NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25ディビジョン1 第4節(リーグ戦) カンファレンスB2025年1月12日(日)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)東京サントリーサンゴリアス 2…

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン1 第4節(リーグ戦) カンファレンスB
2025年1月12日(日)14:05 秩父宮ラグビー場 (東京都)
東京サントリーサンゴリアス 26–26 クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

「前を向いてやっていくしかない」。100キャップを達成した歴戦の男が伝えるチームへの喝


チームは2試合連続の引き分けという結果に終わったが、東京サントリーサンゴリアスの中村亮土選手はリーグ戦100試合出場を達成した

またしても勝てなかった。

0勝1分2敗といまだ勝利のない東京サントリーサンゴリアス(以下、東京SG)の第4節。クボタスピーアズ船橋・東京ベイにリードを許しながら、試合終盤残り1分、起死回生の同点トライ。だが、決まれば勝ち越しとなる髙本幹也のコンバージョンはゴールポストに当たったあと、クロスバーにも弾かれて無情の無得点。まさかの2試合連続引き分けで、今季初勝利とはならなかった。

「(2試合連続引き分けは)経験がない」

この試合でチーム公式戦100キャップの節目を迎えた歴戦の中村亮土をもってして、まさに経験のない事態。節目の一戦を勝利で祝えなかった中村は試合後、まずは自身の「これまで」よりもチームの「いま」について語り始めた。

「(開幕からここまで勝てない経験は)ないですね。ただ、結果として表れてないだけで地力は間違いなくあるし、今までやってきたことを積み上げている段階。ヘッドコーチの(小野)晃征さんも言いましたけど、1%のところにこだわりをもってやれるかどうか。次の1週間、よりこだわって勝てる準備をしていきたい」

試合2日前には、かつてのチームメートで元オーストラリア代表の世界的スター、“ギッツ”ことマット・ギタウ氏がプレゼンターとなり、100キャップ目の記念ジャージーが贈られるサプライズも。そんな過去100試合の中で、特に忘れられない試合として振り返ったのは、マットとともに成し遂げたトップリーグ時代の2017-2018シーズンの優勝を決めた一戦だった。

「ギッツと戦った埼玉パナソニックワイルドナイツ(当時・パナソニック ワイルドナイツ)との決勝戦は思い出深いですね。やっぱり、このチームで優勝したい。今季だってまだまだ可能性はある。プレーオフに勝ち上がって優勝できるチームにしていきたいです」

なかなかトンネルを抜け出せない今季の東京SG。それでも「暗くなる必要はない」と、自身のキャリアと重ね合わせながらこう語ってくれた。

「僕自身、最初の3年くらいはなかなか試合にも出られなかった。それでも、前を向いてプレーするしかない。辛いときこそ、自分にフォーカスを当てて、自分がどうなりたいかを模索し続けながらガムシャラにやることで結果が出るようになりました。いまのチームも似たような状況ですが、下を向く必要はないし、まだ終わったわけじゃない。自分たちのやるべきことを、やりたいラグビーを追求しながらやっていけば、自ずと結果は出てくるはずです」

次戦、101戦目での今季初勝利を目指して。33歳、中村亮土はチームとともに前を向く。

(オグマナオト)

東京サントリーサンゴリアス


東京サントリーサンゴリアスの小野晃征ヘッドコーチ(右)、堀越康介キャプテン

東京サントリーサンゴリアス
小野晃征ヘッドコーチ

「両チームのファンのみなさん、寒い中での応援ありがとうございました。勝つチャンスをたくさん作った中で、最後に(決勝点を)取り切れなかったところが引き分けに終わったポイントだと思います。ただ、選手たちのゲームに対する態度と努力は素晴らしかった。あと1%のところを伸ばして、最後に勝ち切れるように来週に向けて準備したいです」

──「チームを勝たせるのが10番」とよく言われます。同じ10番をやっていた人間として、高本幹也選手はいまどんな状態で、今後どう成長につなげていけるでしょうか。

「自分も10番としてすごく周りにサポートしてもらって、周りからの支えもあった上での判断が多かったです。その意味でも、周りがもっと幹也をサポートできるチームになっていかないとダメだと思います。そこはしっかり、彼の成長もサポートしながらやっていければ、もっともっといい選手になります」

──リーグ全体でこれだけクロスゲームが続いている一番の理由は何だと思いますか。

「どのチームも全体的なレベルが上がっています。どのチームもスタートメンバーだけでなく、登録23人で80分間戦う試合をイメージして、メンバー選考も含めてゲームプランを積み重ねていると思います。その中で勝つチャンスをまず生み出して勝ち切ること。勝ち切れないのはどこかに原因がある。そこをしっかり探したい。一人ひとりの意識をちょっと変えるだけで勝ちにつながると思うので、次は絶対に勝てるように準備をしたいです」

東京サントリーサンゴリアス
堀越康介キャプテン

「寒い中の応援ありがとうございました。勝てるチャンスはたくさん作ったと思いますし、22mライン内に入ってから自分たちがどうやってスコアするかというところは今後積み重ねていく中で大事なポイントになってきます。今日出た学びをしっかり生かして、次の試合に向けてまず1勝できるように全員で頑張っていきたいと思います」

──22mライン内に入ってから決め切れないのは、相手のいいディフェンスもかなりあったとは思いますが、勝ちたい気持ちがネガティブに出ているのかな、という気もします。実際にプレーしていて、どう考えますか?

