選手のレベルは着実に上がっている。次回のW杯では8強の壁を破りたいところだ(C)Getty Images 2002年、2010年、2018年、2022年。日本代表は過去4回のワールドカップで、グループステージの突破に成功した。 ところが、ま…

選手のレベルは着実に上がっている。次回のW杯では8強の壁を破りたいところだ(C)Getty Images

 2002年、2010年、2018年、2022年。日本代表は過去4回のワールドカップで、グループステージの突破に成功した。

 ところが、まだ決勝ラウンドでは一度も勝っておらず、4回ともベスト16止まり。延長戦にもつれた試合が3回、うち2回はPK戦まで戦い抜いたが、いずれも惜敗した。かなり肉薄はしつつも、ベスト8の壁に阻まれているのが現状だ。

【動画】小川航基が決定力を見せつける!伊東純也のクロスにあわせた中国戦のゴラッソをチェック

 現在開催中の最終予選を突破すれば、このベスト8の壁に「過去最強」との呼び声も高い、第二次森保ジャパンが挑むことになる。一方で、48か国が出場する北中米ワールドカップは、グループステージを突破するとラウンド32からのスタートになるため、2度勝ち上がらなければベスト8にたどり着けない。これは大きな変更点だ。

 2026年、この挑戦の舞台に立つのは誰か。逆にどの選手たちなら、ベスト8の壁を越えられるのか。本稿は現在のメインシステムである3-4-2-1に合わせ、「THE8強突破イレブン」を選んでみた。

 まず、1トップに選んだのは上田綺世だ。小川航基も有力な候補だが、ここでは得点力だけでなく、攻守における味方との連係を重視してチョイスした。

 11月の中国戦で2ゴールを挙げたように、クロスに合わせる小川のヘディングは非常に魅力的だ。ファーサイドから狙うのが得意で、自分の形を持っている。しかし、ベスト8の壁に挑む際は、対戦相手が強豪国になる可能性が高く、対峙するDFもビッグクラブ級だ。上田にしても、小川にしても、最終予選のように1トップが個で圧倒して叩き込むようなゴールは計算しづらい。

 となれば、いかに味方と連係し、相手が予測不可能な攻撃パターンを増やせるかだ。また、高い位置からのプレッシングを嵌めるためには、守備の連係も重要になる。その点で言えば、前回ワールドカップから継続して名を連ねる上田に、今は分がある。

 一方で、もう一つ考えたいのはPK戦。過去4回のベスト8挑戦において、2度阻まれたPK戦の対策は、絶対に不可欠だ。

 上田と小川は、PKのキッカーを任せるに足る技術と経験を持っているが、スタメンで出場した1トップが、120分後のピッチに残っている可能性は低い。おそらくキッカーに指名できるのは、途中から出場したほうの1人だろう。しかし、カタール大会の苦いPK戦を思い返すと、できればもう1人、シュート自慢の選手をPK戦に送り出せる陣容が望ましい。その意味では、最近メンバーに名を連ねるようになった、大橋祐紀の台頭に期待している。

左のウイングハーフは三笘で決まりだろう(C)Getty Images

 次は2シャドーだが、一枚は、鎌田大地で確定だ。チャンスメイクだけでなく、ビルドアップの可変性を担保する意味でも、鎌田は外せない。もう一枚は、攻守の連係が優れた南野拓実か、あるいは世界級のDFさえ手玉に取れる、久保建英か。

 久保の個の力は、戦局が一方に傾いたとき、より大きな価値を発揮する。たとえば、日本がリードして引いた状態からのロングカウンターの起点として。あるいは相手がリードして引きこもったブロックを、個でこじ開ける切り札として。久保→南野よりも、南野→久保で試合を展開したほうが有効と考え、南野をスタメンに推す。

 次はウイングだが、左ウイングハーフの三笘薫は確定。右に誰を選ぶか。

 最終予選では堂安律がファーストチョイスで、伊東純也が途中から出るケースが多かったが、ベスト8の壁に挑むに当たっては、正直どちらも厳しい。特に自陣に引いた状況や、ネガティブトランジションの対応が怪しくなる。ワールドカップのレベルを踏まえれば、アジア予選のように攻撃的な両ウイングを並べ、終始、敵陣に押し込み続けるプランは、想定としては楽観的すぎる。あまり現実的とは言えない。

 そこで、右ウイングハーフには菅原由勢を推す。左に三笘、右に菅原と、ポジションの個性をアシンメトリーに配置し、柔軟に戦えるようにする。たとえば、守備は左の三笘から縦ズレしてプレスをかけ、菅原は最終ラインのカバーに重点を置く。4バックと3バックの中間のような守り方だ。

 戦術の型は、選手の理解を早めると同時に、分析されやすくなる側面がある。固定化された3バックの守備では、レベルの高い相手に対しては簡単に侵入を許したり、あるいは自陣に押し込まれ続ける恐れが大きい。

 攻守で立ち位置の可変を生み出し、相手を戸惑わせる要素が欲しいので、ウイングは左右をアシンメトリーにし、菅原を選んだ。

 ボランチは遠藤航と守田英正だ。今のところ他のチョイスはない。ドイツで評価を高めている佐野海舟が入ってきたら、多少変わる可能性もあるが、ちょっとどうなるかわからない。

評価を上げる鈴木は欧州で実戦経験を積んで力を増している(C)Getty Images

 最終ライン、3バックは伊藤洋輝、冨安健洋、板倉滉か。町田浩樹や谷口彰悟も遜色はない。一つ、ウイングのアシンメトリー化と関連付けたいのは、3バックの左右にサイドバックもできるタイプを起用し、ビルドアップも守備ブロックも、4バックとの中間的な戦い方を実践することだ。対戦相手とのかみ合わせによっては、伊藤、冨安、板倉、菅原の4バックにも見えるような形を模索する。最終予選のように固定的な配置では丸裸にされ、おそらくワールドカップは、ベスト8の壁は突破できない。

 最後にGKだが、欧州で実戦を積む鈴木彩艶にかける。ビルドアップやロングキックが優れたGKなので、彼の能力を活かせば、プレス回避の手段は今より増やせるだろう。また、あと1年半の間に最も成長する余地が大きいのは、ポジションを得てからの時間が短い鈴木かもしれない。と、期待しておく。

 最終予選で披露した日本代表の3-4-2-1は、破壊力があり、安定性も優れていた。しかし、ワールドカップでベスト8の壁を突破することを念頭に置いた場合、より分析されにくいチームが望ましい。今の3-4-2-1は、最終予選でも対戦相手に分析され、対策を打たれて苦しめられたが、困ったら個で殴ってスコアを動かし、解決してきた面がある。

 ただし、ワールドカップはそうもいかない可能性が高いので、3-4-2-1の型を打破した戦い方を、今以上に模索したいところだ。

[文:清水英斗]

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