「大相撲初場所・初日」(12日、両国国技館) 1970年春場所の北の富士、玉の海以来、55年ぶりの横綱ダブル昇進へ白星発進だ。初の綱とりに挑む琴桜(27)=佐渡ケ嶽、豊昇龍(25)=立浪=の両大関は、それぞれ隆の勝(常盤山)、霧島(音羽山…
「大相撲初場所・初日」(12日、両国国技館)
1970年春場所の北の富士、玉の海以来、55年ぶりの横綱ダブル昇進へ白星発進だ。初の綱とりに挑む琴桜(27)=佐渡ケ嶽、豊昇龍(25)=立浪=の両大関は、それぞれ隆の勝(常盤山)、霧島(音羽山)をともに寄り切った。3場所ぶり出場の横綱照ノ富士(伊勢ケ浜)は小結若隆景(荒汐)の肩透かしに屈し、大関大の里(二所ノ関)は翔猿(追手風)に引き落とされた。先場所10勝で大関昇進の足固めを狙う関脇若元春(荒汐)は、熱海富士(伊勢ケ浜)を寄り切った。
時間いっぱい。琴桜が“鬼”になった。塩を手に体を起こした表情は、鬼気迫る厳しいもの。隆の勝を退け「しっかり落ち着いていけたかな」とうなずいた。
出足の鋭い相手を受け止め、寄り、土俵際で回り込まれてよろめくも、体を預けすぎずに逆転は許さなかった。左上手を取り、危なげなく寄り切った。「バタバタせず、しっかり相手の動きに対応して、じっくり攻められた」と振り返った。
元日、千葉県松戸市内にある先代師匠で祖父の横綱琴桜のお墓参りをした。「目指すところは変わらないので、しっかりそこを目標にやっていきます」と誓った。
墓地の前に設けられた一畳半ほどの石床のスペースは、土俵入りのために設けられた。綱を締め、土俵入りに臨む姿、色紙に好んで記した『忍』の石彫りが彩られている。石床に小石一つ落ちていないのは、場所後を見据えてのことだろうか。
一緒に墓前で「2代目琴桜を土俵入りさせます」と誓った父親で師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)。部屋を継承した時から「わしの代で横綱が出なかったから、必ず横綱を育てろ」と遺言のように言われ続けた。2007年8月に先代が死去し、先代のおかみさんらと相談し、墓のデザインが決まったという。
ことあるごとに「自分よりも先代に似ている」と話す親方。14勝1敗で初優勝した昨年九州場所、王鵬に唯一の黒星を喫した夜、四股を踏む琴桜の姿があった。「悔しいからだろうね。先代との約束を守ることが心に入っている。自分が何をするべきか分かっている」。弟子に全幅の信頼を寄せている。
2日目の相手は阿炎。琴桜は「まだ始まったばかり。集中してやっていくだけ」とサラリ。うわつくことなく先を見据えた。