◆大相撲 ▽初場所初日(12日、東京・両国国技館) 綱取りに挑む琴桜(27)=佐渡ケ嶽=と豊昇龍(25)=立浪=の両大関が、そろって白星発進した。琴桜は東前頭筆頭・隆の勝(30)=常盤山=を落ち着いて寄り切り、2場所連続優勝と、2007年に…
◆大相撲 ▽初場所初日(12日、東京・両国国技館)
綱取りに挑む琴桜(27)=佐渡ケ嶽=と豊昇龍(25)=立浪=の両大関が、そろって白星発進した。琴桜は東前頭筆頭・隆の勝(30)=常盤山=を落ち着いて寄り切り、2場所連続優勝と、2007年に亡くなった祖父の元横綱・琴桜と同じ地位へ、第一歩を踏み出した。先場所優勝次点の豊昇龍は、西前頭筆頭・霧島(28)=音羽山=に圧勝。横綱昇進への内規は「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」。55年ぶりとなる横綱の同時誕生へ、初場所の15日間が幕を開けた。
長い一番を制した瞬間、琴桜はふっと息を吐いた。過去7勝1敗で得意としていた隆の勝との一番。相手の当たりを受け止めると、右をのぞかせ、左を抱えた。相手の土俵際のすくい投げに一瞬よろめいたが、こらえて、今度は右下手と左上手を引いて体勢は十分。時間をかけながらじわじわと前に出て寄り切った。取組時間はこの日の幕内で最長の41秒。「攻めどころで慌てずにしっかり落ち着いて取れた。相手の動きに対応してじっくり攻められた」と厳しい表情で振り返った。
支度部屋では表情を崩さず取材に応じた。テレビ画面に流れていた自身の取組映像に目を向けながら対応したが、音量を変えようとした協会関係者が誤って、チャンネルを変えてしまうアクシデントが発生。周囲は「あっ!」と一瞬ざわついたが、大関の表情は変わらない。動揺はなく、その後も淡々と話した。
この日は、横綱審議委員会による場所総見が行われた。55年ぶりダブル綱取りの懸かる初場所で、山内昌之委員長(東大名誉教授)は「横綱・照ノ富士の回復を願うが、いずれは彼も土俵を去らなければならない。その時には後継者として横綱が誕生していると違う。照ノ富士の思いに報いてほしい」と新横綱の誕生を切望した。
横審の推薦内規には「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とある。2場所連続優勝が懸かる琴桜には、17年初場所後の稀勢の里以来となる日本出身横綱の誕生という期待も懸かる。琴桜が「じっくり」と自己評価した初日を、山内委員長は「時間をかけて慎重だったが、勝ったことが良かった」と評した。八角理事長(元横綱・北勝海)は「(長い相撲に)性格が出た。勝つことが大事。勝ったことで、明日以降の流れが出てくる」と分析した。
優勝額の除幕式が行われ、約半世紀ぶりに『琴桜』の額が復活した。「小さい頃から見てきたものだし、思うこともある。1度きりではなく、2回目、3回目とつなげて優勝できれば」と琴桜。貴重な白星を積み重ね、綱取り成功を目指す。(大西 健太)