NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25ディビジョン2 第3節2025年1月11日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)花園近鉄ライナーズ 17-36 レッドハリケーンズ大阪“レッハリ旋風”が…

NTTジャパンラグビー リーグワン 2024-25
ディビジョン2 第3節
2025年1月11日(土)14:30 東大阪市花園ラグビー場 (大阪府)

花園近鉄ライナーズ 17-36 レッドハリケーンズ大阪

“レッハリ旋風”が大阪ダービーを席巻。練習の虫が見せたフォア・ザ・チームの精神


レッドハリケーンズ大阪の快進撃を支えるひとり、若き10番、土橋郁矢選手

リーグワンで初めて実現した“大阪ダービー”で花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)相手に17対36で快勝。レッドハリケーンズ大阪(以下、RH大阪)が開幕から3連勝を飾り、首位を堅持した。

試合後のスコアだけを見れば東大阪市花園ラグビー場に“レッハリ旋風”が吹き荒れた格好だが、前半17分には花園Lのクウェイド・クーパーがペナルティゴールを成功させ、10対7で一旦は逆転に成功。「前半25分までは非常にいいゲームをしていた」と花園Lの向井昭吾ヘッドコーチが総括した言葉にウソはなかったが、RH大阪の背番号10の逆転トライが試合の大きな分岐点だった。

前半32分、パエア ミフィポセチのパスを受けた土橋郁矢はウィル・ゲニアらをかわして中央へのトライに成功。「あそこは、たまたま前が空いていたので、自分でトライができて良かったです」(土橋)。自身にとってリーグワンでの初トライにも控えめな喜びを口にしたが、試合前からある決意を固めていたという。

花園Lのスタンドオフは言わずと知れた世界的スター、クーパー。「小さいころからずっとクーパー選手のプレーを見てきて、憧れている選手でした」と言いながらも、2024年のワールドベースボールクラシック決勝戦を前に大谷翔平が語った名言を、土橋も口にした。

「(クーパーに対して)今日は憧れるのをやめました」

派手さはないがキックも正確で、ドミナントタックルの数も2節を終えた段階ではディビジョン2で最多タイの6をマーク。開幕から3試合連続で背番号10を託されている土橋は、好調のチームに欠かせない存在になっていた。

『天は自ら助くる者を助く(天は人の力を借りずに、自分一人で努力する人を助けるという意味)』、という言葉がある。土橋の評価を試合後に問われた松川功ヘッドコーチは「誰よりもグラウンドに残って練習をし続けて、われわれがいないときでも一人でやっています」と語ったが、茂野洸気バイスキャプテンも「今まで、これだけ練習好きな奴は見たことないなって思うぐらい練習します」と同調した。

待望のリーグワン初トライについて問われても「意外とあっさりしていたので、うれしさみたいなものはなかった。それよりも、勝つことが大事だと思っていましたから」(土橋)。

フォア・ザ・チームに徹する“練習の虫”はまとまりあるラグビーを披露するRH大阪の象徴だ。“レッハリ旋風”。どうやら、この勢いは簡単に止まりそうにない。

(下薗昌記)

花園近鉄ライナーズ


花園近鉄ライナーズの向井昭吾ヘッドコーチ(左)、上山黎哉ゲームキャプテン

花園近鉄ライナーズ
向井昭吾ヘッドコーチ

「本日はありがとうございました。総括すると、前半25分までは非常にいいゲームをしていたんですけれども、(前半の)30分過ぎぐらいから、ちょっと守れなくなって、ペナルティが多くなってしまいました。後半についても、やっぱり自分たちのペナルティでリズムを崩して相手の一番強いトライのパターンに引きずり込まれたので、自滅というところが非常に多いかなと。規律とそれを守り切れなかったところが、今回の敗因かなと思っています。それをさせられなかったところについては、私の力の部分もあると思いますけど、規律の部分については、選手自身がつながっているときにはできるので、できた時間をより伸ばして80分間できるように、また次に向かっていきたいと思います」

──ウィル・ハリソン選手が後半入りましたが、クウェイド・クーパー選手がスタンドオフのままでした。ハリソン選手は違うポジションでも使っていくという判断だったのでしょうか。

「大体、バックスのリザーブは3人ぐらいしか空いていませんので、そこの入替については、イメージとしては彼(ハリソン)を10番にして、林(隆広)をウイングに置くようなことを考えていましたけど、あまりにも得点差が開いたので、攻撃的に変えないと(いけませんでした)。そしてボールを動かせるのはクウェイドなので、アタックのメンバーにシフトしたということです。本当はクウェイドが疲れてきたときにもう一歩テンポを上げる形で、ハリソンを入れるということを考えていましたが、なかなかプランどおりにいかなかったのが、今回の入替についての戦術的なところです」

