2025年MLB日本人プレーヤー注目ポイント10(後編)佐々木朗希を獲得するための策とは? 大谷翔平の二刀流に佐々木朗希の移籍先、さらには鈴木誠也や吉田正尚の移籍の可能性など、2025年シーズンも気になるポイントが盛りだくさんのメジャーリー…

2025年MLB日本人プレーヤー
注目ポイント10(後編)

佐々木朗希を獲得するための策とは?

 大谷翔平の二刀流に佐々木朗希の移籍先、さらには鈴木誠也や吉田正尚の移籍の可能性など、2025年シーズンも気になるポイントが盛りだくさんのメジャーリーグ。

 注目ポイント後編では、ベテランのダルビッシュ有を筆頭に、2年目を迎える今永昇太や山本由伸、35歳でメジャーリーガーとなる菅野智之、さらにはMLB復帰に挑む藤浪晋太郎などにスポットを当ててみた。


2024年の藤浪晋太郎はメッツと契約するも登板なし

 photo by AFLO

(6)ダルビッシュ有は野茂英雄を超えたのか?

 サンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有は、日米で通算203勝を挙げている。昨シーズン、通算201勝の野茂英雄を追い抜き、黒田博樹の記録に並んだ。日本プロ野球とメジャーリーグのどちらでも白星を挙げ、その合計が200以上の投手は、この3人しかいない。

 続いて2025年は、メジャーリーグ通算勝利でも日本人トップに立つ可能性がある。野茂の123勝に対し、ダルビッシュは110勝なので、あと13勝で追いつく。ちなみに黒田は79勝だ。

 好投してもチームが勝っても勝利投手になれるとは限らないが、シーズンを通して投げれば13勝は無理な数字ではない。過去2年はひとケタの8勝と7勝ながら登板も少なめで、24試合と16試合だった。その前の2022年は、30試合に登板して16勝を挙げている。

 なお、ダルビッシュがメジャーリーグで奪った2007三振は、すでに日本人投手の最多だ。1918奪三振の野茂を2023年に上回っている。

 また、全休した2015年を入れずに数えると、2025年はメジャーリーグ13年目となる。メジャーリーグで12シーズン以上の日本人投手はダルビッシュと、1995年〜2005年と2008年で計12シーズンの野茂のふたり。野手を含めると、ほかには2001年〜2019年に19シーズンのイチローだけだ。

(7)大谷翔平が三冠王を狙える可能性もある?

 ロサンゼルス・ドジャースに移籍した初年度の2024年、大谷翔平はナ・リーグ最多の54本塁打と130打点を記録した。打率.310は2位。首位打者のルイス・アラエス(マイアミ・マーリンズ→サンディエゴ・パドレス)との差は、わずか4厘しかなかった。

 アラエスは2022年と2023年も首位打者を獲得している。2022年のア・リーグは、打率.316のアラエス(当時ミネソタ・ツインズ)が1位となり、打率.311・62本塁打・131打点のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)が打率2位と二冠王に輝いた。

 2023年のナ・リーグは、打率.354のアラエス(当時マーリンズ)が1位、打率.283・54本塁打・139打点のマット・オルソン(アトランタ・ブレーブス)は打率12位と二冠王だった。2023年のオルソンはともかく、2022年のジャッジと2024年の大谷はアラエスに三冠王を阻まれたと言っていい。

 FAまであと1年のアラエスは、今オフか今夏にトレードで移籍するかもしれない。ア・リーグの球団へ移れば、ナ・リーグで首位打者を獲得することはない。ちなみに今オフにFAとなり、ア・リーグのヤンキースからナ・リーグのニューヨーク・メッツへ移ったフアン・ソトは、短縮シーズンの2020年に打率.351を記録して首位打者を獲得したが、過去3年の打率はいずれも.300未満だ。

 2024年の大谷は2番打者として開幕を迎え、ムーキー・ベッツが離脱した6月半ばから1番に移り、ベッツの復帰後も2番には戻らなかった。2025年の打順もシーズンを通して1番の可能性が高く、その場合、どの試合も最初の打席は無走者だが、それでも打点王は獲得できるだろう。というのも、2024年は2番としての出場時が6.78打席に1打点だったのに対し、1番の出場時は4.99打席/打点。後者のほうがハイペースで打点を挙げていたからだ。

 ドジャースの打線は、今年も強力だ。後ろにベッツとフレディ・フリーマンがいるので、フォアボールで歩かされることも少ない。大谷の敬遠四球は、2023年の21度から2024年は10度と半減した。

(8)次にメジャーリーガーとなる日本人は誰?

