得点力のあるレオ・セアラ、鈴木優磨、荒木遼太郎の3人が揃った2025年の鹿島アントラーズ。分厚い攻撃力が期待されるところだが、選手層が拡大したのは最前線だけではない。各ポジションで熾烈な競争が繰り広げられそうなのだ。 まず2列目だが、20…
得点力のあるレオ・セアラ、鈴木優磨、荒木遼太郎の3人が揃った2025年の鹿島アントラーズ。分厚い攻撃力が期待されるところだが、選手層が拡大したのは最前線だけではない。各ポジションで熾烈な競争が繰り広げられそうなのだ。
まず2列目だが、2024年のレギュラーだった名古新太郎(福岡)と仲間隼斗(柏)、ジョーカー的に起用されていた藤井智也(湘南)が去り、荒木遼太郎と松村優太がレンタルバック。彼ら2人と鹿島4年目の樋口雄太、昨季大きく成長した師岡柊生がポジション争いをすることになる。
1月12日のユースとの練習試合に荒木と師岡が出なかったため、4人の現時点での序列や位置づけは定かではないが、川崎時代の鬼木監督のイメージを基に考えれば、左サイドにはドリブラーの松村、あるいは師岡、ターレス・ブレーネルを入れ、右には家長昭博タイプになり得る荒木や樋口、あるいはFWの鈴木優磨を置くのではないかと推察されるが、左でビルドアップして右に展開という形も捨ててはいないはずだ。
となれば、その場合は左に樋口や荒木を入れ、右に松村、師岡というのも考えられる。特に師岡は昨季、右SBの濃野公人と好連携を披露。数多くのゴールを演出している。既存のいい部分も生かしつつ、ベストな形を模索していくに違いない。
■小池龍太が随所に好プレー
ボランチに関しては、ボールをつなげる柴崎岳と三竿健斗が一応のベースと見られるが、昨季ベストイレブンの知念慶を使わないのはあまりにももったいない。知念も練習試合で鋭いスルーパスから田川享介のゴールを演出。以前よりタテパスの意識を高めている様子だ。そこにプロ4年目の舩橋佑、いわきFCからレンタルバックした下田栄祐ら若手が絡んでいくかも注目点。柴崎と三竿もウカウカしてはいられないだろう。
SBはやはり小池龍太の加入が大きな目玉。練習試合でも1本目の右SBに陣取り、非常にいい攻撃参加を随所に見せていた。彼ならば右のビルドアップの起点として十分な働きを示せるはず。前に樋口や荒木、鈴木優磨がいたとしても、的確なポジショニングや連携を見せられるに違いない。
小池と昨季ベストイレブンの濃野が1つのポジションを巡って真っ向勝負と繰り広げるというのは、他チームから見れば非常に贅沢な状況ではある。濃野の推進力と得点力も魅力的で、何とか2人を併用したいと鬼木監督は考えるのではないか。
ただ、濃野の場合、もしかすると夏に海外移籍を選択する可能性もないとは言えない。それを視野に入れて小池を補強したのではないかという見方もできる。それが現実になるにしても、今季前半戦はやはり2人がバチバチと定位置を争う構図になる。そのハイレベルな競争がチームに新たな活力をもたらすだろう。
■プロ3年目の溝口修平が安西の好敵手に
左SBは安西幸輝がファーストチョイスだが、プロ3年目の溝口修平も伸びてきていて、安西の好敵手になるかもしれない。鬼木監督は練習試合で溝口を右MFでもトライしていて、旗手怜央(セルティック)のように多彩なポジションで使うことを視野に入れている様子だった。そういうマルチ能力を備えた若手をうまく使っていくことも、今季の鹿島の1つのテーマと言えそうだ。
そしてCBも昨季は植田直通と関川郁万の2人に依存していたが、左利きの大型DFキム・テヒョンの加入によって、状況は大きく変わるだろう。練習試合1本目に出た彼は植田とコンビを組んだが、鬼木監督が求める丁寧なボール扱い、パスの出し入れ、ビルドアップができる人材だということをしっかりと示した。となれば、関川にとってはかなりのライバルになる。
植田はチームリーダーの1人ということで、なかなか下げづらい存在だが、キム・テヒョンがいれば、植田を休ませることも可能になる。植田・キム・テヒョン、関川・キム・テヒョンという新たなコンビを確立させておくことで、多彩な戦い方が可能になる。それを宮崎キャンプで突き詰めていくのではないか。
GKに関しては昨季と陣容が同じということで、早川友基を軸に、山田大樹、梶川裕嗣、パク・ウィジョンがしのぎを削るという構図が続くきそうだ。
このように今季の鹿島はバランスのいい編成が実現した。ケガ人が出るなどのアクシデントが起きなければ、鬼木監督もある程度、選手層を保ちながらシーズンを戦えるのではないか。そのうえで、勝ち点にこだわる集団を築き上げ、かつてのしぶとさ、タフさを取り戻せれば、本当にタイトル奪還も見えてくるかもしれない。宮崎キャンプの動向が今から大いに気になるところだ。
(取材・文/元川悦子)