◆大相撲 ▽春場所10日目(18日、エディオンアリーナ大阪) 東前頭4枚目・高安が、大関・大の里との1敗対決を寄り切りで制し、単独トップに立った。終盤戦を前に、1横綱2大関を破った35歳の元大関が悲願の初賜杯へ一歩前進した。平幕の尊富士、美…
◆大相撲 ▽春場所10日目(18日、エディオンアリーナ大阪)
東前頭4枚目・高安が、大関・大の里との1敗対決を寄り切りで制し、単独トップに立った。終盤戦を前に、1横綱2大関を破った35歳の元大関が悲願の初賜杯へ一歩前進した。平幕の尊富士、美ノ海はともに8勝目を挙げて勝ち越しを決め、大の里と3人が2敗で追う展開となった。9日目に4敗目を喫した横綱・豊昇龍は10日目に休場。新横綱の休場は1986年秋場所の双羽黒以来、39年ぶりの事態となった。
高安が大一番を気迫で制した。立ち合いで頭からぶつかり、大の里の圧力に押されてやや後退したが、懸命に耐えた。一瞬の隙を逃さず左のまわしを取ると、一気に前に出て寄り切った。「上体が起きてしまうと、持っていかれてしまう。辛抱できて、勝負どころでしっかり決められて良かった」。1横綱2大関を撃破し、1敗で単独トップに立った。心地良い大歓声に包まれ「しびれますね」と表情を緩めた。
大の里は師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)が旧鳴戸部屋時代からの兄弟子にあたり、入門以来、何度も稽古で胸を出してきた間柄だ。昨年夏場所以来2度目の顔合わせは「番付も抜かれている。胸を借りるつもりで」と挑んだ。大関と賜杯を争う状況でぶつかり合い、「こういう場でやれることは本当に光栄。思い出に残る一番になった」と感慨も込めた。
今場所の好調の要因には体調面を挙げる。「体の調子がいい。足腰がしっかり働いて、前に出られているし、連日いい相撲が取れている」。これまで何度も優勝争いを演じながら、腰痛などで失速し、あと一歩で逃してきた。取組前の支度部屋では入念に時間をかけて体をほぐす。腰の状態に応じて、アップやケアの量も変える。「日頃の積み重ね。すぐにやってできるわけじゃない」。もみあげには白髪がまじる。地道に培ってきた経験値が35歳の体を支えている。
20年に演歌歌手・杜このみ(35)と結婚した。先月のNHK福祉大相撲でデュエットも披露した妻や4歳の長女、2歳の長男と場所中に連絡を取り「気分転換している」と明かす。家族の存在も力に、悲願の初Vへと突き進む。(林 直史)