◆第103回全国高校サッカー選手権▽準決勝 前橋育英(群馬)3―1東福岡(福岡)(11日・国立競技場) 7大会ぶり2度目の制覇を狙う前橋育英(群馬)は、東福岡(福岡)との名門対決で3―1の逆転勝ちで、優勝した2017年度大会以来となる決勝進…
◆第103回全国高校サッカー選手権▽準決勝 前橋育英(群馬)3―1東福岡(福岡)(11日・国立競技場)
7大会ぶり2度目の制覇を狙う前橋育英(群馬)は、東福岡(福岡)との名門対決で3―1の逆転勝ちで、優勝した2017年度大会以来となる決勝進出を果たした。17大会ぶり2度目の頂点に挑む流通経大柏(千葉)は、初出場の東海大相模(神奈川)を1―0で下し、6大会ぶりに決勝に駒を進めた。ともに関東勢で、優勝経験校同士の対決となった決勝は、13日に東京・国立競技場で行われる。
国立初勝利に沸くベンチ、応援席を尻目に、前橋育英の名伯楽は表情を一切変えなかった。17年度大会以来の決勝進出を決めた山田耕介監督(65)に、笑顔もガッツポーズも、安堵(あんど)の表情も見られなかった。試合終了の笛と同時に、視線は決勝戦へと向いた。
「苦労したが、前半の終わり頃にやっとテンポとリズムが戻ってきた。前半が0―1ならチャンスだと思っていた」。前半11分に先制点を献上し、シュートはゼロ。選手は肩を落としてロッカールームに戻ってきたが、就任43年目の指揮官には勝ち筋が見えていた。
「こういう時は積極的に。たたみかける選手交代でいくぞ、と」。交代カードを2枚切ると、後半から流れは前橋育英に傾いた。3分に後半最初のシュートで同点弾、9分に勝ち越し点、13分にダメ押し点。無失点で勝ち上がってきた相手の弱点を前半で見極め、鮮やかに3点を奪った。
4日の準々決勝後、チームは静岡・御殿場市に直行した。4強進出を見越し、事前に施設の手配を済ませていた。「学校に帰ったらダメです。『ベスト4おめでとう』ってなっちゃうから」。通算27大会で指揮を執り、選手権の酸いも甘いも知り尽くす指揮官は、準々決勝後~準決勝前の6日間がカギになると大会開幕前からにらんでいた。
富士山のふもとのピッチを貸し切り、特訓に明け暮れた。初日から控え組は試合を行い、実戦感覚を取り戻した。主力組は休養を経て東福岡対策を徹底。2得点の佐藤は「サッカーだけに集中できる環境でした」と振り返った。
選手たちは「優勝」または「日本一」という言葉を使えない。山田監督がNGワードに指定しているからだ。「準決勝で4回、決勝でも2回負けた。優勝は1回だけ。何十人もの卒業生の涙を見てきた。そんな簡単なものじゃねえぞ、と」。勝利の可能性を少しでも高める言動を徹底させ、勝利を一つ一つ積み重ねた先に、頂点がある。勝ち方を知る名伯楽に導かれた“タイガー軍団”が「アレ」まであと1勝とした。(岡島 智哉)
◆山田 耕介(やまだ・こうすけ)1959年12月3日、長崎県生まれ。65歳。名将・小嶺忠敏監督のもと、島原商で主将として高校総体優勝、法大で総理大臣杯優勝。82年に前橋育英の監督に就任。86年度大会で選手権初出場、2017年度大会優勝。主な教え子に松田直樹(元横浜Mなど)、山口素弘(元横浜Fなど)、細貝萌(元浦和など)ら。今大会の最年長監督で、就任43年目も最長。
◆17年度大会決勝VTR 後に日本代表にも選出されるDF角田涼太朗(現コルトレイク)ら擁する前年度準優勝校の前橋育英と、総体王者の流通経大柏が対戦。両者一進一退の攻防を繰り広げるも、後半AT2分に前橋育英のFW榎本樹(当時2年)が値千金の決勝弾。群馬県勢初優勝を勝ち取った。
◆関東勢同士の決勝 1976年の首都圏開催以降、4回目。国立での決勝は、優勝した市船橋(千葉)と元日本代表MF中村俊輔氏擁する桐光学園(神奈川)が激突した96年度大会以来。国立が改修工事中に開催された埼玉スタジアムでの決勝は、17年度大会の前橋育英(群馬)と流通経大柏(千葉)の対戦が最後。