2025年3歳牝馬クラシック桜花賞とオークスの勝ち馬は?(後編)阪神JFで1番人気に支持されたブラウンラチェット photo by Eiichi Yamane/AFLO 2025年も見どころ満載の中央競馬。なかでも注目は、3歳春のクラシック…

2025年3歳牝馬クラシック
桜花賞とオークスの勝ち馬は?(後編)


阪神JFで1番人気に支持されたブラウンラチェット

 photo by Eiichi Yamane/AFLO

 2025年も見どころ満載の中央競馬。なかでも注目は、3歳春のクラシックだ。そこで今年も、年明け早々に5人の識者がそれらの行方を検証。まずは、牝馬クラシックのGI桜花賞(4月13日/阪神・芝1600m)と、GIオークス(5月25日/東京・芝2400m)の勝ち馬をズバリ予想してもらった――。

小田哲也記者(スポーツニッポン)

◆桜花賞=アルマヴェローチェ(牝3歳/父ハービンジャー)
◆オークス=コートアリシアン(牝3歳/父サートゥルナーリア)

 アルマヴェローチェは正直、GI阪神ジュベナイルフィリーズ(2024年12月8日/京都・芝1600m)の前までは高く評価していなかったのですが、レースが終わってみて、母父ダイワメジャーの血の強さを感じました。札幌・芝1800mの新馬戦(2024年8月4日)、GIII札幌2歳S(2024年8月31日)にも機敏に対応していましたが、やはり1600m戦がベストなのでしょう。

 2022年のGIマイルCSを勝っているセリフォス、昨春の桜花賞2着のアスコリピチェーノなど、ダイワメジャーの直子となる晩年の活躍馬は父譲りの先行型ではなく、瞬発力を生かす馬の活躍が目立ちます。

 阪神JFでメンバー最速の上がりを記録した本馬も、同様にダイワメジャーの血を引き継いでいます。洋芝の札幌では測りきれなかった"キレ"を京都で示しました。牝馬離れした筋肉質の体にも恵まれ、京都から阪神マイルに舞台が替わっても、桜の女王最右翼と見ています。

 コートアリシアンは3番人気に推された阪神JFで6着。出遅れが響いて、直線では荒れた内寄りの馬場を走らざるを得ない、厳しい競馬を強いられました。それでも、最後の直線でタイトな馬群を縫って進路を切り替えながらも、勝ち馬アルマヴェローチェに次ぐ上がり34秒4をマーク。能力の一端を示しました。

 注目すべきは、GIII新潟2歳S(2着。2024年8月25日/新潟・芝1600m)で引っかかっていた馬が、阪神JFでは折り合いすぎるぐらい折り合って、マイルの距離が忙しく映った点。明け3歳が産駒の第1世代となる父サートゥルナーリアの適性は未知な面がありますが、母父ハーツクライを加えた字面の血統背景だけを見れば、(適性が)中~長距離型に出ても不思議ではありません。

 美浦→京都の長距離輸送があった阪神JFでも馬体重は8kg増。体全体に強さが出て、着実な成長も感じました。現状はスタートに大きな課題はありますが、新馬勝ちを飾った東京がベストなのは間違いなく、樫での大逆襲を期待しています。

木村拓人記者(デイリー馬三郎)

◆桜花賞=ホウオウガイア(牝3歳/父シルバーステート)
◆オークス=ブラウンラチェット(牝3歳/父キズナ)

 ホウオウガイアはまだ1勝馬で、今後の賞金加算が条件になりますが、注目したい1頭です。

 2戦目で臨んだ1勝クラスの百日草特別(2着。2024年11月3日/東京・芝2000m)では、直線に入ってからの一瞬の反応がすばらしすぎました。反面、最後まで伸びきれず、(距離)適性の差で勝ち馬に屈した形になりました。シルバーステート産駒にありがちな"気持ちひとつ"という部分がある馬で、一瞬の反応の鋭さは2000m戦よりもマイル戦でこそ生きると考えます。

 阪神JFが同じメンバーで100回やったら100回とも違う結果になりそうなレースだったことを思うと、この馬が割って入る余地は十分にありそう。その意味でも、次走のGIIIフェアリーS(1月12日/中山・芝1600m)はきっちり突破してほしいです。

 ブラウンラチェットはもともと、入厩当初から細かった馬。阪神JFでも馬体を大きく減らしたように、そのあたりの課題は今後も常について回ると思います。

 ですが、クリストフ・ルメール騎手がこの馬のために香港国際競走に遠征せずに(阪神JFで)日本に残ることを選択。それだけの逸材です。昨年もルメール騎手のお手馬であるチェルヴィニアが桜花賞で大敗したあと、オークスではきっちりと巻き返しを図りました。

 この馬も距離への不安はありません。春は桜花賞へ直行とのこと。そこまでに、心身ともにある程度立て直しが図れていれば、オークスではしっかりと結果を出してくれると思います。

土屋真光氏(フリーライター)

◆桜花賞=マピュース(牝3歳/父マインドユアビスケッツ)
◆オークス=ミッキーマドンナ(牝3歳/父エピファネイア)

 マピュースはここまで、マイル戦だけを使われて3戦2勝。唯一の敗戦だったGIIIアルテミスS(7着。2024年10月26日/東京・芝1600m)は、大幅な馬体増もありましたが、それ以上に直線で態勢を立て直すような不利が何度かあったことが響きました。そういう意味では、度外視していい一戦。それでいて、勝ち馬からコンマ5秒差まで詰めた点は評価したいです。

 その後、前走の1勝クラス・赤松賞(2024年11月17日/東京・芝1600m)では、不利を受けないように終始外目を回りながら、アルテミスSの勝ちタイムにコンマ1秒差の1分33秒9という好時計で快勝。ズバッとキレる脚はありませんが、デビュー以来3戦とも上がり3ハロンは33秒台でまとめています。おそらくキレよりも伸びが求められるリニューアルされた阪神のマイル戦は、同馬にとって絶好の舞台になると思います。

 4代母カノープスは2歳時のマイル戦で、のちのGI馬サクラチトセオーを破った素質馬(1着入線ゴール後13着降着)。その血筋から大舞台での"大物食い"があっても......。

 ミッキーマドンナは、母がオークス馬のミッキークイーン。母は桜花賞には出走できなかったものの、オークスでは圧巻の強さを見せました。

 ミッキーマドンナも現在、2戦1勝の身。この時期の母と同様、クラシック出走にはまだまだ賞金が足りていません。

 しかし、2戦目で臨んだオープン特別の芙蓉S(2024年9月28日/中山・芝2000m)では、最後の直線で窮屈になる場面がありながら3着と好走。馬体には成長の余地があり、復帰後には芙蓉Sの時よりも状態を上げてくるはずで、即賞金加算は可能でしょう。

 広い東京コース向きなのは明らか。無事にオークスへ駒を進めることができたら、母仔制覇の確率は相当高いと見ています。