スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月1~8日/賞金総額571万9660ユーロ/クレーコート)の準々決勝で、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)が、ニック・キリオス(オーストラリア/…

 スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月1~8日/賞金総額571万9660ユーロ/クレーコート)の準々決勝で、第6シードの錦織圭(日清食品/6位)が、ニック・キリオス(オーストラリア/21位)を6-7(6) 7-6(1) 6-3のフルセットの激戦の末に下し、準決勝に駒を進めた。

 錦織は7日に行われる準決勝で、世界1位のノバック・ジョコビッチ(セルビア)と対戦する。

   ◇   ◇   ◇  ラリーでは錦織が格段に上だが、それでもキリオスが、サービスゲームだけはがっちりキープしていく。

 第1セット、ストローク戦では完全に錦織が支配しているにも関わらず、2-2、3-3、4-4…とスコアだけが競りつつ進んでいくのを目にし、腑に落ちないと感じた者もいただろう。しかし、これがキリオスのやり方だ。

 サービスをキープし、タイブレークで持ち前の度胸にものを言わせる。彼はそうやって、世界4位のスタン・ワウリンカ(スイス)を倒し、勝ち上がってきた。実際、昨年のこの大会でロジャー・フェデラー(スイス)を倒したときも、そうだった。6-7(2) 7-6(5) 7-6(12)という対フェデラー戦でのスコアは、サービスがいい日のキリオスの、真骨頂である。  「今日、彼のサービスは本当によく、第3セットまではサービスのコースを読めずに苦労した。第1セット、第2セットでもブレークポイントを握ったが、チャンスをつかみながらも、サービスで凌がれる場面も多く、なかなかブレークできなかった。あれらの重要なポイントでよりよいプレーができていたら、2セットで試合を終えられていたかもしれない」と錦織は、試合後に振り返った。

 実際、錦織は、第1セットの第4ゲームと第8ゲームでブレークポイントを握っていたが、そのつど、爆弾サービスで巻き返されていた。もつれ込んだタイブレークでは、一時5-3とリードしながら追いつかれ、6-6からはセカンドサービスを叩かれて、錦織のほうがストロークミスをすることに。最後はサービスエースを奪われ、錦織は、全体に見て優位に立っていたはずのこのセットを落とした。  第2セットでも、錦織は第1ゲームで15-40とブレークチャンスをつかむが、キリオスは崩れなかった。それどころか、序盤にはミスの多かったリターンやストロークにおいても、よりのびのびと打ち始め、キリオスが錦織のサービスゲームにプレッシャーをかけ始める。

