元阪神の片山雄哉さん(30)が今年2月からソニー生命保険株式会社で「保険マン」として働いている。昨季限りで戦力外通告を受け、2月2日にSNSで現役引退を報告。これまで野球漬けだった日々から、ライフプランナーとして新たな一歩を踏み出した。応…
元阪神の片山雄哉さん(30)が今年2月からソニー生命保険株式会社で「保険マン」として働いている。昨季限りで戦力外通告を受け、2月2日にSNSで現役引退を報告。これまで野球漬けだった日々から、ライフプランナーとして新たな一歩を踏み出した。応援してくれた人たちへ恩返しを-。挑戦心を忘れない、第二の人生を歩む姿を迫った。
2018年度の育成ドラフト1位で入団し、阪神タイガースの一員として送った6年間。片山さんは中学生から始めた18年間の野球人生から一度離れる決意をした。
昨年10月に戦力外通告。他球団やNPB以外からいくつか声がかかっていたが、常に先々の人生を考えてきたからこそ、悩んだ中でも短期間で決断できた。「今よりもこれからを大事にしたい。野球だけじゃなくてもやっていける自分が想像できた」。プロ野球選手という職業は長くは続けられない。それよりも未来の自分への賭けとして、「野球に未練はない」と全く別の業界を選ぶ覚悟をした。
何より「野球ばかりやっていたら野球でしか恩返しできない」というのも大きな理由の一つだ。「自分がいろんな知識や経験を積むことで大事な人の支えになれる。人生の幅が広がる。今後はみなさんの背中を押せるように」。人としての深みを出すことで、今度は自身が後押しする側に立つ姿を思い浮かべる。
現役引退について、家族からの反対がなかったわけではない。妻からは「野球を続けてほしい。ものがわかるようになってきた子供に野球をしている姿を見せたい」と切望された。それでも片山さん自身、子供に野球だけではなく、生きていくすべを自ら教えてあげたい思いが勝った。話し合いの末、一般企業への就職を決めた。
数ある職種の中から保険会社を選択。理由は人との「縁」だった。現役時代にお世話になった知人から紹介されたのが現在の上司だった。「話し方からその人の生きざまを感じた。こんな人になりたい」。1歳年上の“理想の人”との出会いが決め手となった。
これまでパソコンや資料とは無縁。現在は資格などの勉強に加えて、パソコンの使い方など通常のサラリーマンの倍の業務をこなす。8時に出勤してから20時を過ぎることも度々。「今までのつけが回ってきている」と苦笑いしながらも「覚悟を決めて世の中に出てきたからギャップはなかった」と懸命に食らいついている。
空手や茶道などたくさんの習い事をしてきた中で、野球は「一番難しかった」という反骨心からのめり込んだ。そんな性格だからこそ、新しいことに対して果敢に挑戦できる。そしてこれまで応援してくれた人への感謝も原動力となっている。
ライフプランナーとして「一緒に最初の一歩を踏み出せる人間になりたい」と片山さん。将来的にはこれまでと違った形で野球に携わることを望む。「いつかまた野球のおもしろさや楽しさを伝えたい」。人として一回りも二回りも大きくなって、恩返ししていく。(デイリースポーツ阪神担当・和泉玲香)
◆片山 雄哉(かたやま・ゆうや)1994年6月18日生まれ、30歳。愛知県出身。現役時代は右投げ左打ちの捕手。刈谷工から至学館短期大、BC福井を経て18年度育成ドラフト1位で阪神入団。19年7月に支配下契約。プロ初出場は22年5月25日・楽天戦。24年10月に戦力外通告を受け25年2月に現役引退を表明。NPB通算2試合で安打、打点なし。