──規律以外の部分で今日の試合で見えた課題や早急に改善しないといけない点を教えてください。

「皆さんが見て分かるとおり、スクラムとラインアウトでマイボールにできないところがあって、これをマイボール(にすべきところ)で攻撃ができればたぶんリズムは作れたと思うんですね。やっぱりセットピースが安定しなかったのは、今日の試合が崩れた要因の一つなので、まずセットピースを安定させて、そこから崩していく。後半のトライも、一人少ないのにトライが取れているところについては、私たちはやっぱり攻撃すれば得点が取れる。そこは選手が一つ、自信を付けたんじゃないかなと思っていますので、セットピースを安定させるところが(次節までの)この2週間での課題だと私は思っています」

花園近鉄ライナーズ
上山黎哉ゲームキャプテン

「いま、向井さんからあったとおり同じ見解で、最初の(試合の)入りは悪くなくて、そこからディフェンスで粘れていた時間帯はすごくいいディフェンスだったし、フェーズが重なっていく中で、やっぱりどうしてもペナルティが出てしまう。そこが自分たちのいまの大きな課題で、それは前節から同じ課題が出ていたし、いい場面でペナルティをしてしまう、いい場面でノックオン(ノックフォワード)とかスローフォワードとかスクラムも含めて簡単なミスをしてしまう。そこが敗因に大きくつながっているし、これから先、まだ試合が続いていくので、そういった部分を改善していかないといけないなと感じています」

──後半、自分たちの流れになるところがあったとおっしゃっていましたが、後半のトライを重ねて立て直した要因はどのあたりにありますか。

「やっぱり、自分たちの強みはボールを動かして、アグレッシブにアタックして行くところだと思っていますので、後半はシンプルにその時間帯が増えたのと自分たちのペナルティが少し減りました。逆にレッドハリケーンズ大阪さんがちょっとペナルティをし始めたというところで、自分たちの時間帯を作れていたのかなと思います。それは試合の入りから、自分たちがアタックをどんどんしかけて、アタックでスコアできている部分は、いいアタックになっていると思うので、そこの時間帯を伸ばしていくためには、先ほども言ったように自分たちがペナルティをしない、簡単なミスをしないというところが今後重要になってくるなと思っています」

──なかなか勝利が遠い状況が続いていますが、日々の練習の中で、ここをもっと突き詰めておけば良かったという点や明日や明後日からの練習の中で、ここを突き詰めていきたいという部分があれば教えてください。

「やっぱり、いますごくタフな状況で自分たちは3戦やってまだ勝てていない。チームがバラバラになりがちなところがあると思いますけど、こういう苦しいときこそ、もう1回、同じ方向を見て、練習ができるように、同じ絵を見られるようにしていかないといけないなと思います。具体的には、先ほどからもありますけど、ペナルティが多くてゲームが崩れて、今週の練習ではそこにすごくこだわったんですけど、やっぱり少し続いてしまう。いい時間帯でも続いてしまう部分があるので、そこはやっぱり練習から言い続けないといけないし、ペナルティの部分と簡単にミスをしない部分、そういったところを練習から、次の日本製鉄釜石シーウェイブス(以下、釜石SW)戦まで二週間空くので、練習中からしっかりと口うるさく言いながら同じ方向を向けるようにやっていきたいと思います」

──今日の試合の中で、初勝利へのヒントや収穫があれば教えてください。

「先週の試合も含めて似たような課題が出ているので、来週一週間しっかりと練習して、釜石SW戦があるのでそこに向けて、しっかりとペナルティやミスをしないという部分にこだわってやっていきたいと思います」

レッドハリケーンズ大阪


レッドハリケーンズ大阪の松川功ヘッドコーチ(左)、茂野洸気バイスキャプテン

レッドハリケーンズ大阪
松川功ヘッドコーチ

「まず、このような素晴らしい会場を用意していただいた花園近鉄ライナーズ(以下、花園L)の皆さま、そして、協会の皆さま、ありがとうございます。花園で試合ができるということはわれわれにとってもすごく特別な意味をもっていると思うし、“大阪ダービー”でお互いにいいプレーができて良かったと思っています。総括としては前半、後半を通じて、われわれはペナルティを少なく、しっかりゲームを進行できたこと、そしてコリジョンの部分とセットピースのところ、ディフェンスのところでわれわれの強みを出したところが勝敗に影響したのかなと思っております。レッドハリケーンズとしていいプレーが80分間を通じてできたことが良かったと思っております」

