野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りのメンバーを発表。競技者表彰のプレーヤー表彰として、オリックスで一時代を築き、MLBマリナーズでも歴史的な活躍を見せたイチロー氏を選出した。 イチロー氏は1991年度ドラフト4位でオリ…
野球殿堂博物館の表彰委員会は16日、今年の野球殿堂入りのメンバーを発表。競技者表彰のプレーヤー表彰として、オリックスで一時代を築き、MLBマリナーズでも歴史的な活躍を見せたイチロー氏を選出した。
イチロー氏は1991年度ドラフト4位でオリックスに入団。仰木監督のもと、登録名が「イチロー」となった94年、レギュラーに定着するとNPB史上初めてシーズン200安打の偉業を達成。独特の振り子打法は野球少年少女もマネするなど、爆発的なブームとなった。
スピーチでは「みなさんこんにちは、イチローです」と切り出し、「日本で9年、アメリカで19年、選手として野球選手生活を過ごしました。にも関わらず、日本の野球殿堂に迎えてもらえたことを大変感謝しています」と頭を下げた。
2019年3月、東京ドームで引退試合した後の生活についても触れ、「ファンの方々が作ってくれた瞬間を支えに引退後も野球に携わり、ここまで、野球に対して、プロ野球に対して未練があったり、そういう後ろ向きな気持ちなく過ごして来られました」と穏やかな笑みを浮かべた。
引退後は日本で学生野球資格を回復。高校野球の指導、女子野球選手とのエキシビションマッチなど、日本球界への貢献度は計り知れない。
イチロー氏は「今は未来を担う子供達、主に高校生との出会いを通じて、それが大いなる目標となっていて、モチベーションになっている状況です」という一方で、データや環境面で変貌を遂げていく現代野球について警鐘。「さまざまな要因から野球が変わっていっている。せめて子供達が向き合う野球は純粋なものであってほしいと願っています。時代で変わっていくものはありますが、変えてはいけないものもあると思うんです。そこを強く意識して、子供達と接していきたい」とうなずいた。
一問一答は以下。
-日本と米国で当時の常識を覆し、野球史に輝く活躍や記録を残すことができた原動力をご自身ではどうお考えですか?
「多くの人が常識だと思っていることを疑い、大事な決断は自らしてきました。第三者の意見ではなく、感性に基づき行動してきたことは大きな要因の一つだと思います」
-日米でさまざまな記録を打ち立てられました。最も印象に残っている場面やプレーを挙げていただけないでしょうか。
「2018年5月に選手としてはプレーできなくなり、そこから練習だけの日々を経て2019年に東京ドームで引退を迎えたことは、人生の大きな支えになると思います」
-野球界に蔓延しつつある、行き過ぎたデータ偏重に警告を発していらっしゃいます。野球のおもしろさを後世に引き継いでいくため、日本の野球界や野球人は何を大切にし、どう行動すれば良いとお考えでしょうか。
「長い時間をかけて築いてきたことには理由があります。一時的な利益のために大切なものを失ってほしくない。大胆な変化には良いこともありますが、気がついたときには手遅れということはよくあることなので、その判断は慎重すぎるくらいのスタンスで」
-日本の野球に足りないところ、アメリカ野球の方が優れている点があれば、設備などの環境面も含めてお教えください。
「規制の多い日本では、一定世代以下はキャッチボールすら特殊なスキルになってしまった。アメリカでは今も野球は近くにあり、世代を超えて継承されているように見えます」
-男女問わず、高校世代との繋がりを大事にされ、熱心に指導されています。突き動かしているエネルギーの源泉は何でしょうか。また、高校生と接する際に大事にされていることをお教えください。
「さまざまな場面で、『必要なことすら伝えられない』と嘆く先生や指導者たちの声を聞きます。野球を通じて、社会に出てからのきっかけになってくれればという思い。ナメた子供は叱る」
-ご自身の今後について、取り組んでみたいことなどがあればお教えください。
「ナメた大人もしかる」