 千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希と同じく、阪神タイガースの青柳晃洋と中日ドラゴンズの小笠原慎之介もポスティングシステムを利用してメジャー挑戦を表明している。しかし佐々木と違って、彼らを迎え入れようとする具体的な球団名は報じられていない。

 その理由のひとつは、奪三振率の低さではないだろうか。青柳も小笠原も三振を多く奪う投手ではなく、2024年の奪三振率は5.20を下回った。ローテーション候補として計算するには、あまりにも低い数値だ。2024年にメジャーリーグで先発100イニング以上投げた115人のなかで、奪三振率6.10未満の投手はいなかった。

 一方、読売ジャイアンツからFAになった菅野智之は、ボルチモア・オリオールズと1年1300万ドルの契約を交わした。菅野の奪三振率も3年連続6.40未満と高くはないものの、実績は青柳と小笠原をしのぐ。

 菅野がこのままメジャー開幕を迎えた場合、オリオールズのローテーションには、ザック・エフリン、グレイソン・ロドリゲス、チャーリー・モートンの次に、菅野とディーン・クレーマーの名前が並びそうだ。ただ、元・東京ヤクルトスワローズのアルバート・スアレスをはじめ、ほかにも先発投手の候補はいる。

 しかも、オリオールズはFAとの契約あるいはトレードにより、さらに先発投手を加える可能性もある。たとえば、2024年にデトロイト・タイガースとロサンゼルス・ドジャースで投げたジャック・フレアティが加入すると、ローテーションの4枠は確定し、菅野は残る1枠を争うことになるだろう。

(9)ルーキーで活躍した今永昇太と山本由伸の2年目は?

 シカゴ・カブスの今永昇太は2024年、173.1イニングを投げてリーグ3位の防御率2.91を記録し、新人王とサイ・ヤング賞の投票では4位と5位にランクインした。

 同じくメジャーリーグ1年目だったドジャースの山本由伸は、3カ月近く離脱して90.0イニングにとどまったものの、最終的な防御率は3.00。今永とそう違わなかった。デビュー登板の1イニング5失点(自責点5)を除くと、あとの17登板は防御率2.53だ。

 2009年〜2010年の川上憲伸(当時ブレーブス)は、1年目が156.1イニングで防御率3.86、2年目は87.1イニングで防御率5.15だった。ただ、メジャーリーグ最初の2シーズンとも90イニング以上を投げた日本人投手10人のなかに、2年目の防御率が1年目より0.75以上悪化した例は皆無だ。

 2010年以降にデビューした投手4人の防御率は、2012年〜2013年のダルビッシュ有(当時テキサス・レンジャーズ/現サンディエゴ・パドレス)が3.90→2.83、2012年〜2013年の岩隈久志(当時シアトル・マリナーズ)が3.16→2.66、2014年〜2015年の田中将大(当時ニューヨーク・ヤンキース/現・読売ジャイアンツ)が2.77→3.51、2016年〜2017年の前田健太(当時ドジャース/現デトロイト・タイガース)は3.48→4.22と推移した。

 今永と山本の2年目の防御率は、田中や前田のように前年から0.74上昇しても、4.00未満の3.65と3.74にとどまる。ローテーションから外されるほど、高い防御率ではない。1年目と同水準であれば、最優秀防御率のタイトルやサイ・ヤング賞の可能性も出てくる。

(10)藤浪晋太郎と契約するメジャー球団は現れるのか?

 藤浪晋太郎はメジャーリーグ2年目を迎えることなく、2024年シーズンを終えた。ニューヨーク・メッツ傘下のマイナーリーグで33試合に登板し、36.1イニングで44奪三振と33与四球、防御率5.94。そしてオフにはFAとなった。

 その後、プエルトリコのウィンターリーグでプレーし、6試合に登板して20.2イニングで24奪三振と11与四球、防御率3.05を記録した。どちらのリーグでも奪三振率は10.40以上だが、与四球率は8.17と4.79だ。

 懸案の制球難は、改善されていないように見える。100マイル以上の速球を投げるとはいえ、メジャーリーグ契約を申し出る球団が現れるのは難しそうだ。マイナーリーグ契約も得られるかどうかのボーダーラインではないだろうか。

 マイナーリーグ契約を手にすることができなかった場合、トレバー・バウアーのようにメキシカンリーグで投げる道もある。メジャーリーグの球団から声がかかった場合、退団できるという契約も可能だ。もっとも、そこからメジャーリーグに復帰する選手は、ごくわずかしかいない。