──第1節でNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)、第2節で豊田自動織機シャトルズ愛知(以下、S愛知)、そして今日は昨季ディビジョン1にいた花園Lに勝利し、本当に好調だと思いますが、フィールド内外で特に取り組んでいること、秘訣があれば教えてください。

「特別なことはしていないかなとは思っています。われわれのもっているスタンダードを常に、練習中から維持し続ける。そして、もし、足りないことがあれば、そこに対して練習でさらにレベルアップするように、ハードに練習することを繰り返しています。対戦相手がどうこうではなくて、常にわれわれはチャレンジャーだと思っていますし、どんなチームに対しても自分たちの強みというのが再現できるのかということに、チャレンジし続けて、練習もしくは試合に臨んでいるので、そういったことが少しパフォーマンスとして、安定している一つの要因かなと考えます」

──カテゴリAも含めて外国出身者がすごくチームにおいて機能している印象があります。獲得するにあたってチームとしてポリシーや重視しているところを教えてください。

「プレー面と、レッドハリケーンズがどんなチームなのかというのは常に話した上で、彼らにやって欲しいこと、求めるものを話した上で来てもらっています。そこからもう1回求めるものを共有しながら、日々の練習をやってもらっているという形です。基本的にめちゃくちゃコミュニケーションを取ってというよりも、チームとしてやって欲しいことをしっかり伝えて、彼らにプレーしてもらっています」

──現時点で3連勝です。先ほどチームの一番の強みという言葉がありましたが、松川ヘッドコーチが一番の強みだと思っていることを教えてください。

「プレーというよりは、やはり『あきらめが悪い』、そういうメンタリティーかなと思っています。もちろんプレーなど、いろいろあると思うんですけど、どんな状況に陥っても、『あきらめが悪く、常にプレーし続けろ』というのは伝えているので、そういったところは出せたのかなと思っています」

レッドハリケーンズ大阪
茂野洸気バイスキャプテン

「この試合を開催するにあたりまして、ご尽力を頂いた方々、皆さま、レフリーの皆さま、そして花園Lの皆さま、本当にありがとうございました。試合としましては、ライナーズさんに対して、うまくエリアを取れていたのかなというところが一番、僕自身はプレーをやっていて感じた点です。9番、10番でゲームをコントロールして、敵陣で多くプレーできたところが、今日の勝因につながったのかなと思います。

後半はしんどい時間帯もあったんですけど、その中でもディフェンスはコネクションを切らさずにコミュニケーションを取り続けるところはキーワードとして挙げていて、守り切れたところもチームとして成長を感じられた部分です。本日はありがとうございました」

──第1節でGR東葛、第2節でS愛知、そして今日は昨季D1にいた花園Lに勝利し、本当に好調だと思いますが、フィールド内外で特に取り組んでいること、秘訣があれば教えてください。

「松川ヘッドコーチは特段、大きなことはしてないと言っているんですけど(笑)、僕自身は長くこのチームでやらせてもらっていて、いまはすごくコーチングスタッフとコミュニケーションを取りやすい環境になっているなと感じています。松川ヘッドコーチを含めて日本人のコーチングスタッフが多くて、言っていることがダイレクトに頭に入ってきやすいです。自分たちが思った意見も、簡単にというと変かもしれませんが、本当にフランクな関係で、何でも相談できるので、そういったコミュニケーションを取りやすくなったっていうところが、やっぱりチームの戦術の理解に大きく関わってきているんじゃないかなと思いますし、1節、2節、そして今回3節でメンバーは代わっていて、11番の石井勇輝、13番の鶴田馨、そして6番の佐藤大朗が入ったんですけど、その代わった選手たちが今日はアグレッシブに働いて活躍してくれたので、チームとしての全体のレベルが上がっているのを、すごく今日は感じられました。ノンメンバーたちも、普段から激しい練習を繰り広げて、やってくれていますし、ゲームメンバーにすごくプレッシャーを与えてくれているので、そういうところでチーム全体のレベルが上がっていると僕自身は感じます」

──次節以降に残した課題が、今日の試合であったら教えてください。

「後半、ライナーズさんに大きく攻められたシーンというのがやっぱり多々ありました。それも結局は自分たちのペナルティでしんどい状況を作っているので、後半のしんどくなった場面での規律のところは改善すべきところかなと思います。ペナルティをして、負の連鎖に陥って相手に勢いを渡してしまっているというところがあったので、そこの勢いの断ち切り方も次週、改善できるように取り組んでいきたいです」