今大会4ゴールをマークしている山野春太を中心に圧倒的な攻撃力を誇る流通経済大柏 photo by Kishiku Torao 今年度の全国高校サッカー選手権大会も、残すは準決勝、決勝の3試合のみとなった。舞台は選手たちの憧れ、東京・国立競技…


今大会4ゴールをマークしている山野春太を中心に圧倒的な攻撃力を誇る流通経済大柏

 photo by Kishiku Torao

 今年度の全国高校サッカー選手権大会も、残すは準決勝、決勝の3試合のみとなった。舞台は選手たちの憧れ、東京・国立競技場である。

 ベスト4に駒を進めてきたのは、東福岡、前橋育英、流通経済大柏、東海大相模の4校。初出場の東海大相模以外は、過去に優勝経験を持つ強豪校ばかりがそろった。

 今大会には、高校生年代の全国最高峰リーグである高円宮杯U-18プレミアリーグに所属する高校が、EASTとWESTを合わせて9校が出場していたが、そのうちの3校、すなわち東福岡、前橋育英、流通経済大柏が勝ち残っているのだから、有力校が実力どおりに勝ち上がってきた大会と言えるのかもしれない。

 まずは、プレミアリーグWEST8位の東福岡。過去3回の選手権優勝は、準決勝進出校のなかでは最多だが、今大会は際どい試合が続いている。

 準々決勝までの4試合のうち、0-0からのPK戦での勝ち上がりが2試合。残る2試合にしても2-0、1-0と、少ない得点を守り抜いてきた。

 かつての東福岡と言えば、鋭いサイド攻撃を武器にピッチの幅を広く使った分厚い攻撃が代名詞だったが、今大会のチームは身長191㎝のGK後藤洸太や、185㎝のセンターバック大坪聖央を中心とした、粘り強い守備が持ち味だ。

 プレミアリーグ勢同士の対戦となった準々決勝の静岡学園戦でも、相手に主導権を握られる時間が長く続きながら多くの決定機は許さず、今大会の無失点を継続させた。

 これまでの東福岡とは少々イメージは異なるチームではあるが、負けにくいという意味では、一発勝負のトーナメント向きとも言えるだろう。

 その東福岡と準決勝で対戦するのは、プレミアリーグEAST6位にして、7年ぶり2回目の優勝を目指す前橋育英である。

 今大会4試合のうち、2試合が1点差勝利、1試合がPK戦による勝ち上がりと、前橋育英もまた接戦をものにしながら国立までたどりついたが、その戦いぶりは東福岡とは対照的。こちらは4試合8得点と、打ち合いを制してきた。

 とりわけ頼れる得点源は、エースストライカーのオノノジュ慶吏だ。

 プレミアリーグEASTの得点王でもある背番号8は、今大会ここまで4ゴールを記録。しかも、ワンタッチで合わせてよし、前を向いて自ら持ち込んでもよしと、左右両足で多彩なゴールパターンを見せているのは心強い。

 東福岡の堅守をオノノジュがこじ開けられるか否かは、勝敗の行方を左右する大きな要素となるだろう。

 続いては、プレミアリーグEAST4位の流通経済大柏だが、おそらく現時点で最も優勝に近い位置にいるのは、この高校だろう。

 3回戦では、プレミアリーグWEST王者にして、東西の優勝チームが対戦するプレミアリーグファイナルも制している大津を2-1で撃破。この優勝候補同士の一戦は、技術、戦術はもちろん、プレー強度の高さにおいても、今大会ベストマッチの呼び声が高い。

 佐賀東を5-0で一蹴した大会初戦(2回戦)、上田西を8-0で圧倒した準々決勝も合わせ、3試合15得点のすさまじい攻撃力は、今大会で群を抜いている。

 その先頭に立つのが、スピードに優れた山野春太。DFラインの背後へ抜け出し、相手ゴールへ向かってグングンと加速していく背番号9は、3試合連続の計4ゴールを決めている。

 とはいえ、和田哲平、亀田歩夢がともに今大会3ゴールずつを決めているように、どこからでもさまざまな形で得点できるのが、流通経済大柏の強みである。3回戦で"事実上の決勝戦"を制した優勝候補は、実力的に頭ひとつ抜けていると見ていいだろう。

 そんな難敵に挑むのが、ベスト4のなかでは唯一の初出場校である東海大相模だ。

 同校はこれまで夏の全国高校総体こそ今年度も含めて4度の出場があるが、最高成績はベスト16。全国的に見れば、強豪と呼ばれる存在とは言い難い。

 しかも他の3校と違い、東海大相模が所属するのは、神奈川県1部リーグ。頂点のプレミアリーグから数えると、3つも下のカテゴリーになるのだから、"看板"では明らかに見劣る。

 ところが、初戦(2回戦)で草津東を終了間際の劇的な逆転ゴールで2-1と下し、うれしい選手権初勝利を手にすると、3回戦では東北学院に3-0の快勝。準々決勝は明秀日立を再び2-1の逆転勝利で退け、初出場にしてベスト4進出の大躍進を遂げたのである。

 そんな東海大相模にあって、すっかり今大会の注目選手となったのが、左サイドバックの佐藤碧。得意の左足から放つ正確なキックも武器ではあるが、それ以上に目を引いているのが、驚異的な距離とスピードを出せるロングスローだ。

 身長174cmの体を目いっぱい使い、背番号5の両手からボールが放たれた瞬間、試合会場のスタンドがどよめく様は、今大会お馴染みの光景と言ってもいい。

 東北学院戦では、佐藤のロングスローを塩田航央が直接頭で合わせてゴールを決めていることでもわかるように、もはや足で蹴るクロスと変わらないほどの強力な武器となっている。

 初出場校の快進撃は地の利によるところも大きいが、3試合のうち2試合が逆転勝利と、落ちついた試合運びと勝負強さが目立つ戦いぶりは、決して勢いだけではない強さを感じさせる。

 はたして頂上決戦に進出するのは、優勝経験を持つ強豪か。あるいは、初出場の伏兵か。

 注目の準決勝2試合は1月11日、聖地・国立で行なわれる。