◆大相撲初場所初日(12日、東京・両国国技館) 元幕内で西序二段19枚目・矢後(押尾川)が昨年の夏場所以来、4場所ぶりの土俵に上がり、藤雄峰(藤島)を押し出して白星スタートを切った。188センチ、169キロの大きな体を生かしての一気の攻め。…
◆大相撲初場所初日(12日、東京・両国国技館)
元幕内で西序二段19枚目・矢後(押尾川)が昨年の夏場所以来、4場所ぶりの土俵に上がり、藤雄峰(藤島)を押し出して白星スタートを切った。188センチ、169キロの大きな体を生かしての一気の攻め。「良かったです」と静かに喜びをかみしめた。
大きな決断だった。北海道・芽室西中の在学中に左膝前十字靱帯断裂と半月板損傷、右膝前十字靱帯損傷の大けがを負った。進学した埼玉栄高、中大時代もケガとの戦い。中大4年の時にアマ横綱を獲得。各界入りして2場所目に幕下優勝しても不安を抱えていた。
昨年の夏場所、東幕下12枚目で3勝4敗と負け越して手術を決意。「もっと上位で相撲が取りたい。関取に戻りたい」という気持ちだけ。これまでクリーニング手術などは受けたことはあるが、メスを入れるのは初めての経験だった。「良くなるかどうかわからないけど、とにかくやってみよう」。わらにもすがる気持ちでもあった。
3度の右膝の手術を受けて先月から幕下以下の力士と相撲を取る稽古を開始した。心の支えになったのは師匠の押尾川親方(元関脇・豪風)や部屋の仲間。そして旧尾車部屋から別れた中村部屋の力士たちだった。特に右膝の大けがから4度の手術、5か月に及ぶ入院生活を経て関取に復帰した友風の存在は大きかった。「まだ諦めていないです。今年はいい年にしたいですね」と締めくくった言葉に力が籠もっていた。