13日に東京・国立競技場で決勝があった第103回全国高校サッカー選手権大会で、7大会ぶり2回目の優勝を飾った前橋育英(群馬)。2年のDF竹ノ谷(たけのや)優駕(ゆうが)選手(17)は、群馬県大会中に父を亡くしていた。大会では「父への恩返し…
13日に東京・国立競技場で決勝があった第103回全国高校サッカー選手権大会で、7大会ぶり2回目の優勝を飾った前橋育英(群馬)。2年のDF竹ノ谷(たけのや)優駕(ゆうが)選手(17)は、群馬県大会中に父を亡くしていた。大会では「父への恩返しのため、勝利を届けたい」との思いを胸に、戦ってきた。その思いは全国制覇という形で果たされた。
優駕選手は、アルビレックス新潟U―18でプレーする双子の弟・颯優(そうゆう)さん(17)とともにネパール国籍の父スベディ・ティカラムさん(48)と母琴美さん(52)の間に埼玉県深谷市で生まれた。
医療関係の仕事をしていたスベディさんと、バックパック旅行をしていた琴美さんは、ベルギーで知り合った。琴美さんはもともと野球好きだったが、スベディさんに引っ張られる形でサッカーファンに。
優駕選手と颯優さんは3歳ごろ、スベディさんがボールを蹴らせて遊んでくれたのがきっかけでサッカーを始めた。優駕選手は、小学生のころにスベディさんが深夜0時になるまで練習に付き合ってくれた「闇練」が最も思い出に残っていると振り返る。
夫婦は毎週末のように息子たちの試合を見に行き、サッカーを生活の中心に据えて全力で応援してきた。そして、これからも、ともに活躍を見守るはずだった――。
だが、県大会期間中の昨年10月25日、スベディさんは仕事帰りに交通事故に遭い、帰らぬ人となった。
優駕選手は「応援してくれた父のためにもゴールを決めたい」と誓い、昨年11月4日にあった県大会準決勝の桐生第一戦でゴールを決め、直後に父に向けて空を仰ぎ、指を天に立てた。
全国大会でも全6試合にフル出場し、2回戦の愛工大名電戦でのPK戦、決勝の流通経大柏戦でのPK戦で、ともにしっかりとゴールを決め、勝利に貢献した。
全国の頂点に立ち、優駕選手は「国立で父もきっと見ていてくれたからと思う。父に優勝を報告して、来年もこの舞台に戻ってきて戦う姿を見せたいです」と語った。(中沢絢乃)