2025年の注目選手 ヤクルト・橋本星哉(前編) 今季のヤクルトはレギュラー選手を刺激する若手の台頭が待たれ、橋本星哉はその期待が大きい選手のひとりだ。昨年は二軍で103試合に出場し、打率.260、7本塁打、42打点、8盗塁の成績を残した。…

2025年の注目選手 ヤクルト・橋本星哉(前編)

 今季のヤクルトはレギュラー選手を刺激する若手の台頭が待たれ、橋本星哉はその期待が大きい選手のひとりだ。昨年は二軍で103試合に出場し、打率.260、7本塁打、42打点、8盗塁の成績を残した。

「自分の持ち味であるセンターから逆方向に強い打球を打てることに加えて、走塁でも『コイツよくなったな』と思われるように、アピールしていきたいです」

 ギリシャ神話の英雄「ヘラクレス」のような肉体美を誇る3年目捕手は、2025年シーズンに大いなる飛躍を誓うのだった。


プロ3年目の今季、一軍定着を狙うヤクルト・橋本星哉

 photo by Sankei Visual

【プロの壁にぶち当たった1年目】

 橋本は2022年のドラフトで、育成1位で中央学院大からヤクルトに入団。新人合同自主トレでは、タイム走などの計測メニューはすべてトップ。身体能力の高さが強く印象に残ったが、1年目は捕手としての課題が浮き彫りとなった。

 衣川篤史二軍バッテリーコーチは当時を次のように振り返った。

「先発マスクを被った試合は、まったく勝てなかったですからね。盗塁阻止率も1割ちょっとでしたし、キャッチャーとしての経験や専門的な引き出しが少なすぎました」

 プロの壁に苦しむなか、衣川コーチとスローイングの修正、試合後にはリードや配球を反省し、勉強を積み重ねた。

「1年目は毎日いろいろな発見があり、日々上達していく自分を実感できた楽しい時間でした」

 シーズン後に参加した宮崎でのフェニックスリーグでは、盗塁阻止率は5割を超え、その成長ぶりに驚かされた。

 2年目となった昨シーズンは、一軍の春季キャンプに招集。古田敦也臨時コーチとマンツーマンで練習。正捕手の中村悠平とふたりきりで宿舎に帰る日もあった。

「このキャンプでも毎日新しい発見があり、引き出しが増えました。あの期間がなかったら、今の自分はないと思えるほど濃い時間でした。一番印象に残ったのは、古田さんにスローイング時の足の使い方を教えていただいたのですが、少し変えただけで上体に力を入れなくても勝手にボールが入った。『こういう考え方もあるんだ』と、新しい感覚でした」

【フレッシュオールスターでMVP】

 シーズンが開幕すると5月24日に支配下登録され、背番号は「023」から「93」になった。

「この時はうれしい気持ちよりも、一軍に呼ばれる立場になれたので、ここからだと気持ちが引き締まりました。支配下になって最初の試合はファームだったんですけど、すごく緊張しました。周りの人の目も変わりましたし、いつもと違う雰囲気をすごく感じました」

 7月20日、地元・姫路で開催されたフレッシュオールスターでは、3打数2安打4打点の活躍でMVPを獲得。同25日には一軍の試合前練習に呼ばれ、フリー打撃では髙津臣吾監督の前でバックスクリーンに叩き込み、練習後は「疲れたけど、明日からまた頑張ろう!」と笑顔で戸田に戻っていった。

 橋本は一軍の練習を経験したことで、「二軍に慣れてしまっている自分がいたことに気づきました」と振り返った。

「いま思えば、自分のなかで二軍にいることが当たり前になっていたというか、一軍に行きたいという意欲がそんなになかったのかなと。そういう意味でも、『絶対に一軍でやりたい』『満員の神宮球場のなかで野球をやりたい』という気持ちになれたので、本当にいい時間でした。練習自体はしんどいものではなかったのですが、なぜか肉体的にも精神的にもシーズンで一番疲れました(笑)」

つづく>>