高校生の大会に、5万8347人が駆けつける―。世界的に見ても、極めて異質な大会だ。サッカー王国ブラジルの人も、サッカーの母国イングランドの人も、理解できないのではないか。誤解を恐れずに言えば「クレイジー」な大会である。 世代によって、それ…
高校生の大会に、5万8347人が駆けつける―。世界的に見ても、極めて異質な大会だ。サッカー王国ブラジルの人も、サッカーの母国イングランドの人も、理解できないのではないか。誤解を恐れずに言えば「クレイジー」な大会である。
世代によって、それは「帝京」だったり「国見」だったり「青森山田」だったり、ゆくゆくは「前橋育英」になるのかもしれないが、強豪校の名前はサッカーファンだけでなく、多くの人に知れ渡っている。
選手権とは―。英プレミアリーグのサウサンプトン内定FW高岡伶颯(日章学園、2回戦敗退)の言葉が印象的だった。
「この大会は、いろいろな人が家で見ている。子供たちや地域の人に夢を与える大会。自分も夢を与えられてきたから、今こうやって選手権に出ているんです」
既に日本代表で世界と戦い、卒業後も欧州に渡ることが確約されている選手が、なぜ選手権にこだわるのか。本人にぶつけて返ってきたのが、この答えだった。
選手にとって、これだけ多くの人に「見られる」経験は、何物にも代えがたいものとなるだろう。そして、これだけ多くの人が「見たくなる」だけの価値がある高校年代の大会があることは、日本サッカー界にとって非常に大きい。超満員の会場を振り返り、流通経大柏の榎本監督は言った。「高校サッカーというスポーツは、スポーツの枠を超えて文化になりつつあると思う。世界に誇れるアマチュアスポーツだと思います」
この日激闘を繰り広げた2校を除くその他全ての学校は、第104回大会に向けて、既に始動している。伝統は受け継がれていく。(高校サッカーキャップ・岡島 智哉)
◆観客5万8347人 昨年のJリーグ戦最多超えた
〇…決勝には、大会史上最多観客動員数となる5万8347人が駆けつけた。ともに関東勢で、優勝経験校同士の好カード。前日(12日)の段階でチケット完売が発表されていたが、好天にも恵まれ、過去最多だった埼玉スタジアムで開催された19年度大会決勝の静岡学園―青森山田の5万6025人を上回った。また、24年Jリーグ公式戦の最多入場者数はルヴァン杯決勝の名古屋―新潟(国立)の6万2517人だったが、同年のリーグ戦最多のFC東京―新潟(国立)の5万7885人は上回った。