駿河台大前監督の徳本一善氏(45)が箱根駅伝初出場を目指す芝浦工大の監督に就任することが17日、分かった。法大時代、箱根駅伝でスター選手として活躍した徳本氏は12年に駿河台大監督に就任。10年目の21年10月の箱根駅伝予選会を突破し、22…

 駿河台大前監督の徳本一善氏(45)が箱根駅伝初出場を目指す芝浦工大の監督に就任することが17日、分かった。法大時代、箱根駅伝でスター選手として活躍した徳本氏は12年に駿河台大監督に就任。10年目の21年10月の箱根駅伝予選会を突破し、22年1月の本戦に駿河台大を初出場に導いた。24年に2度目の出場を果たし、今年1月に退任が発表された。芝浦工大は徳本氏の新興校を強化する手腕を評価したという。徳本氏が芝浦工大を箱根駅伝出場に導いた場合、2校を初出場させた初の監督となる。

 徳本監督を支えるコーチとして、麗沢大前監督の山川達也氏(40)が就任する。それぞれ駿河台大と麗沢大を率いてきた二人は互いの指導方針、持ち味を認め合っており、絶好のコンビになることが期待される。徳本監督、山川コーチの就任は18日にも発表される。

 徳本氏は法大時代、箱根駅伝史上初めて茶髪とサングラスの姿で走った選手とされ、多くの「伝説」を残した。2年時は1区で区間賞。その年、2区でも坪田智夫(現法大監督)が区間賞を獲得。「オレンジエクスプレス旋風」を巻き起こした。3年時は2区で日本人トップの区間2位と好走し、首位浮上。その直後、日本テレビのインタビューでは頭の上から装着するウルトラマンのような奇抜なデザインのサングラスで登場し、新春の日本列島を驚かせた。4年時は暗転。2年連続で2区を走ったが、右ふくらはぎ肉離れのため、7・3キロ地点で途中棄権。大手町のスタートから28・6キロ地点での途中棄権は今も大会史上最短記録として残る。

 悪夢の2002年箱根駅伝から、ちょうど20年。徳本氏は、駿河台大の監督として箱根路に帰ってきた。教員の「自己啓発等休業」を活用して前年度に駿河台大心理学部3年に編入学した当時31歳の今井隆生(現埼玉・鶴ヶ島市立藤中教員)を4区に起用。力走及ばずに区間最下位でタスキを埼玉・越生中教師時代の教え子だった5区の永井竜二(当時3年)に託した今井に対し、徳本監督が運営管理車から「2年間、ありがとう! 謝ったらブッ飛ばすから!」と独特の表現でたたえたことは感動を呼んだ。10区の阪本大貴主将(当時4年)は満面の笑みで大手町にゴール。初出場の駿河台大は19位という結果以上のインパクトを残した。

 前回の第100回箱根駅伝には2年ぶりに出場し、18位。24年度は2年連続3回目の出場を目指したが、予選会で16位で敗退した。今年1月、13年間、率いた駿河台大の監督を退任することが発表された。

 一方の芝浦工大は、2011年に駅伝部を創設。駅伝プロジェクト入学者選抜試験を導入し、さいたま市の大宮キャンパスに全天候型のトラックや選手寮を完備。文武両道を貫き、大学創立100周年を迎える27年までに理工学系私大初の箱根駅伝出場を目指している。

 箱根駅伝予選会には12年に初挑戦し、40位。13年に31位に浮上。21年に25位、22年にチーム最高の20位となった。昨年10月の予選会では23位だった。予選会で敗退したチームの選手で編成される関東学生連合には18年に矢沢健太(当時4年)が、インフルエンザに感染した東大の近藤秀一(当時3年)に代わり、急きょ出場。芝浦工大初の箱根駅伝ランナーとなった。その後、21年に松川雅虎(当時2年)、23年に橋本章央(当時3年)が箱根路を駆けた。

 これまで芝浦工大は、コニカ(現コニカミノルタ)やトヨタ自動車の監督を務めた味沢善朗前監督、東農大を8度、箱根駅伝出場に導いた前田直樹監督らベテラン指導者がチームを率いていた。今年度限りで前田監督が退任。後任として、新興校の強化に確かな実績を持つ徳本氏に白羽の矢が立った。関係者によると、1月まで指導していた駿河台大、4月から指導する芝浦工大の両校の選手や関係者に丁寧に説明し、芝浦工大監督就任へ環境が整ったという。

 芝浦工大の公式ホームページによると、26年4月にスポーツ工学コースが新設される構想があり、有力な高校生ランナーの勧誘にプラスに働くことになりそうだ。

 これまで101回の長い歴史を誇る箱根駅伝で2校を初出場に導いた監督はいない。徳本氏が、駿河台大に続いて芝浦工大を初出場に導いた場合、初の快挙となる。芝浦工大は、徳本監督と山川コーチによる新体制で、新春の箱根路を目指して果敢に挑戦を始める。

 ◇芝浦工大 1927年に有元史郎氏が東京・大森に前身の東京高等工商学校を創立。実学重視の技術者育成教育を継承して、49年に芝浦工大が設置された。現在、工学部、システム理工学部、デザイン工学部、建築学部と大学院理工学研究科がある。東京・江東区に豊洲キャンパス、さいたま市に大宮キャンパスがあり、駅伝部は大宮キャンパスを拠点としている。工学や建築の分野で多くの優れたOBを輩出。スポーツ界の主なOBはプロ野球・西武元監督の伊原春樹氏ら。

 ◆徳本 一善(とくもと・かずよし)1979年6月22日、広島市生まれ。45歳。美鈴が丘中1年から陸上を始め、3年時に全国大会で1500メートル2位。広島市立沼田高3年時に全国高校総体1500メートル2位。98年に法大入学。箱根駅伝では1年1区10位、2年1区区間賞、3年2区2位、4年2区途中棄権。2002年に卒業し、日清食品に入社。03、04年に日本選手権5000メートル連覇。12年4月、駿河台大駅伝部監督に就任。22年に駿河台大を箱根駅伝初出場に導いた。25年1月に監督退任。長男・陽(ひなた)は青学大1年で箱根駅伝出場を目指している。