「それも確かにあると思います。僕たちが掲げるのは『アタッキングラグビー』なので、22mライン内に入ったらどんどんボールをもらいたい選手が15人いますし、その中で横の選手とのちょっとしたコミュニケーションだとかタイミングだとか、ヘッドコーチが言ったように最後の1%のところ、ディテールを積み上げることによって、もっとうまくいくようになるかなと。そこは普段の練習からだと思います」

──クロスゲームが多いことについて、選手の肌感覚としてはどんな部分でほかチームの実力が近づいていると感じますか。

「昨季のリーグと比べて簡単にトライは取らせてくれないと感じますし、僕らも簡単にトライを与えないようなディフェンスをしています。一つのサインプレーでどんどん得点が決まるような試合は一切ないと思います。

ここから先、差を分けるのは、僕たちのチームスローガンじゃないんですけど、『WIN THE ONE』だと思います。自分たちのやるべきことにベクトルを向けて積み重ねていくこと。いまのチームは一つの勝ちで大きく化けると僕自身は思っているので、チーム全員で同じ絵を見て、一つひとつを積み上げていくことが大事かなと思います」

──今日、チーム100キャップ達成の中村亮土選手について。

「亮土さんはサンゴリアスの功労者ですので、『今日は勝利で100キャップのお祝いをしよう!』という雰囲気はチーム内にあっただけに、それができなかったのは残念でした。ただ、亮土さんにとっては本当にすごい100キャップで、素晴らしいことだと思います」

──最後、キックが外れてしまった髙本幹也選手には何か声を掛けましたか。

「ちょっと責任を感じているような、落ち込んでいるところもあったので、僕は『次に勝ちにいこう』と一言だけ話しました。悔しかったですけど、チームを代表して蹴ってくれたのが幹也ですし、そこは何も責任はありません。むしろ、そのあともフェーズを重ねてトライを取り切れなかったのがチームの課題なので、そこは見つめ直していきたいです」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ


クボタスピアーズ船橋・東京ベイのフラン・ルディケ ヘッドコーチ(右)、ファウルア・マキシ キャプテン

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
フラン・ルディケ ヘッドコーチ

「リーグ全体として本当にタイトなバトルも多く、小さな瞬間、瞬間でどれだけ勝てるかがスコアボードに反映される状況です。しっかりディフェンスの努力は見せることができましたし、失点を許したあとの入り方や動き方、挽回したところも良かったです。学びとしては、エリアをどう挽回していくのか。特に後半は自陣に釘付けになってしまった部分もありました。その試合を引き分けて勝ち点2を取れたことは“金メダル”のようなものですし、今後もこういったタイトな試合に向けて準備をしていきたいです」

──ゴール前のディフェンスでは木田晴斗選手のタックルや末永健雄選手のジャッカル(スティール)などの貢献もありました。その充実感はどのように考えていますか。

「そういう小さなところが勝ち負けに関わるところです。今回は引き分けでしたが、まさにチーム文化によるものだと思います。お互いを気遣う、ケアし合う、そういった部分を体現できたことを評価したいです」

──ここまで4試合、接戦ばかりのタイトなリーグになった要因はなんだとお考えですか。

「まずは各チーム力の向上というところ。あとはコーチ陣、選手陣のスタンダードが上がったところ。そういった部分でいい試合が増えていると思います。ラスト数分で勝敗が決まる試合が多いところもそうでしょう。日本のラグビーが成長している、それは誇るべきことだと思います。

その上で、大事になってくるのがリーダーシップです。どれだけチームに落ち着きを与えて一つにまとまることができるか。自分がやるべきことをどれだけやるのか、見えないところでどれだけ貢献できるのか。そんなリーダーシップも大事になってくると思います」

──ルーキーの江良颯選手を含め、若手選手がこの4試合でどう成長していると評価しますか?

「実際にまだ試合に出ていない選手も多いですが、今日の試合も(先発の内)25歳以下が8人くらいいました。そんな若い選手が今日のような試合を経験できたことは大きいですし、しっかりステップアップして、責任をもって判断してくれればいいです。選手たちが成長していくのを見られるのはうれしいですね。

江良にはオンフィールドでも役割を与えていますし、ミーティングにも参加させています。試合のパターンやプロセスをしっかり理解して、チームを成長させてくれる存在になることで、将来のリーダーになると思っています」

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
ファウルア・マキシ キャプテン

「今日はすごくタフなゲームでした。今週ずっとそういう試合になることをイメージして練習してきたし、相手も今日は絶対にハングリーな姿勢を見せてくると分かっていたので、想定していたとおりの試合になりました。自分たちのやろうとしているラグビーを出せた部分、ポジティブなところもありましたし、学びになった部分もあります。自分たちが自信をもっているディフェンス部分はポジティブに捉えて今後に生かしたいです」

──実際にフィールドで戦う選手として、クロスゲームばかりのリーグで戦うことをどのように捉えていますか。

「各チーム、フィジカル面がすごくレベルアップしています。ワールドクラスの選手もたくさんいます。その選手たちの影響を含め、各チーム、だいぶレベルアップをしています。そういう変化は感じます」