日本の野球殿堂博物館は16日、今年の殿堂入りメンバーを発表し、日米通算4367安打のイチロー氏(51=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が選ばれた。有効投票349票中323票を獲得で、投票率は史上6位の92・6%。史上初の満票…
日本の野球殿堂博物館は16日、今年の殿堂入りメンバーを発表し、日米通算4367安打のイチロー氏(51=マリナーズ球団会長付特別補佐兼インストラクター)が選ばれた。有効投票349票中323票を獲得で、投票率は史上6位の92・6%。史上初の満票は逃したが、資格1年目での殿堂入りは18年松井秀喜氏、金本知憲氏以来、7年ぶり7人目となった。
イチロー氏は上下濃紺のスーツで通知式に出席。受賞のスピーチを行った。
【スピーチ全文】
皆さんこんにちは、イチローです。このたびは野球殿堂に選出いただきありがとうございます。
私は1991年にオリックスブルーウェーブからドラフト4位で指名していただき、日本で9年、アメリカで19年、選手としてプロ野球選手生活を過ごしました。にも関わらずですね、日本の野球殿堂へ迎え入れていただいたこと、大変感謝しております。2019年の3月に東京ドームで引退の試合を終えてからですね、5年間あっという間でした。ファンの方々が作ってくれたあの瞬間を支えに、引退後も野球に携わって、ここまで(過ごしてきました)。 野球に対して、プレーに対して未練があったりとか、そういう後ろ向きな気持ちはなく、ここまで過ごすことができました。この大好きな野球を長く続けてこられた中で、今日お越しの王監督、原監督。王監督とはWBCで一緒に同じユニホームも来て初めて戦ったわけですし、原監督とは…あまりいい話はないですね(会場爆笑)。でも、こうして今日は再会できたこと、本当喜んでます。掛布さんとも大変ご無沙汰で、ここではとても言えない都市伝説についてお話を伺えてとってもよかったです。
森(繁和)さんとはですね、僕、今ピッチャーをやってることもあって、先ほど(指の)マメの話をお伺いして、とても興味深いお話を伺いました。岩瀬選手とは、同郷の名古屋、愛知県出身でね。トレーニングとか同じジムにも通っていたりして、共通点もたくさんあって、こうしてまた再会できてとてもよかったです。
今は、未来を担う子供たち、主に高校生なんですけども、彼らとの出会いを通じて、それが僕の大いなる目標となっていて、モチベーションにもなっているという状況です。さまざまな要因から今の野球が変わっていっていってるわけですけれども、そういう意味で、やっぱり子供たちが向き合う野球は純粋なものであってほしいと願っています。時代が変わっていくこともあります。でも、やっぱり変えてはいけないものというものもあると思うんですね。そこを僕は強く意識してこれから子供たちと接していきたいと思ってます。
最後になりますが、明日で阪神・淡路大震災から30年がたちます。当時、僕は21歳ですね、オリックスの寮で、あの時は眠ってたんですけれども、初めて命の危機というか、『自分はこれで死んじゃうのかもしれない』と。寮があったエリアはそんなに大きな被害はなかったわけですけども、それでも初めて命について考えさせられた時間でした。こういうことはなかなか経験してない人たちに伝えていくという大変難しいことなわけですけれど。一被災者として経験した思いというのを、経験しなかった子供たちに伝えていけたらなという風に思っています。
そして、神戸は僕にとって今も特別な場所です。オフにはたまに神戸にいることもあるんですけれども、これからも自分なりに進んでいく姿が、誰かのきっかけになったり支えになって、そんな風になれたらいいなという風に思っています。これからも自分が動けなくなるまで野球に携わって、なんとかですね、日本野球の力になりたいと考えてます。本日はありがとうございました。
◆イチロー(本名・鈴木一朗=すずき・いちろう)1973年(昭48)10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高では甲子園に2度出場。91年ドラフト4位でオリックス入団。94年にプロ野球史上初めてシーズン200安打に到達。00年まで7年連続首位打者。00年オフにポスティング制度でマリナーズ移籍。新人で首位打者、盗塁王とMVPに輝いた。04年に大リーグ新記録の262安打を放ち、2度目の首位打者。大リーグでは01~10年に史上初の10年連続200安打。ゴールドグラブ賞、球宴出場各10度。07年オールスターでは史上初のランニング本塁打を放ちMVP。12年7月にトレードでヤンキース移籍。15年にマーリンズ移籍。18年にはマリナーズに復帰し、シーズン途中でフロントに転身。19年3月に選手復帰し、東京ドームでのアスレチックス戦2試合に出て引退。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターに就任した。現役時代は180センチ、79キロ。右投げ左打ち。