2025年は、サムライブルーやなでしこジャパンにとって大きな目標となる大会はない。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その先のワールドカップやオリンピックに向けて、いくつかの「試練」を乗り越えるとともに、未来への「布石」を打つべき年だ…
2025年は、サムライブルーやなでしこジャパンにとって大きな目標となる大会はない。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その先のワールドカップやオリンピックに向けて、いくつかの「試練」を乗り越えるとともに、未来への「布石」を打つべき年だと考えている。
■注目したい「ロス五輪」世代の戦い
将来への「布石」という意味では、2025年に最も注目されるのが9月から10月にかけて南米チリで開催されるU-20ワールドカップだろう。2028年のロサンゼルス・オリンピックを狙う世代の戦いである。
ヨーロッパや南米と地理的に隔絶している日本は、世界の強豪国と戦う機会が限られる。もちろん、今では各年代別代表は1年間に何度もヨーロッパなどに遠征する機会が与えられているが、そこで経験できるのは親善試合でしかない。
これに対して、ヨーロッパや南米の選手たちは、各年代の大陸選手権などで切磋琢磨する機会が多いのだ。
そうした意味で、年代別のワールドカップは日本の若手選手たちにとって世界の強豪国と真剣勝負をするための貴重な機会となってきた。こうした機会がなかったら、日本が現在のように実力を上げることができなかったかもしれない。年代別の世界選手権はジョアン・アヴェランジェ元FIFA会長によって創設されたものだが、そこから最も大きな利益を得たのは、実は日本だったのかもしれない。
■チーム作りが「難しい」時代の目標
日本は、1979年にワールドユース(現、U-20ワールドカップ)に開催国として出場したが、その後はアジア予選を突破できずにいた。そして、Jリーグ発足後の1995年カタール大会に出場(前園真聖や中田英寿が出場)。1999年のナイジェリア大会では、トルシエ監督のチームがFIFA主催の世界大会で初めて決勝に進出し、準優勝という成績を残している。小野伸二、高原直泰、稲本潤一などの黄金世代のチームだ。
その後、アジア予選で敗れたことは何度かあるが、最近では2017年の韓国大会以来、4大会連続で世界大会に進出している(2023年大会は、新型コロナウイルス感染症の流行のため、開催中止)。今年も、ぜひとも世界大会に参加して経験を積んでほしいものだ。
また、前回の2025年大会でグループリーグ突破に失敗したように、移動距離の大きい南米大陸で開催された大会では、これまで日本チームは好成績を収められていない。そういう意味でも、今大会は挑戦のしがいのある大会となるだろう。
ただ、最近はこの年代の選手でも海外移籍する選手が出てきている。たとえば2023年のU-17ワールドカップで4ゴールを決めた高岡伶颯(れんと)も、日章学園を卒業した後にはイングランドのサウサンプトン入団が決まっている。
そのため、昨年のパリ・オリンピック代表がそうだったように、U-20代表でも年代のすべての選手を自由に招集できない時代になっており、チーム作りとしてはこれまでよりも難しくなっている。しかし、それは日本サッカーが進化しているから起こった問題なのだ。どんな状態でも、世界大会でラウンド16を突破することを目標とすべきだろう。
■何度も「煮え湯」を飲まされてきた相手
ただ、世界大会の出場権を得るためには、U-20アジアカップ(2月から中国・深センで開催)でベスト4に入る必要がある。つまり、この大会の準々決勝で勝利する必要があるのだ。リーグ戦形式の予選ではなく、一発勝負となる難しさがある。
たとえば、日本は2015年大会の出場権を逃がしたが、これもミャンマーで行われたU-19アジア選手権の準々決勝で北朝鮮にPK戦負けを喫したからだった。日本は延長戦を含めて120分間ゲームを支配し続けたが、北朝鮮のGKのスーパーセーブを連発されて1対1で引き分け、PK戦に突入した。そして最後は、南野拓実がキックに失敗して世界大会進出を阻まれたのだ。
今年のU-20アジアカップの組み合わせを見ると、日本はグループリーグ最終戦で韓国と対戦することになっている。韓国も、これまでアジア予選では何度も煮え湯を飲まされてきた相手だ。ただ、この数年、日本はあらゆる年代で韓国に対しては優位に立っているし、韓国に敗れたとしてもグループリーグ2位以内に入って準々決勝に進出できる可能性は高い。
だが、その準々決勝ではイランまたはウズベキスタンと対戦する可能性が高いのだ。
イランは、最近は若手の育成が進まず、フル代表はメンバーが固定されがちだが、この国がアジアのサッカー強国の一つなのは間違いない。
そして、ウズベキスタンは、まだフル代表のワールドカップ出場経験こそないものの、年代別代表の強化は着実に進んでおり、U-20アジアカップでは2023年大会を開催して同大会で優勝を飾っている。
いずれにしても、世界大会進出がかかった準々決勝では、日本にとって非常に難しい相手との対戦となるはず。2025年の代表チームの試合の中で最も重要な試合とは、実は2月22日に行われるU-20アジアカップ準々決勝なのかもしれない。
いずれにしても、2025年は男女各年代の日本代表にとって将来への「布石」となる年であるようだ。