2025年は、サムライブルーやなでしこジャパンにとって大きな目標となる大会はない。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その先のワールドカップやオリンピックに向けて、いくつかの「試練」を乗り越えるとともに、未来への「布石」を打つべき年だ…

 2025年は、サムライブルーやなでしこジャパンにとって大きな目標となる大会はない。だが、サッカージャーナリスト後藤健生は、その先のワールドカップやオリンピックに向けて、いくつかの「試練」を乗り越えるとともに、未来への「布石」を打つべき年だと考えている。

■予選突破後の「大幅な入れ替え」も

 現在の日本代表の中盤では遠藤航守田英正が絶対の存在となっている。

 遠藤は所属のリバプールではほとんど出場機会が与えられていない状態だが、まったく試合勘を失うこともなくハイレベルのプレーを続けているし、攻守のつなぎという意味で守田も欠かせない存在だ。

 だが、ボランチのポジションでは佐野海舟が所属のマインツで素晴らしいプレーを続けている。また、リーズ・ユナイテッドに移籍した田中碧の評価も急上昇。近い将来、プレミアリーグにステップアップするのは確実だ。

 彼らが、今の成長曲線を維持できれば、来年のワールドカップ本大会では遠藤-守田ではなく、佐野-田中が出場していてもおかしくはない(そこに、藤田譲瑠チマが割り込んできてくれたら、さらに素晴らしい)。

 3月に予選突破を決めた後の、6月の2試合。そして、秋以降に予定される強豪国とのテストマッチの内容によっては、大幅な選手の入れ替えがあっても不思議はないのだ。

 2025年の日本代表は、勝負がかかった試合こそないが、来年への「布石」として重要な年になるのだろう。

■女子代表初「外国人監督」の化学変化

 将来への「布石」といえば、日本女子代表(なでしこジャパン)も注目だ。女子の場合はワールドカップとオリンピックが連続して開かれる。そのため、次の目標は2027年のワールドカップということになるので、昨年のU-20、U-17ワールドカップで活躍した選手をはじめ、次々と台頭している若手を組み込みながら準備をしていくことになるが、急ぐ必要はない。

 女子代表の注目は、やはり何と言ってもニルス・ニールセン監督だ。女子代表初の外国人監督である。

 女子の場合は、そのとぼけた味でチームをまとめて2011年ワールドカップで優勝した佐々木則夫氏(現、女子委員長)や、昨年までチームを率いて「熱男」と呼ばれて親しまれた池田太氏のように、監督と選手たちとの人間関係が男子チーム以上に濃密な傾向がある。

 そういう意味で、女子選手たちが外国人監督の下でどういう化学反応を起こすのか、注目したい。

 ただ、最近は女子代表選手の多くがヨーロッパのクラブで活躍しており、外国人指導者には慣れているはずだ。また、選手たち自身が、これまでより高いレベルの指導者を求めているとも聞いているので、ニールセン監督が歓迎される可能性も高い。

 いずれにしても、ワールドカップまでには時間がある女子代表。この1年は、外国人監督のお手並み拝見ということになるだろう。

■男子の「次期監督問題」と宮本会長

 女子代表で外国人監督が成功するか否かは、男子代表の次期監督選びにも影響を与える可能性がある。

 男子日本代表は、岡田武史氏が緊急時に監督に就任したことはあったが、フィリップ・トルシエ監督以来ずっと外国人監督の下で強化を続けてきた。だが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の失敗を受けて2018年のロシア・ワールドカップで西野朗監督が指揮を執ってラウンド16進出という結果を残し、その後も森保監督が2大会連続してチームを率いることになった。

 2026年のワールドカップ終了後、おそらく監督交代ということになるのだろうが、西野、森保両監督の成功を受けて、次期監督も日本人にすべきなのか、それとも外国人監督路線に戻すべきかが注目される。

 昨年就任した、日本サッカー協会宮本恒靖会長は「外国人監督論者」だとも伝えられている。もちろん、女子代表と男子代表はまったく別の話なのだが、やはりニールセン監督が成功するかどうかによって、男子の次期監督問題に影響を及ぼすのではないだろうか?

 女子代表は、3月には今や恒例となっているシービリーブスカップ(アメリカ)に出場して強豪国と対戦。7月の東アジア選手権(EAFF E-1選手権=韓国)でアジア勢との真剣勝負に臨む。(3)に続く。

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