2026年のワールドカップ出場に、王手をかけているサッカー日本代表。2025年最初の試合となるバーレーン代表との一戦に勝利すれば、本大会出場が決まる。だが、日々変わりゆくサッカーの世界で油断は禁物だ。サッカージャーナリスト大住良之が、その…
2026年のワールドカップ出場に、王手をかけているサッカー日本代表。2025年最初の試合となるバーレーン代表との一戦に勝利すれば、本大会出場が決まる。だが、日々変わりゆくサッカーの世界で油断は禁物だ。サッカージャーナリスト大住良之が、そのバーレーンを含むアジアのライバルたちの「現状」をリポートする!
■アジアカップでの「敗戦後」に就任
インドネシアが申台龍監督を解任したことで、ワールドカップ・アジア最終予選のC組では6チーム中3チームで予選進行中に監督が交代という異常事態になった。そのなかで、バーレーンは、昨年2月、アジアカップでの敗退後にテクニカルダイレクターから監督となったクロアチア人のドラガン・タライッチ監督が非常に安定したチームづくりを続けており、勝負強さが出てきた。
タライッチ監督はサラエボ出身のGKとして2001年にシンガポールのクラブで現役生活を終え、2003年から中東を中心としたアジアで指導者としての生活を送ってきた。中東では、サウジアラビア、バーレーン、ヨルダン、クウェート、UAE、オマーンの6か国でクラブチームの監督を務め、そのほか、タイと中国のクラブ監督も経験している。そして2022年にバーレーン協会のテクニカルダイレクターになり、日本とのラウンド16で敗れた2024年1月のアジアカップ後、辞任したフアン・アントニオ・ピッツィ監督(スペイン/アルゼンチン)の後を受けて監督に就任した。
2022年からのテクニカルダイレクター生活で代表選手たちを熟知しているだけでなく、長い中東生活でこの地域の人々のメンタリティーを完全に理解していることは、タライッチ監督にとって大きなアドバンテージだ。基本的にワールドカップ予選と同じ選手たちでガルフカップも戦い、チームの地盤をしっかり固めることに成功した。
■最も危険なのは「両サイドのウイング」
4-4-2システムの基本は、ワールドカップ予選でもガルフカップでも貫かれた。頑健なマハディ・アブドゥルジャバルとスピードのあるコマイル・アルアスワドで2トップを組むが、相手にとって最も危険なのは両サイドのウイング、右のアリ・マダンと左のモハメド・マルフーンの2人だ。2人ともスピードがあり、シュート力も兼ね備えている。
なかでも背番号8をつけるモハメド・マルフーンは日本の三笘薫のように左サイドからゴールライン沿いに進むドリブルに切れ味があり、危険極まりない存在に成長した。ガルフカップでは、大会MVPに選ばれている。
ボランチはワールドカップ予選ではアリ・ハラムとアッバス・アルアスフールが中心になっていたが、2人ともガルフカップには招集されず、代わってサエド・ディアとマハディ・アルフマイダンが活躍した。サエド・ディアは予選の日本戦後に代表に選ばれ、以後はレギュラーとなった。
マハディ・アルフマイダンは予選ではこれまでの全6試合に交代出場だったが、ガルフカップではイエメン戦を除く全試合にほぼフル出場して優勝に貢献した。サウジアラビア戦で1点を決めたことでもわかるように、積極的に相手ペナルティーエリアに入っていくプレーは、これまでのバーレーンにはなかったものだ。
■難しい勝負を制して「より強固になった」
守備ラインは予選からガルフカップにかけてほぼ不動と言っていい。右サイドバックはハマド・アルシャムサン、左はアブドゥラ・アルハラシ。センターバックは長身187センチのアミネ・ベナッディが中心となり、粘り強い守備をするワリード・アルハヤムとコンビを組む。
そしてGKはエブラヒム・ルトファラハ。バーレーンにはサエド・ジャファルという代表163試合、39歳のGKがおり、ガルフカップでは2試合に出場したが、ワールドカップ予選ではこのサエド・ジャファルをベンチに置いてエブラヒム・ルトファラハがゴールを守った。日本戦では5点を許したが、他は5試合で5失点。長身でやや太りすぎに見えるが、反応は速い。
ガルフカップ優勝は、バーレーンが新しいものを付け加えた結果ではなかった。予選の6試合で積み重ねてきた鋭い攻撃と粘り強い守備に磨きをかけ、ガルフカップで難しい勝負を制してきたことで自信を深め、チームがより強固になったと言えるのではないか。バーレーン選手たちの強みも弱みも知り尽くしたタライッチ監督のリードで、バーレーンは着実に強くなっている。