雨ニモマケズ、風ニモマケズ…の精神はここで必要ない。西武の高橋光成投手(27)は「ないですね。寒いので。雪もあるし」と1日中こもっている。師匠格にあるエンゼルス菊池雄星投手(33)が岩手・花巻市にプロデュースした野球複合施設「King of…
雨ニモマケズ、風ニモマケズ…の精神はここで必要ない。西武の高橋光成投手(27)は「ないですね。寒いので。雪もあるし」と1日中こもっている。
師匠格にあるエンゼルス菊池雄星投手(33)が岩手・花巻市にプロデュースした野球複合施設「King of the Hill(KOH)」での自主トレを14日、報道陣に公開した。
外気温は氷点下に近づく。雪が強くなった。施設の裏手に回れば1メートル級のつららが垂れている。でも、高橋らはずっと室内で練習できる。目が輝く。
「ジムもあって、グラウンドもあって、カフェテリアでご飯も食べられて、ジェットバスもサウナもある。1カ所でできるところはなかなかないと思います」
さらに。
「メジャーリーガーのユニホームが飾ってあったり、バットあったり、サインボールもあるっていう。こんなテンション上がって野球できる環境って、なかなかないと思うので」
驚くことは、と報道陣に問われて即答する。
「いや、全部っすよ。見てください。驚くでしょ、全部」
花巻出身の宮沢賢治は、自身の作品内で登場させた架空の理想郷を「イーハトーヴ」と名付けた。高橋の言葉からは、まさにKOHが野球人のイーハトーヴであることを思わされる。
去年の今頃は沖縄・宮古島で汗を流していた。高橋らに限らず、この時期、沖縄を中心に南方で自主トレを行うプロ野球選手たちが多い。異例ともいえる雪国での自主トレは、この施設があってこそ。「寒かろうが暑かろうが、っていうよりは場所と環境が大事かなと思います」と話す。
モチベーションもそうだし「毎日自分自身をギリギリまで追い込める環境です」とも高橋は言う。最新機器もそろい、この日のように菊池が自主トレをしている日もある。
「メカニックのことや、生活の部分だったり…全てですね。全てのことを聞き出して、少しでも自分のものにしようという気持ちです」
動作解析も行いながら、新ファームに着手する。0勝11敗からの雪辱。秋、こういう人に高橋光成はなっていたい。
「笑って終わりたいです。それに尽きます。一瞬一瞬に集中して、最後、笑って終わりたいっす」
だから自分ニマケズ。地道な作業が苦しくても、今を頑張る。雨ニモマケズ、風ニモマケズ、今年ハマケナイ。【金子真仁】