟全(ぜん)さん(14)も、小学6年のときに中日ドラゴンズジュニアに選ばれた有望株だ。昨年を上回る8強超えとともに梅村主将にはもう一つ目標ができた。「兄の背中を見てこうなりたいと思った。弟にとって憧れの存在でありたい」

 山梨学院は大会第3日の20日、第2試合で天理(奈良)との初戦に臨む。【野田樹】