 自分のサービスゲームだった2-3からの第6ゲーム、また3-4からの第8ゲームでもデュースに持ち込まれ、錦織にとって、苦しい時間帯が続いた。 「第1セットを落としたショックも結構あった。(第1セットで)チャンスは自分のほうにあったと思ったし、ブレークポイントを握ったときにそこをうまくつかめなかったから…。第2セットに入り、厳しい時間帯も結構あったが、集中力を保ち、特に自分のサービスゲームをまず落とさないよう努めた」と錦織は振り返る。  第1、2セットともに70%以上のファーストサービスが入っていたことも、錦織が踏ん張る助けとなった。 「今日はサービスがよかったので、サービスから、いい展開をつくることができた」と言った通り、自分のサービスゲームで何度かデュースに持ち込まれながらもブレークポイントは渡さず。そして2度目のタイブレークでは、最初からたたみ掛けた。  「厳しい2つのタイブレークだったが、第1セットのタイブレークと、第2セットのタイブレークの間には、大きな違いがあった」と錦織は言う。「第2セットのタイブレークでは、よりアグレッシブにプレーしようと努めた。初っ端から3-0とリードし、ずっといい形で始めることができたために、少し気持ちに余裕もできた。リードしているときは、よりアグレッシブになれるもの。また彼が強烈なファーストサービスを入れてきたときにさえ、ずっとよい形でリターンできていた」。  セットポイントでの錦織は、キリオスのファーストサービスをしっかりリターンしてラリーに持ち込み、最後は、この日冴えたバックハンドのダウン・ザ・ラインでエースを奪って、タイブレークを7-1で取った。そしてその勢いを、ファイナルセットにも持ち込んだ。  「サービスがいい相手なので、タイブレークにいくことも頭に入れながらプレーしていた。ストロークでは、おそらく半分以上は押していたと思う。いつも以上に思いきってプレーできていたと思うし、セカンドセットのタイブレークでは、すごく集中できていたので、そこからよりプレーの質が上がっていったと思う」と錦織は言う。  第3セットに入ると、「キリオスのサービスをよりよく読めるようになったことにより」リターンもよくなった。そして最終セット2-1からのキリオスのサービスゲームで、錦織はついに、この試合唯一のサービスブレークに成功する。15-40から、オンラインのバックハンドクロスがまずアウトとコールされ、オーバーコールでリプレーに。次のポイントを自らのミスで落とし、30-40となったが、錦織は残されたワンチャンスを逃さずものにした。錦織はキリオスのファーストサービスに飛びつき、鋭いバックハンドのクロスで返球。それに反応できなかったキリオスがフォアハンドをミスし、これではっきりと流れが変わった。  キリオスも簡単には崩れず、次の錦織のサービスゲームでプレッシャーをかけにきたが、40-40からの長いラリーの末に、先にミスをしたのは、キリオスのほうだった。キリオスの強さは、その無頓着さからくる度胸でもあるが、その姿勢は両刃の剱だ。ミスしては喚きながらもキリオスは食い下がったが、第3セットの錦織は、ピンチでも慌てなかった。  4-2からのサービスゲームでは、15-40とブレークポイントを握られた錦織だが、そこから粘って挽回。キリオスがボレーを決め、ふたたびアドバンテージを握ったあとにも揺るがず、バックハンドのダウン・ザ・ラインを打ち込んで追いつくと、続く2ポイントもしっかりと締めた。キリオスは次のサービスゲームを楽にキープしたが、錦織は5-3からの自分のサービスゲームで決着をつける。最後のショットは、この日何度も見せたバックハンドのダウン・ザ・ラインのウィナーだった。

ニック・キリオス    ◇   ◇   ◇

 第3セットは6-3とはいえ、わずかワンブレーク。最初から最後まで競り合った激戦を制した錦織は、試合後「素晴らしい試合だったと思う。僕らの双方が、非常に高いレベルでプレーした。本当に厳しい接戦だったが、今日勝つことができてうれしい」と満足感を覗かせた。  世界5位以内を目指す上で、錦織がクリアしなければならないタスクは複数ある。まずは、トップ5以内の選手を倒すよう努めること。下位選手に対し、取りこぼしをしないこと。そして、下から突き上げてくる、新しい挑戦者を退けること。この日、錦織は3番目のタスクを、実に厳しい戦いを通して全うして見せた。そして、7日に行われる準決勝では、ジョコビッチという1番目のタスクがやってくる。  ジョコビッチは一筋縄ではいかない相手だが、錦織は「相手がノバクだろうと、ほかの誰かだろうと、勝つためにベストを尽くす。でもノバクのような偉大な選手との対戦は、僕にとって常に素晴らしいチャレンジだ」と意欲を見せる。  「ジョコビッチはミスが少なく、しっかりとディフェンスしながらも攻めてくる、どのサーフェスでも強い選手。コーチのマイケル(チャン)、ダンテと話し、しっかりと戦略を練らなければならない。ただ今週は、自分のプレー自体もすごくいいので、作戦を考えた上で自分らしいプレーもしながら、マイアミのときのように簡単にやられないよう、頑張りたい」  過去のふたりの対戦成績は錦織の2勝7敗。10度目の挑戦は、7日、現地時間20時00分以降、センターコートで実現する。 (テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)