◆第103回全国高校サッカー選手権▽決勝 前橋育英(群馬)1―1(PK9―8)流通経大柏(千葉)(13日・国立競技場) 17大会ぶりの優勝を目指した流通経大柏(千葉)は、前橋育英(群馬)にPK戦の末に敗れた。7大会前と同カードとなった決勝戦…

◆第103回全国高校サッカー選手権▽決勝 前橋育英(群馬)1―1(PK9―8)流通経大柏(千葉)(13日・国立競技場)

 17大会ぶりの優勝を目指した流通経大柏(千葉)は、前橋育英(群馬)にPK戦の末に敗れた。7大会前と同カードとなった決勝戦は、再び前橋育英に軍配が上がった。

 先制したのは流通経大柏だった。試合開始から激しいプレスで主導権を握ると、前半12分に中盤でのボール奪取から、ゴール前でパスを受けたJ2富山内定のMF亀田歩夢(3年)が、相手守備2人をかわして、右足シュートをゴール左へ決めて1―0。だが、同31分に前橋育英のMF柴野快仁(2年)に決められ、同点に追いつかれた。最後はPK戦。両チーム10人が登場した激戦は8―9で、流通経大柏の準優勝となった。

 決勝戦でゴールは決められなかったが、FW山野春太(3年)は、得点ランク2位タイの大会通算4得点を挙げ、準優勝の立役者の一人となった。

 準決勝前の練習日、取材に応じた榎本雅大監督が「うれしい誤算。ラッキーボーイ」と言ったのが山野だった。今大会、J湘南内定のFW松本果成(3年)が大会前に体調不良になったこともあり、先発でチャンスが到来。「松本も悪いわけじゃない。山野が良すぎる」。背番号9は、3戦連続先制弾など次々期待に応え、チームの起爆剤となった。

 山野の3年間はけがとの闘いだった。右太ももの肉離れ、右かかとの負傷と故障が続き、2年冬は約5か月間も練習でボールに触れなかった。「動けないのがほんと心苦しかった」と悔しさを抱えながらも仲間が駆け回るピッチを見つめ一人、トレーニング。地道な努力はここに来て、実を結んだ。

 父は元アイスホッケー選手で、日本製紙でプレーした由宇さん。2010年に引退するまで、息子は父の試合を見に何度も会場へ足を運んだ。3歳まで北海道・釧路に住んでいた山野は最初、防具を一式そろえてアイスホッケーをしていた。父は「親ばかじゃないんですけど、運動神経はいい方だと思う。最初は転びながらだが、何回か滑らせたらすぐできた」。家の中ではスティックを持ち、お手製ゴールを置いて、テープで固めた新聞紙のボールをさばいて遊んだ。

 しかし、父が山口へ転勤すると、リンクは家から車で1時間の場所になった。練習環境の影響もあり、山野は自然と出会ったサッカーの道へと進むことに。高校は強豪・流通経大柏に進学も、けがに苦しんだ。父は「焦らず、まず治すことに専念しよう。復帰してレギュラー奪い返そうよ」とLINEでメッセージ。元アスリートの父のエールも励みに、復活した山野。高校3年間でチームに欠かせぬ存在へと成長を遂げた。(小林 玲花)