◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」 サッカー担当キャップとして2年、日本代表の森保一監督を追ってきた。初めてあいさつを交わした時の「温厚、まじめな方」という第一印象は、大きく変わった。乱暴な表現になるが、「ただの良い人」ではなかった。 と…

◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 サッカー担当キャップとして2年、日本代表の森保一監督を追ってきた。初めてあいさつを交わした時の「温厚、まじめな方」という第一印象は、大きく変わった。乱暴な表現になるが、「ただの良い人」ではなかった。

 とにかくブレない。昨年11月、アウェー戦に向かう森保監督を乗せたインドネシア行きの航空機がトラブルで、離陸後30分で引き返した。1敗が命取りになる最終予選。調整スケジュールに影響するアクシデントだったが、約8時間後に再び現れた指揮官は柔和な表情だった。

 「現実受け入れ型タイプなので。人の命を預かる方々が、これでもかと徹底的に整備された中で不具合があったらもう仕方がない。予定が狂った時、そこのベストを…と頭が切り替わる。自分の良いところかも、ダメなところかもしれないけど」

 続く敵地・中国戦でもそうだった。国歌斉唱時の大ブーイング、選手へのレーザー光線。非礼と妨害行為に対し、声高に叫ぶでもなく、試合で強い日本を見せつけた。試合後、「やめていただければありがたい」と静かに忠告した。

 監督としてJ1広島では毎年、主力選手を引き抜かれながら5年で3度優勝した。力が及ぶところ、そうでないところへのスタンスを知った。現役時代、ヤジに「おまえ、ちょっと下りてこい!」と反応した熱血漢が、いまや批判に「成長できるヒントがある」と受け止め、私にも「意見聞かせてください」と求めてくる。

 2022年カタールW杯。ドイツ、スペインにボールを支配されても、布陣と選手を変更して逆転勝ち。極限状態で「その時のベスト」を実行した。今回の予選でも、主力抜きで無敗でW杯出場に王手をかけた。置かれた状況でいかに生きるか。森保さんから人生訓を学んだ。(サッカー担当・星野 浩司)

 ◆星野 浩司(ほしの・こうじ) 2008年入社。販売、芸能担当を経て、19年からサッカー担当。東京五輪、カタールW杯を取材。