長谷部茂利監督が新たに率いる川崎フロンターレは、ここまで2回の練習が公開された。1月7日と8日のそれぞれ午前中である。 7日は今季の川崎フロンターレの始動日とあって、10時からの練習ではあったが9時半からミーティング。1時間にわたるイメー…
長谷部茂利監督が新たに率いる川崎フロンターレは、ここまで2回の練習が公開された。1月7日と8日のそれぞれ午前中である。
7日は今季の川崎フロンターレの始動日とあって、10時からの練習ではあったが9時半からミーティング。1時間にわたるイメージ共有のあと、選手はもう一度、体に刺激を入れる時間を与えられ、11時頃から全体練習が始まった。
その最初のジョギングの時点でも、長谷部色が見られた。それぞれの速度で走ることで27選手が縦に伸びる中、指揮官は近寄って「一緒に、一緒に!」と手振りを添えながらまとまって走ることを求める。その練習後、「チームというのは2つにも3つにも、それ以上にも分断というか、分かれてしまうようなことがありうるんです。けれども、そうならないように一つになることが大事だという一つのアドバイスです。ランニング一つとってもまとまる感じが私は好きですから、私が好きなことを選手に伝えたら、選手は実行してくれました」と、意図を説明した。
長いシーズンの間には良い期間があれば、難しい期間もある。どんなことがあっても、チーム一丸となることをまずは伝えたようにも思えるし、これからのチーム作りで全選手がフラットな競争とバランスの中にあることを示したようにも見えた。
■長谷部色が見られた練習メニューとルール
さらに、この日の練習メニューの度に細かい指示とルールが出された。3対1の練習やコントロール練習においても、持久力メニューでも、それは変わらない。シーズン冒頭だからこその走りながら考えることの基礎作りも兼ねてはいるが、そこには指揮官のやりたいことも含まれていた。
たとえば、7日のあるコントロール練習では、トラップした際に「10mのプレーエリアを確保してください」と指示。近寄りすぎないでプレーするイメージを共有しようとしていた。
また、人形を置いて状態でボールを受ける際、「人形よりマイナスで受けたら前に運ぶ」などのルールも設けられた。
8日の練習で“長谷部色”が見られたのは4対2の練習。一見すると通常のボール回しに見えるが、それで得られるフィジカル的な要素も含みながらも、ボールをつなぐイメージが共有されようとしていた。長谷部監督は実際に自身でボールを保持し、守備者を近づけたうえで「DFがこう来たら…」と複数パターンのつなぎかたを説明。その際、タッチ数とタメについての考え方、ひざ下パス・ひざ上パスのルールも設けたうえで、潤滑なボールの運び方をイメージしていた。
「(この時には)攻撃の権利を持つ意味合いを持ちます」
「向こうに一人いるイメージ」
そうも話して、今までは違った「距離感」を選手に呼びかけているようだった。
■居残りトレーニングにも変化
また、全体練習後の時間の過ごし方にも変化が起きそうだ。24年までの川崎フロンターレと言えば、その居残りトレーニングの長さもチームの特徴の一つだった。
しかし、7日と8日ではその時間は20分のみ。全体練習後、指揮官自身が「今日は20分です!」と呼びかけており、時間制限が設けられた。
その理由の一端が、今季の川崎の「トップチームコーチングスタッフ」にも表れている。昨年は「フィジカルコーチ」が置かれていたが、今季は不設置。代わりに「コンディショニングコーチ」「アシスタントコンディショニングコーチ」が置かれている。
といっても、フィジカルコーチの要素をなくすのではなく、両者がフィジカルコーチも兼ねる。つまり、長谷部監督は長いシーズンを戦い抜く上でコンディショニング面からのフィジカルアプローチをより強く想定しているようだ。
居残りトレーニングが時間制限になったのも、そのコンディショニングの観点から。詳細はまだ分からないものの、今後は「試合日の●日前は●分」といったようになりそう。
最初の2日間だけでも、長谷部フロンターレはその理想とするチーム作りへと動いている。
(取材・文/中地拓也)
(後編へつづく)