「まず選手たちに伝えたのはリーグ優勝しようということ。数字的なものはまだ話していませんが、やっぱり”キワの部分”だと思っています。勝てるゲームを引き分けたり、負けそうなゲームを引き分けたり、ちょっとしたところのこだわりを持てるかどうか。最後…
「まず選手たちに伝えたのはリーグ優勝しようということ。数字的なものはまだ話していませんが、やっぱり”キワの部分”だと思っています。勝てるゲームを引き分けたり、負けそうなゲームを引き分けたり、ちょっとしたところのこだわりを持てるかどうか。最後の勝ち点にこだわるところは徹底してやっていきたいと思っています」
川崎フロンターレを率いた8年間で7冠を獲得した鬼木達新監督が1月12日の新体制発表会でこう語った通り、2025年の鹿島アントラーズが目指すべきなのは、リーグタイトル奪還しかない。2016年から国内無冠というのは、常勝軍団にはあってはならないこと。日本人屈指の名称を招聘した以上、必ず頂点に立たなければいけないのだ。
そのために、彼らはユースからの昇格・レンタルバック含めて9人の新戦力を補強。これまで足りないと言われたFW、CB、SBなどのポジションが確実に分厚くなった。
そこで1つ気になるのが、昨季21得点のレオ・セアラ、鹿島の絶対的エース・鈴木優磨、昨季レンタルで赴いたFC東京で7ゴールという実績を引っ提げて復帰した荒木遼太郎という”王様タイプ”3人の起用法だ。残念ながらこの日、荒木が体調不良で欠席し、午前中に行われたトップ対ユースの練習試合(30分×3本)出場は叶わなかったが、多少なりともヒントは見えたと言っていいだろう。
■基本布陣は3本とも4-4-2
鹿島の基本布陣は3本とも4-4-2。1本目は鈴木優磨とレオ・セアラが2トップに陣取り、左右のMFは松村優太と樋口雄太。ボランチには実績ある柴崎岳と三竿健斗が並び、最終ラインは右から小池龍太、植田直通、キム・テヒョン、溝口修平。GKは梶川裕嗣が入る形だった。
レオ・セアラが「チームで仲良くなったのは優磨。いつもコミュニケーションを取ってくれる」と語ったように、最前線の2人は初めてのコンビとは思えないほど、しっかりとした関係性を築いていた。開始早々にはレオ・セアラが引いた位置から鈴木優磨に絶好のスルーパスを供給。これは決められなかったものの、公式戦でもこういう形は期待できそうだ。
そしてキム・テヒョンの打点の高いヘッドによる先制点の後、2点目を叩き出したのは2人の連携からだった。中盤からの長いパスを鈴木優磨が受け、折り返したところに飛び込んだのがレオ・セアラ。鹿島待望の初ゴールをゲットした助っ人は「フィジカル的に追い込まれた中、いい内容でできたと思う。さらに成長していけるように頑張りたい」と前向きにコメントした。
この2トップがまず鬼木・鹿島の最前線のベースになるのは間違いなさそうだ。もちろん今季は田川享介、徳田誉、完全移籍にシフトしたチャヴリッチもいるが、チャヴリッチはまだ別メニューが続いており、開幕から一気に飛ばすのは難しそう。やはりレオ・セアラと鈴木優磨を軸に戦うことになるだろう。
■荒木遼太郎のポジションは
そうなると、荒木はどこに入るのかという疑問が生じる。ちょうど1年前にFC東京に赴いた時、彼は「トップ下があるチームでやりたかった。そのポジションなら必ず自分の力を発揮できる」と自信満々に発言。有言実行の結果を残している。パリ五輪代表ではインサイドハーフ(IH)などもこなしたが、鹿島ではまずサイドからということになりそうだ。
となれば、樋口の入った右MFが最初の選択肢になるのではないか。川崎時代の鬼木監督はその位置に家長昭博を配し、フリーマン的な動きを認め、タメを作りながらゴールに関与する役割を担わせていたが、荒木が似たような位置づけになることも考えられる。左がドリブラーの松村なら、なおさらそういう色合いが濃くなりそうだ。
ただ、4-2-3-1にして、レオ・セアラがトップに陣取り、荒木をトップ下、鈴木優磨が右サイドという”秘策”もないとは言えない。実際、優磨は少し下がってタメを作る動きを得意としているし、家長的なプレーは十分できる。中後雅喜監督(現コーチ)体制で左サイドに入り、不発に終わった時もあったが、鬼木体制ならまた違った連携連動を周囲と構築できるだろう。
その配置なら3人を共存させられる。今回の練習試合ではその形を見ることはできなかったが、「選手にはいろんなポジションをやってもらう」と指揮官は宣言している。ここからの宮崎キャンプで王様タイプ3人の共存への模索が本格化することになりそうだ。
(取材・文/元川悦子)
(後編へつづく)